神戸、天体議会の開かれる街(2)2010年02月04日 22時09分19秒

(↑神戸海洋気象台(神戸防災合同庁舎)。出典:http://www.mlit.go.jp/gobuild/press/b001122/b001122-3.htm

一歩進んで、作品の舞台が「神戸以外の都市ではありえない」理由があります。
それは海洋気象台の存在です。

主人公の少年たちがしばしば「天体議会」を開く場所として、作中には海洋気象台が繰り返し登場します。

「議会とは天体観測を趣味にしている生徒たちの集まりで、大半は理科部に所属していた。銅貨や水蓮もその例に漏れない。水蓮が議長の名のもと、連絡や調整を一手にひきうけていたが、集合場所や日時については原則として外部に秘密で、連絡方法は先のように抽斗やロッカーに文書をひそませることになった。うっかり口外したり、招集時刻に遅れた者には、ちょっとした罰が科せられる。」

こうして少年たちは、ひとたび議会が招集されるや、海洋気象台の屋上に集い、アンタレスの星食や、カノープス、彗星、人工天体の打ち上げなどを眺めて興に入るのでした。

海洋気象台は港の波止場にあります。

「日よけの下りた窓が整然と並び、しかも大小の窓と露台の組み合わせは、外観を充分に意識したものだった。図面を引くことが得意で建築などに詳しい水蓮の云うには、この気象台の建物〔ビル〕は、モデュロールと呼ばれる人間尺を使った機能性の高いものであるらしい。」

『天体議会』の作品世界は、少年たちが非常にのびやかに暮らしている世界で、海洋気象台の屋上なども「ふだんは人影もなく、施設を壊しさえしなければ、少年たちが無断で屋上に昇ることは大目に見られてい」ました。

さて、現実の海洋気象台は、現在日本に4か所あります(函館、舞鶴、神戸、長崎)。
その中でいちばん古いのが神戸海洋気象台で、昭和17年までは「神戸海洋気象台」ではなく、単に「海洋気象台」と呼ばれていました。場所は作品と同じく港の埠頭そば。昨日の記事に載せた地図(下の方)でいうと、右端に「こころのケアセンター」というのが見えますが、その近くになります。そして、上の4つの都市のうち、北に山地、南に港を控えているのは神戸だけなので、これはもう決定的に神戸だな、と思えるのです。

  ★

…と、ここまでは良いとして、昨日の「不思議」の話。

地元の方はもうお分かりでしょうが、<港のそばの海洋気象台>が誕生したのは、震災後の1999年で、それまで気象台は港から離れた小高い丘の上にありました。また昨日の記事で、沖合の人工天体発射場(コスモドローム)に擬した、神戸空港の開港にいたっては2006年ですから、いずれも『天体議会』が発表された1991年には影も形もなかったのです。

つまり『天体議会』のモデルの地が神戸であるにしても、それは「当時存在しなかった未来の神戸」であり、これは長野まゆみ氏の幻視能力と、巫女としての才を雄弁に物語るものではないでしょうか。

神戸は、氏の夢想した通りの姿に変形しつつある…まさに戦慄すべき事実です。

コメント

_ れいこ ― 2010年02月05日 09時33分56秒

なんと、海洋気象台とコスモドロームのモデルに相当する空港が、作品が書かれた後に作られたとは…。驚きです!

_ 玉青 ― 2010年02月05日 22時29分07秒

驚いたでしょう。私もそれに気づいたとき、しばらくボーっとしていました。

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