「ハリー・ポッターと魔法の歴史」展によせて(4)…薬草学(中) ― 2021年09月23日 12時13分34秒
昔の本草書の破片たち。破片だけでは、ものの役に立ちませんが、当時の雰囲気を味わうにはこれで十分です。ちょっとしたホグワーツ気分ですね。そしてまた時代を追って見ていくと、学問や印刷技術の進歩が見て取れて、なかなか興味深いです。
これが昨日いった「インキュナブラ」の例で、1485年にヨハン・ペトリ(Johan Petri、1441-1511)が出版した『Herbarius Pataviae』(「パドヴァ本草」と訳すのか)の残欠。
いかにも古拙な絵です。この挿絵で対象を同定するのは困難でしょう。
キャプションには、ラテン名は Fraxinus、ドイツ名は Espenbaum とあります。でも前者なら「トネリコ」(モクセイ科)だし、後者の espen は aspen の異綴で、「ヤマナラシ、ポプラ」(ヤナギ科)の由。確かに葉っぱはポプラっぽいですが、トネリコにしろポプラにしろ、背丈のある樹木ですから、こんなひょろっとした草の姿に描かれるのは変です。下の説明文を読めば、その正体が明らかになるかもしれませんが、この亀甲文字で書かれたラテン語を相手に格闘するのは大変なので、これは宿題とします。
ちなみに、この1485年版の完本(ただし図版1枚欠)が、2014年のオークションに出た際の評価額は、19,200~24,000ユーロ、現在のレートだと約250~300万円です(結局落札されませんでした)。もちろん安くはないですが、同時代のグーテンベルク聖書が何億円だという話に比べれば、やっぱり安いは安いです。そして150枚の図版を含んだ本書が、1枚単位で切り売りされたら、リーズナブルな価格帯に落ち着くのも道理です。
こちらも1486年に出たインキュナブラ。ヨハン・シェーンスペルガー(Johann Schönsperger the Elder、1455頃-1521) が出版した、『健康の庭(Gart der Gesundheit)』の一部で、描かれているのはベリー類のようですが、内容未確認。
この風情はなかなかいいですね。中世とまでは言えないにしろ、中世趣味に訴えかけるものがあります。「いい歳をして中二病か」と言われそうですが、ここはあえて笑って受け止めたいです。
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これが100年経って、16世紀も終わり近くになると、植物の表現もより細かく正確になってきます。
アダム・ロニチェル(Adam Lonicer、1528-1586)が著した『草本誌(Kräuterbuch)』の1582年版より。これなら種の同定もできそうです。
(同書の別のページ。本書は6葉セットで買いました)
また図版の配置も整い、本の表情がいかにも「植物図鑑」ぽいです。植物図譜にも近代がやってきた感じです。
上はフォリオサイズの大判図譜の一部。イタリアのマッチョーリ(Pietro Andrea Mattioli、1501-1577頃)による、『Medici Senensis Commentarii』(これまたよく分かりませんが、「シエナ医学注解」とでも訳すんでしょうか)の1572年版(仏語版)より。
ここには植物(※)を慕う虫たちの姿が描かれていて、生態学的視点も入ってきているようです。後の植物図譜にも、虫たちを描き添える例があるので、その先蹤かもしれません。
(※)左側は「Le Cabaret」、右側は「Asarina」とあります。
キャバレーは、今のフランス語だとパブやナイトクラブの意らしいですが、植物名としては不明。見た目はナスタチウム(金蓮花)に似ています。アサリナは金魚草に似た水色の花をつける蔓植物とのことですが、これもあまりそれっぽく見えません。あるいはカンアオイ(Asarum)の仲間かもしれません。
(珍奇な植物がどんどん入ってきた時代を象徴するサボテン)
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ハリー・ポッター展から離れてしまいましたが、会場に並んでいるのも、要は“こういう雰囲気”のものです。会場に行けない憂さを、こうして部屋の中で晴らすのは、慎ましくもあり、人畜無害でもあり、休日の過ごし方としてそう悪くはないと信じます。
(さらに「下」につづく)
「ハリー・ポッターと魔法の歴史」展によせて(3)…薬草学(上) ― 2021年09月22日 21時39分24秒
(チラシより)
ここでも図録の内容をまず列記しておきます。
○ニコラス・カルペパー『英語で書かれた療法と薬草大全』(1789)
(※初版は1652年。薬草の薬効と用法を網羅し、100以上の版が出た大ベストセラー。J.K.ローリングも、執筆の際に参考としたそうです。)
○動物の角と骨で作られた播種・収穫用具
(※毎年生え変わる角を使うところに、呪術的意味合いがありました。)
○12世紀の写本に描かれたベニバナセンブリ(※蛇に噛まれたときの薬です)
○15世紀の写本に描かれたニワトコ(※これも対蛇薬)
○ジョン・ジェラード『薬草書あるいは一般植物誌』(1579)所載、ヨモギとニガヨモギ
○レオンハルト・フックス『植物誌』(1542)所載、クリスマスローズの仲間
○エリザベス・ブラックウェル『新奇な薬草』(1737~39)所載、ニワトコ
○14世紀のアラビア語写本に描かれた雌雄のマンドレイク
○ジョバンニ・カダモスト『図説薬草書』(15世紀)に描かれたマンドレイク
○マンドレイクの根(16~17世紀)
○和書『花彙』(1750)所載、コンニャク(※シーボルト旧蔵書)
○華書『毒草』(19世紀)所載、タケニグサ
○12世紀の写本に描かれたベニバナセンブリ(※蛇に噛まれたときの薬です)
○15世紀の写本に描かれたニワトコ(※これも対蛇薬)
○ジョン・ジェラード『薬草書あるいは一般植物誌』(1579)所載、ヨモギとニガヨモギ
○レオンハルト・フックス『植物誌』(1542)所載、クリスマスローズの仲間
○エリザベス・ブラックウェル『新奇な薬草』(1737~39)所載、ニワトコ
○14世紀のアラビア語写本に描かれた雌雄のマンドレイク
○ジョバンニ・カダモスト『図説薬草書』(15世紀)に描かれたマンドレイク
○マンドレイクの根(16~17世紀)
○和書『花彙』(1750)所載、コンニャク(※シーボルト旧蔵書)
○華書『毒草』(19世紀)所載、タケニグサ
点数が多いですが、大半は昔の薬草書(本草書)です。
登場する薬草も様々ですが、ハリー・ポッターでも人気のマンドレイクは、とりわけ力を入れて紹介されています。
(図録の一部を寸借します)
これらの本草書を彩る古拙な挿絵は、いかにも魔法学校の授業に出てきそうな雰囲気があります。
ただ冷静に考えると、写本の時代はともかく、印刷本の段階に入ると、こうした薬草書は、人々の切実な需要にこたえるものとして、出版点数も多ければ、その刷り部数も非常に多かった気配があります。したがって、同時代人にとっては「秘密の書」というよりも、むしろ「ありふれた実用書」だったんじゃないでしょうか。
門外漢ながらそう思ったのは、その残存数であり、その価格です。
15~6世紀の本草書の「零葉」、つまり1ページずつバラで売っている紙片は、今も市場に大量に出回っており、気の利いた彩色ページでも、たぶん数千円ぐらいでしょう。
上で「15世紀」と書きましたが、1400年代に出た書物は、古書の世界では特に「インキュナブラ」(揺籃期出版物の意)と呼んで珍重しますが、本草書はそのインキュナブラであっても、零葉ならばやっぱりリーズナブルな価格帯に落ち着きます。これは出版部数の多さの反映であり、活版印刷が始まって、出版工房が最初にフル回転したジャンルのひとつが本草書だったんじゃないかなあ…と、資料に当たって調べたわけではありませんが、そんなふうに想像しています。
★
薬草学(本草学)は薬学の一分科であり、大雑把にいうと医学分野です。
同時に、本草学のその後の発展を考えると、これは植物学の母体だともいえます。
以前、この二つの興味に導かれて、古い本草書に手を伸ばした時期があって、ちょうど良い折なので、ハリー・ポッター展に便乗して、それらを眺めてみます。
(この項つづく)
「ハリー・ポッターと魔法の歴史」展によせて(2)…天文学のこと ― 2021年09月20日 09時14分40秒
昨日、部屋の中でゴキブリを見かけ、殺虫剤を噴きかけたものの、逃げられました。あれがまだ部屋の中にいるのかいないのか、死んだのか生きているのか、シュレディンガー的な状態で、ずっと落ち着きません。別にゴキブリが怖いわけではないんですが、ゴキブリは本でも標本でもかじるので、私の部屋では最大のペルソナ・ノン・グラータ、要注意人物です。ここしばらくは警戒が必要です。
★
ゴキブリの話がしたいわけではなくて、ハリー・ポッター展の話です。
図録を見ての感想を書きつけたいのですが、図録そのものをここに載せるのは幾分遠慮して、話の都合上、その展示構成だけ述べておくと、「天文学」の章に登場するのは以下の品々です。こういった品々で、ホグワーツでの天文学の授業を偲ぼうというわけです。
●12世紀の写本から採った「おおいぬ座」の図(※シリウス・ブラックにちなみます)
●太陽・月・地球の配置を描いた、レオナルド・ダ・ビンチの手稿(1506~8頃)
●アラビア製のアストロラーベ(1605~06)
●ケプラーが著した『ルドルフ星表』(1627)(※彼の母親は魔女として捕えられました)
●ドイツのドッペルマイヤーが作った天球儀(1728)
●愛らしい星座絵カード「ウラニアの鏡」(1834)
●ジェームズ・シモンズ作の見事な大太陽系儀(1842)
●太陽・月・地球の配置を描いた、レオナルド・ダ・ビンチの手稿(1506~8頃)
●アラビア製のアストロラーベ(1605~06)
●ケプラーが著した『ルドルフ星表』(1627)(※彼の母親は魔女として捕えられました)
●ドイツのドッペルマイヤーが作った天球儀(1728)
●愛らしい星座絵カード「ウラニアの鏡」(1834)
●ジェームズ・シモンズ作の見事な大太陽系儀(1842)
(チラシより)
この展示構成で気になるのは、「占星術」の話題がまったく出てこないことです。
この展覧会には「天文学」とは別に「占い学」の展示もあるのですが、占星術はそちらにも登場しないので、結局、占星術の話題はゼロです。天文学と占星術の歴史的関係からしても、またハリー・ポッターの世界観からしても、占星術を抜きに語るのは、ちょっと不自然な感じはあります。
(ただ、今の目から見ると占星術はいかにも魔法っぽいですが、近代以前はオーソライズされた学問体系として、むしろ公的な性格のものでしたから、怪しげな魔術師風情といっしょにしないでくれよ…と、昔の占星術師なら思ったかもしれません。)
★
考えてみると、ハリー・ポッターと天文学の話題は、相当微妙ですね。
魔法使いたち御用達の「ダイアゴン横丁」では、惑星の運行を表す太陽系儀(オーラリー)が、教材として昔から売られているといいます。でも、オーラリーと魔法はどう関係するのか?
(ジョセフ・ライトが描いたオーラリー実演の光景。「A Philosopher Lecturing on the Orrery」、1766頃)
上の有名な絵も、一見したところ妖しい印象を受けます。
でも実際には真逆で、ニュートンが発見した万有引力の法則によって、天体の運行が見事に説明されるようになったこと、言い換えれば世界から魔術めいたものが一掃されたことを誇っている絵です。要は18世紀の啓蒙精神を鼓吹する絵ですね。
そればかりではありません。作品中には、ハーマイオニーがハリーとロンをたしなめて、次のように言う場面があって、図録でも引用されています。
「木星の一番大きな月はガニメデよ。カリストじゃないわ…それに、火山があるのはイオよ。シニストラ先生のおっしゃったことを聞き違えたのだと思うけれど、エウロパは氷で覆われているの。子ネズミじゃないわ…。」
…ということは、魔法学校で講じられる天文学は、ルネサンスの手前で止まっているわけでは全然なくて、むしろ惑星探査とか最新の知識に基づいて行われているらしいのです。当然、天体力学や、さらには一般の物理学も踏まえた上でのことでしょう。
さてそうなると、通常の物理法則に従わない、自分たちの魔法・魔術というものを、彼らはどのように説明・理解しているのか?
もちろん、ファンタジーにそうした理屈は不要と割り切ってもいいのですが、こういう展覧会をやるとなると、その辺の接合が少なからず難しいなあ…ということを感じました。
(これもチラシより。それと図録の一部をやっぱり載せてしまいます)
「ハリー・ポッターと魔法の歴史」展によせて(1) ― 2021年09月18日 15時10分47秒
今年、古書検索サイトのAbeBooks が創設25周年を迎えたのにちなんで、これまでに同社が扱った「最も高額な本ベスト25」というのが発表されているのを、偶然目にしました(ページリリースは今年の6月です)。
それによると、『不思議の国のアリス』のアメリカ版初版(1866)が3万6000ドルで第21位に入る一方、それをわずかに抑えて、『ハリー・ポッターと賢者の石』の初版が3万7000ドルで、第20位に食い込んでいました。さらに、作者J.K.ローリングのサイン入り「特装版ハリー・ポッターシリーズ全7巻」は、3万8560ドルで第19位。やはりハリー・ポッターは大したものです。(それでもトールキンにはかなわず、『ホビットの冒険』初版(1937)は、実に6万5000ドルで堂々の第3位です。)
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神戸で「ハリー・ポッターと魔法の歴史」展が始まって、1週間が経ちました。
前回の記事【LINK】を書いた後、結局展覧会の図録を購入しました(兵庫県立美術館のミュージアムショップに注文したら、翌日届きました)。何かものを言うにしても、図録ぐらいは見てないといけない気がしたからです。
まず私が気になっていたその中身について、最初に確認しておきます。
既述のとおり、この「ハリー・ポッターと魔法の歴史」展は、大英図書館で2017年に開催された同名の展覧会を引き継いで、その国際巡回展の一環として開かれているものです。そして英国展の際の図録は、すでに邦訳が出ています。
(左:英国展図録・邦訳版、右:今回の日本展図録)
表紙からして微妙に違いますが、日本展図録の末尾にはこう注釈が入っています。
「本書は、大英図書館「ハリー・ポッターと魔法の歴史」展図録(日本語版、2018年)を、「ハリー・ポッターと魔法の歴史」日本巡回展(2021~2022年)に合わせ一部内容を改訂・増補したもので、掲載図版と展示作品が一致しない場合があります。ご了承ください。」
英国展図録の邦訳版は持ってませんが、そのオリジナルはネットで読めるので、それと今回の日本展図録を比べてみたところ、以下のことが分かりました。
まず日本展図録には、冒頭に日本展の担当学芸員(兵庫県美の岡本弘毅氏、東京ステーションギャラリーの柚花文氏)による解説文が挿入されています。
それ以降の章立ては両者同一ですが、各章の図版と文章については、日本展の図録では、割愛されている部分が少なからずあります。その一方で、日本展だけに見られるものも少数ながら存在します。あるいは英国展に登場した、ジョン・トロートン製のオーラリー(太陽・地球・月の回転モデル)の代わりに、日本展ではジェームズ・シモンズ製のグランド・オーラリー(太陽・地球・月に加え、他の惑星も回転します)が登場するなど、微妙な違いもあります。
これは上の注釈にもあるとおり、おそらく実際の展示内容の違いを反映したもので、日本展は独自の要素を含みつつ、全体としては英国展より小ぶりになっているのでしょう。
★
(チラシも一緒に送ってくれたので、行かないけれども行った気分)
で、改めて図録を見ながらの感想ですが、個々のテーマ、たとえば天文学とか、薬草学とか、錬金術とか、このブログにも少なからず関係するテーマについて、その扱いがやや食い足りないのは否めません。でも、逆にそれぞれのテーマが「食い足りる」ものだったら、見ているうちにすぐお腹いっぱいになって、最後まで見て回れないかもしれません。
それに、これは基本的に「ハリー・ポッター展」なのですから、そこは割り引いて考える必要があります。まあ、ハリー・ポッターと関係があってもなくても、大英図書館所蔵の貴重資料をじかに拝めるなら、それだけでも良しせねばなりません。
(以下、各論につづく)
「ハリーポッターと魔法の歴史」展を覗き見る ― 2021年09月10日 06時12分54秒
明日、9月11日から神戸の兵庫県立美術館で、「ハリーポッターと魔法の歴史」展が開催されます。
(兵庫県立美術館公式サイト
上に記された、その概要を転記すると、
日本で開催される大英図書館史上初の国際巡回展!
イギリスの国立図書館である大英図書館(British Library)は、世界で最も優れた研究図書館の一つです。250年以上をかけて収集されてきたコレクションは1億7000万点に上り、いずれも有史以来のさまざまな時代の文明を代表する資料です。本展は、大英図書館が2017年に企画・開催した展覧会“Harry Potter: A History of Magic”の国際巡回展です。大英図書館の大規模な展覧会が日本に巡回するのは初めてであり、その充実したコレクションの一端をご覧いただける絶好の機会となるでしょう。
イギリスの国立図書館である大英図書館(British Library)は、世界で最も優れた研究図書館の一つです。250年以上をかけて収集されてきたコレクションは1億7000万点に上り、いずれも有史以来のさまざまな時代の文明を代表する資料です。本展は、大英図書館が2017年に企画・開催した展覧会“Harry Potter: A History of Magic”の国際巡回展です。大英図書館の大規模な展覧会が日本に巡回するのは初めてであり、その充実したコレクションの一端をご覧いただける絶好の機会となるでしょう。
…ということで、これは小説「ハリー・ポッター」の展覧会であると同時に、そこで描かれた「魔法・魔術」を切り口に、大英図書館が所蔵する数々の貴重資料を展観するという、大いにそそられる内容です。
日本での展示も、イギリス本国でのそれをなぞる形で、以下の10の小テーマに沿った展示構成になっています。
第1章 旅
第2章 魔法薬学
第3章 錬金術
第4章 薬草学
第5章 呪文学
第6章 天文学
第7章 占い学
第8章 闇の魔術に対する防衛術
第9章 魔法生物飼育学
第10章 過去、現在、未来
第2章 魔法薬学
第3章 錬金術
第4章 薬草学
第5章 呪文学
第6章 天文学
第7章 占い学
第8章 闇の魔術に対する防衛術
第9章 魔法生物飼育学
第10章 過去、現在、未来
このうち、「魔法薬学」と「薬草学」が何となくダブって感じられますが、英語だと前者は「portion 水薬」で、薬草に限らず、ありとあらゆる材料をグツグツ煮たり、蒸留したりして薬液をこしらえる作業、後者は「Herbology 本草学」で、広く植物を採集したり分類したりする作業に重点があるようです。
★
コロナ禍の下では、なかなか会場に行くのも大変ですが、同好の方のために、以下に情報を整理しておきます。
【会期と会場】
本展覧会は、明日からの兵庫会場(9月11日~11月7日)と、12月からの東京会場(12月18日~3月27日)の2箇所を巡回します。
詳細は兵庫会場と東京会場を束ねる、「特別展 ハリーポッターと魔法の歴史」の公式サイト↓から確認できます(公式サイトがいくつもあってややこしいですが、きっと権利関係も錯綜しているのでしょう)。
(展覧会公式サイト https://historyofmagic.jp/)
【内容詳細を見るには】
直接会場には行けないが、そのあらましだけでも見たいと思った場合どうするか?
その一部は、以下の兵庫県美のサイトでも触れられていますが、
ただ、これは本当にさわりだけなので、不全感が残ります。
そこで登場するのが、先日も話題にしたGoogle Arts & Culture です。
そこには、2017年にイギリスで展示されたときの内容が、大英図書館自身の手によって、要領よく紹介されています。
下のページに並ぶ「10個のストーリー」というのがそれで、それぞれハリー・ポッター展の10の小テーマに対応しており、今回日本で展示される品も、ほぼ同様のはずです。
【図録について】
さらにそれを補強するものとして、「図録」があります。
兵庫県美のサイトを見ると、以下の記載があって、図録は今後一般書店でも(たぶんアマゾンでも)購入できるようです。
図録販売のご案内
「ハリーポッターと魔法の歴史」開催期間中、当館ミュージアムショップ(1階)及び展覧会場特設ショップ(3階)において、限定価格で販売しています。
ハリーポッターと魔法の歴史展図録は、一般書店で通常価格2800円で販売されています。
「ハリーポッターと魔法の歴史」開催期間中、当館ミュージアムショップ(1階)及び展覧会場特設ショップ(3階)において、限定価格で販売しています。
ハリーポッターと魔法の歴史展図録は、一般書店で通常価格2800円で販売されています。
なお、これもややこしい話ですが、英国展の際に編まれた図録がすでに邦訳されて、『ハリー・ポッターと魔法の歴史』(静山社、2018年)として、販売されています(アマゾンでも買えます)。
(今日の画像はこの不死鳥ばっかりですね)
ただし、こちらは定価5,280円の豪華本で、今回の図録とは別物だそうです(兵庫県美に確認しました)。ただし、お値段からいって、こちらの方が内容的には充実してるんじゃないでしょうか(この点は未確認です)。
そして、ここが重要ですが、その原書である『Harry Potter - A History of Magic: The eBook of the Exhibition』は、アマゾンのKindle価格1,090円、しかもKindle Unlimited会員なら0円で読むことができます。
(アマゾンの該当ページにリンク)
結局のところ、どうやらネットで見られる情報だけでも、何となく会場に行った気分にはなれそうなので、私の場合、それで満足しようと思います。
★
今日はとりあえず外形的なことに終始しましたが、展覧会の内容については、また別にコメントするかもしれません。それにしても、本当に魔法があったらなあと、コロナを前に思うことしきりです。
アドラーのヴァーチャル展示 ― 2021年09月04日 10時32分28秒
Googleが世界中の美術館・博物館と連携して、ヴァーチャル展示会を提供している、「Google Arts & Culture」というサービスがありますが、その中にシカゴのアドラー・プラネタリウムが、テーマを決めて自館の収蔵品をあれこれ紹介しているページがあるのに気づきました。
■Google Arts & Culture :Adler Planetarium のトップページ
アドラー・プラネタリウムのコレクションは、いわゆる天文アンティークに類する品を含め、広く古今東西の天文関連の文物を対象にしているので、バラエティ豊かで、目で見て楽しいです。しかも、ヴァーチャル展示は、ほんのさわりを紹介しているだけで、その向こうにはさらに多くの品が山とあるわけですから、本当にすごいです。
こういうのを見ると、「いいなあ」と思と同時に、同様のコレクションを自分でも持ちたいと思ってしまうのが、私の弱点です。こんなことを真顔で言うと、何だか見てはいけないものを見るような目で見られるかもしれません。でも、Jリーグにあこがれて練習に励む小学生のように、夢を抱き、目標を高く持つことは決して悪いことではないはずです。
とはいえ、私は小学生ではないし、その夢がかなう可能性はゼロなので、世間的には全く無意味な試みです。それでも、自分だけの「小さなアドラー」が持てたら、それだけで心豊かな老後を送れるような気がします。
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【閑語】
いよいよ政局ですね。「政治と政局は違う」というのは正論で、「今はそんなことで騒いでいる状況ではない」というのも確かですが、しかし今の局面だからこそ、この先の展開は大いに気になるし、水面下での後ろ暗い動きにも、十分目を向けておきたいと思います。このゴタゴタの中から、人間について学べることも多いでしょう。
ときにふと気になったのですが、ひょっとして「人間、口ではどんな綺麗事を言っても、所詮は私利私欲で動いているんだ」というのが、2021年現在の日本の「本音」であり、共通認識になってはいないでしょうか?でも、私はそれに当たらない実例をたくさん見聞きしてきました。信じられない人には信じられないかもしれませんが、私利私欲で動かない人はたしかにいるのです。それも少なからず。
問題は、今の永田町にそういう人がどれだけいるかです(これは自民党に限りません)。少なくとも、総裁選に関して言うと、「赤あげて、白あげて」の旗揚げゲームのように、出馬を宣言したり、こそこそ引っ込めたりする人は、欲得づくの心底が透けて見えて、最初から論外でしょう。
社会貢献2題 ― 2020年10月25日 12時16分05秒
ブログの更新が止まっても、「天文古玩」的活動が止まることはないので、いろいろ見たり、聞いたり、考えたり、買ったりすることは続いています。ただし、書くことだけは止まっている…そういう状態です。
まあ、書くにしたって、内向きのつぶやきばかりでは、あまり社会的活動とは言えませんが、「天文古玩」も、ときに社会に向けて開かれた活動をすることがあります。
★
たとえば、寺田寅彦に触れた8月の記事。
■明治科学の肖像
あそこで紹介した東大の古い卒業写真の複製パネルが、現在、高知市の「寺田寅彦記念館」に飾られています。記事をご覧になった、「寺田寅彦記念館友の会」の山本会長からお問い合わせをいただき、画像ファイルを提供したものです。
(友の会会報 『槲(かしわ)』 第89号より)
山本氏によれば、この時期の寅彦の写真、しかも正面向きの像は珍しい由。そう伺うと、なんだか有難味が増しますが、私一人が有難がっていてもしょうがないので、これは寅彦ゆかりの場所で、多くの寅彦ファンの目に触れるのが正解です。(もちろん現物を寄贈すれば、なお良いのですが、そこは趣味の道ですから、今しばらくは手元で鍾愛することにします。)
★
もう1つはアートに関する話題です。
今年は各地で展覧会の休止が相次ぎましたが、そんな中にあって、苦労の末に開催まで漕ぎつけたのが、横浜美術館で開催された「横浜トリエンナーレ2020」です(会期:2020年7月17日~10月11日)。
そこに私が多少かかわった…というのも謎ですが、さらにこの現代美術の祭典に、ヴィクトリア時代の天文家、ジェイムズ・ナスミス(1808-1890)が、アーティストとして参加していた…と聞くと、いっそう訳が分かりません。その分からないところが現代美術っぽいわけですが、事情を述べればこういうことです。
★
ナスミスは、月に強い関心がありました。
そして望遠鏡で覗くだけでは飽き足らず、石膏で月面の立体模型をこしらえる作業に熱中しました。月の地形をいろんな角度から眺めたかったのでしょう。実際、彼は出来上がった模型をいろいろな角度から撮影して、「月面に立って眺めた月の光景」を仮想的に生み出し、それを本にまとめました。それが『THE MOON』(初版1874)で、これについては昨年記事にしました。
■ナスミスの『月』
今ならCGでやることを、19世紀のナスミスは模型という形で実現したのです。
そして、ナスミスの奔放な想像力が生み出したこれら一連の作品と、その営為が、現代アートの先蹤と捉えられ、晴れて「ヨコトリ」に登場となったわけです。
今回、ナスミスに目を留めたのは、イベント全体のディレクターを務めた「ラクス・メディア・コレクティブ」(ニューデリーを拠点にするアーティスト集団)であり、ナスミスの作品――『THE MOON』所載の図を拡大出力したもの――は、「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」をテーマとする本展覧会の、いわば「プロローグ」として、会場入口付近に並べられたのでした。
(内山淳子氏撮影。以下も同じ)
で、私が何をしたかといえば、手元の『THE MOON』を主催者にお貸ししただけで、結局何もしてないに等しいのですが、それでも説明ボードの隅に、「「天文古玩」コレクション “Astrocurio Collection”」という文字を入れていただき、「どうだ!」と、家族の手前、大いに面目を施したのでした(いじましいですね)。
★
夏炉冬扇といい、無用の用といい、無駄なように見えてこの世に無駄はないものです。
大地に生物地球化学的循環があり、あらゆる生物がそこに参画しているように、「天文古玩」もまた、この世における作用者として、なにがしかの意味と機能を有しているのでしょう。
幻の店をの門をくぐる…「博物蒐集家の応接間」 ― 2020年09月13日 10時52分32秒
第8回を数える「博物蒐集家の応接間」のご案内をいただきました。
今回は豪華なオールカラーの小冊子です。手に取るだけで、豊かな気分になります。
(撮影小物は、波佐見焼結晶構造模型(ルーチカ)、メタセコイアの球果、チェコ製算数教材)
第8回のテーマは「Librairie Trois Bémol」すなわち「トロワ・べモル書店」。
この謎めいたタイトルは、パリの歴史地区の一角に立つ、妖美な古書とアンティークを商う店の名に由来します。そして秘密の知に通じているらしい、その謎めいた店主の横顔に―。
もちろん、トロワ・べモル書店は架空の存在です。
でも、パリにはそういった雰囲気の店舗や小路が実際にあると聞きます。そして、その妖異な気は今や日本にも伝搬して、各地に不思議を商うお店があります。今回の応接間は、そうした6つのショップと5人のクリエイターが神田神保町に集い、幻影のトロワ・べモル書店の現し身を描こうという試みです。
★
不思議な町、不思議な通り、不思議な店…そういうのを私は夢によく見ます。
夢から醒めた後、毎回その味わいをしばらく反芻するんですが、あれはいったい何を表しているんでしょうね。自分の中にある、自分でも知らない秘密とか可能性なんでしょうか。「実現することのなかった自分」たちが、心の一角に集まって、ああいう町を作っているのかもしれませんね。
トロワ・べモル書店の門をくぐった先にあるものは、たぶん人によって違うでしょうが、私の場合は、自分の心の奥の奥に通じている予感があります。そして店主の瞳をのぞき込むと、双頭双尾のウロボロスが複雑に回転しているのが見えるかもしれません。
★
イベント詳細は下記を参照。
■第8回 博物蒐集家の応接間 Librairie Trois Bémol
○会期: 2020年9月26日(土)~9月29日(火) 10:00~19:00(28日は~20:00)
○場所: 三省堂書店神保町本店8階催事場
○参加蒐集家: Landschapboek・メルキュール骨董店・ANTIQUEROOM 702
JOGLAR・sommeil・antique Salon
○参加クリエイター: スズキエイミ・松本 章・Arii Momoyo Pottery・UAMOU
川島 朗
自宅鉱物Bar ― 2020年07月25日 08時36分25秒
梅雨は明けず、コロナは蔓延し、今や国土全体が瘴気に覆われているようで、気分が滅入ります。私もそうですが、何となく逃げ場のない感じで、自宅に逼塞している方も多いでしょう。しかし、何かしらの工夫は必要です。心が涼しくなるような工夫が。
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例年、夏になると夕暮れ時のファントムのように出現する、鉱物アソビさんの「鉱物Bar」。今年は期間限定のイベントではなく、ついに実店舗が吉祥寺にオープンしたとの報に接し、「これは涼やかだなあ…!」と思いました。お店の情景と、冷たい鉱物の世界を思いながら家飲みするのは、今の場合、上々の工夫です。
鉱物のようなお菓子と、鉱物のようなドリンクを楽しめる、このお店を脳内で訪問しながら、机の抽斗から取り出したのは、実際に食べられる鉱物、いやそれどころか、これさえあれば、いくらでもお酒が飲めるという、実にありがたい鉱物です。
すなわち<岩塩>。等軸晶系。硬度は2。
舌で触れれば、鹹味(かんみ)の中にかすかな甘味があり、日本酒によく合います。夏場はことにうれしい味覚。
手元の結晶は蛍光こそ発しませんが、紫外線ランプで青く輝く色合いも涼し気です。
そして、冷酒もよいですが、何か鉱物のようなドリンクはないかな?と思って、家の中を見渡したら、ちゃんと「飲める鉱物」もありました。
H₂Oの固相、<氷>です。氷は多形ですが、通常は六方晶系。氷点付近の硬度は1.5。
これまた夏場には実にありがたい鉱物で、そのまま口に入れても好く、日本酒に浮かべても好いです。(この頃は酒に弱くなったので、ふつうの日本酒をロックで飲んでちょうど良いです。)
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こうして鉱物をせっせっと身中に摂り入れたら、ついには金剛不壊(こんごうふえ)の肉身となって、コロナも怖るるに足らず…とか、そんなことを考えている時点で、すでに壊れかかっている証拠なので、心をクールダウンする工夫がさらに必要です。
天空をめぐる科学・歴史・芸術の展覧会をふりかえる ― 2020年06月29日 07時05分40秒
昨日の記事で、現在開催中の「大宇宙展―星と人の歴史」に触れました。
このブログと興味関心が大いにかぶる、この種の展覧会はこれまでも度々ありましたが、その歩みを一望のもとに回顧することがなかったので、ここに列挙しておきます。
もちろん、この種の試みは諸外国でも盛んでしょうが、そこまで範囲を広げると手に余るので、取り急ぎ日本限定とします(日本限定といっても、アートシーンは日本だけ孤立して存在しているわけではないので、それらは海外の動向と密接に連動しているはずです)。
以下、ネットでパッと出てきたものをサンプル的に挙げますが、それだけでも結構いろいろなことが見えてきます。テーマの力点が、科学・歴史・芸術のどこに置かれているかも様々ですし、科学といっても「科学史」寄りなのか、それとも最先端のサイエンスなのかでも、違いが生まれます。歴史の対象領域も広くて、世界史があれば、日本史もあり、古代・中世があるかと思えば、ルネサンスあり、近現代あり。さらに芸術に関しも、伝統工芸、古典絵画、現代美術、ポップアートと幅が広いです。それらを組み合わせると、まこと世に展覧会の種は尽きまじ。
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それでは、開催時期の順に挙げていきます。(項目は、タイトル、参考画像、会場、会期、URL、主催者解説の順です。引用文中の太字は引用者)
■日輪と月輪:太陽と月をめぐる美術
(図録表紙)
〇サントリー美術館(東京)
〇1998年9月1日~10月11日
〇関連サイトなし(1990年代以前はネットに情報の蓄積が乏しいです)
「古来、人間は、太陽と月にさまざまな思いを託してきました。昼と夜、陽と陰など、その組み合わせは、古代から現代まで、この世界を律するものとして崇められてきました。我が国でも、月見の宴や、各地の祭礼など、太陽や月をめぐる風習は多く残されています。
美術においても、宗教美術をはじめ、水墨画や絵巻、近世の屏風絵など、太陽すなわち日輪と、月の姿である月輪は、古くから芸術家にとって格好の題材となりました。手箱や硯箱などの蒔絵の意匠や、武将が身につけた甲冑武具の前立や軍扇、さらには刀の鐔や女性の身につける櫛かんざしに至るまで、時代や材質形状を問わず、その様相はきわめて多彩です。
この展覧会は、日月すなわち日輪と月輪が描かれた絵画や、太陽や月をかたどった工芸を一堂に展示し、日月が芸術の世界でどのように表現されてきたかをさぐろうとするものです。思えば、太陽と月は、太古の昔から人間の営為を見守って来ました。この展観によって、日月が芸術の中に占める位置とその意味を、美術作品を通して改めて見直す機会となれば幸いです。」<図録巻頭「ごあいさつ」より>
■天体と宇宙の美学展
〇滋賀県立近代美術館
〇2007年10月6日~11月18日
「地球上の生命の源である太陽、満天の夜空に輝く星や月、無限に広がる宇宙空間に漂う銀河系。宇宙の神秘と謎はたえず人間の魂を魅了し、人々の想像力をかき立ててきた。古代より星辰の運行は、航海や牧畜、農耕などの日々の労働と生活に密接に結びつき、また惑星と黄道十二宮は、人間の性質や運命に多大な影響を及ぼすと考えられてきた。近代以降、天文学がめざましい発展を遂げ、宇宙に関する知識は飛躍的に拡大深化したが、それでもなお宇宙は人間にとって、無限の謎を秘めた存在であり、今なお人々は夜空を見上げ、星や宇宙に思いを馳せている。
この展覧会は、近現代美術を中心に、太陽と月、惑星や恒星、銀河などの天体と宇宙を主題にした美術作品を、絵画、水彩、版画、写真、立体作品など、さまざまな分野から155点選び、芸術家が、天体や宇宙をどのように思い描き、作品の中にどのような夢を託してきたのか、天文学からいかなる影響を受けてきたのかなど、人間と天体、人間と宇宙の関わりを美術の中に探る試みであった。」
■七夕の美術―日本近世・近代の美術工芸をみる
〇静岡市美術館
〇2012年6月23日~7月22日【前期】、7月24日~8月19日【後期】
「「笹の葉さらさら」「短冊」「織姫と彦星」…。七夕伝説は「乞巧奠(きっこうでん)」という、古代中国の魔除けの風習に端を発しています。本展では日本の近世・近代の絵画、工芸などにより、儀礼としての七夕、日本独自のもう一つの七夕・天稚彦(あめわかひこ)物語の絵巻などにより人々の「星に願いを」という思いをお届けします。」
■ミッション[宇宙×芸術]-コスモロジーを超えて
〇東京都現代美術館
〇2014年6月7日~8月31日
「21世紀最初の10年が過ぎ、私たちをとりまく「宇宙」はますます身近なものになりました。研究開発の進むリアルな宇宙と、アーティストの表現としての内的宇宙は、パラレルワールド=並行世界として急速に拡張/集束しつつあります。本展では、2014年夏の宇宙ブームにあわせて、限りなく私たちの日常に近づく宇宙領域と、アーティストらによる内的宇宙を、個々のコスモロジー=宇宙論を超える多元的宇宙として呈示します。
日本において戦後すぐに始まったアーティストらの試みは、現代作品(パーティクル=粒子や宇宙線による作品、人工衛星によるサテライトアートなど)として展開を続けています。約10年にわたりJAXAが実施した『人文・社会科学利用パイロットミッション』など、世界的にも先駆的かつ意欲的な活動が試みられてきました。また近年、小惑星探査機「はやぶさ」帰還と同2号機打ち上げ、大規模な博覧会や展示施設のオープン、種子島宇宙芸術祭プレイベントなど、宇宙領域は社会的ブームとして活況を見せています。本展は、アートインスタレーション、人工衛星やロケットの部品(フェアリング)などの宇宙領域資料、宇宙にかかわる文学、マンガやアニメーションなどエンターテインメント領域、参加体験型作品の展示やトーク&イベントを通じて新たな可能性を探り、「拡張/集束する世界をとらえ、描写する」試みです。かつてのような異世界や理想郷としてだけでなく、本当の意味で「日常」となる私たちの「宇宙」について体験し、考えてみましょう。」
日本において戦後すぐに始まったアーティストらの試みは、現代作品(パーティクル=粒子や宇宙線による作品、人工衛星によるサテライトアートなど)として展開を続けています。約10年にわたりJAXAが実施した『人文・社会科学利用パイロットミッション』など、世界的にも先駆的かつ意欲的な活動が試みられてきました。また近年、小惑星探査機「はやぶさ」帰還と同2号機打ち上げ、大規模な博覧会や展示施設のオープン、種子島宇宙芸術祭プレイベントなど、宇宙領域は社会的ブームとして活況を見せています。本展は、アートインスタレーション、人工衛星やロケットの部品(フェアリング)などの宇宙領域資料、宇宙にかかわる文学、マンガやアニメーションなどエンターテインメント領域、参加体験型作品の展示やトーク&イベントを通じて新たな可能性を探り、「拡張/集束する世界をとらえ、描写する」試みです。かつてのような異世界や理想郷としてだけでなく、本当の意味で「日常」となる私たちの「宇宙」について体験し、考えてみましょう。」
■明月記と最新宇宙像
〇京都大学総合博物館
〇2014年9月3日~10月19日
「藤原定家の残した日記「明月記」の中には、安倍晴明の子孫の観測した超新星(客星)の記録3件が記載され、20世紀前半の世界の天文学の発展に大きな貢献をしました。
本特別展では、明月記の中の超新星の記録が、いかにして世界に知られるようになったか、最近明らかになった興味深い歴史と京大の宇宙地球科学者たちとのつながり、さらに関連する最新宇宙研究について解説します。」
本特別展では、明月記の中の超新星の記録が、いかにして世界に知られるようになったか、最近明らかになった興味深い歴史と京大の宇宙地球科学者たちとのつながり、さらに関連する最新宇宙研究について解説します。」
■宇宙をみる眼―アートと天文学のコラボレーション
〇志賀高原ロマン美術館(長野県)
〇2015年7月18日~10月12日
(※コラボした国立天文台野辺山宇宙電波観測所のサイトです)
「天文学は、宇宙の起源や系外惑星などの研究の急激な進展によって、人間が誰でも思い描く根源的な疑問、すなわち「私たちがなぜここにいるか、私たちがどこからきたか?」といった疑問について、答えることが出来るような時代に入ってきた。この意味で以前にもまして、天文学と芸術とのつながりを模索することは意義があると考えられる。
このような試みの1つとして、「志賀高原ロマン美術館」では、2015年7月18日~10月12日まで、企画展「宇宙を見る眼、アートと天文学のコラボレーション」を開催している。そこでは、「アーティスト・イン・レジデンス in 国立天文台野辺山」の事業としてアーティストが国立天文台野辺山宇宙電波観測所に滞在して得たインスピレーションを反映した全5作品と、長野ゆかりのアーティストによる「宇宙」の作品が展示されている。
この「アーティスト・イン・レジデンス」という活動は、アーティストを地方自治体や研究機関などに数日から数ヶ月招聘し、滞在中の活動を支援する事業であり、本年5月に、国内の天文学研究機関としては初めて、国立天文台野辺山で実施された。これらの作品と共に、現在大活躍中のチリのアルマ電波望遠鏡用の受信機や国立天文台野辺山で実際に使用されていた受信機、東京大学木曽観測所で実際に使用された可視光や赤外線のCCDカメラなどを展示し、人や観測装置による「眼」を通した多様な宇宙像を提示している。
わたくしたちは、このような天文学と芸術にわたる活動自体を新しいアート・天文教育の創造の場ととらえ、冒頭の疑問への答えをさぐれるよう、今後も活動を続けていきたい。」(改行は引用者)
このような試みの1つとして、「志賀高原ロマン美術館」では、2015年7月18日~10月12日まで、企画展「宇宙を見る眼、アートと天文学のコラボレーション」を開催している。そこでは、「アーティスト・イン・レジデンス in 国立天文台野辺山」の事業としてアーティストが国立天文台野辺山宇宙電波観測所に滞在して得たインスピレーションを反映した全5作品と、長野ゆかりのアーティストによる「宇宙」の作品が展示されている。
この「アーティスト・イン・レジデンス」という活動は、アーティストを地方自治体や研究機関などに数日から数ヶ月招聘し、滞在中の活動を支援する事業であり、本年5月に、国内の天文学研究機関としては初めて、国立天文台野辺山で実施された。これらの作品と共に、現在大活躍中のチリのアルマ電波望遠鏡用の受信機や国立天文台野辺山で実際に使用されていた受信機、東京大学木曽観測所で実際に使用された可視光や赤外線のCCDカメラなどを展示し、人や観測装置による「眼」を通した多様な宇宙像を提示している。
わたくしたちは、このような天文学と芸術にわたる活動自体を新しいアート・天文教育の創造の場ととらえ、冒頭の疑問への答えをさぐれるよう、今後も活動を続けていきたい。」(改行は引用者)
■宇宙と芸術展
〇森美術館(東京)
〇2016年7月30日~2017年1月9日
「〔…〕宇宙は古来、人間にとって永遠の関心事であり、また信仰と研究の対象として、世界各地の芸術の中で表現され、多くの物語を生み出してきました。本展では、隕石や化石、ダ・ヴィンチやガリレオ・ガリレイ等の歴史的な天文学資料、曼荼羅や日本最古のSF小説ともいえる「竹取物語」、そして現代アーティストによるインスタレーションや、宇宙開発の最前線に至るまで、古今東西ジャンルを超えた多様な出展物約200点を一挙公開。「人は宇宙をどう見てきたか?」、「宇宙という時空間」、「新しい生命観―宇宙人はいるのか?」、「宇宙旅行と人間の未来」の4つのセクションで構成し、未来に向かっての新たな宇宙観、人間観を提示することを試みます。2016年夏、六本木を宇宙の入り口として「私たちはどこから来てどこへ向かうのか」を探る旅となる本展にご期待ください。」
■天文学と印刷 新たな世界像を求めて
〇印刷博物館(東京)
〇2018年10月20日~2019年1月20日
「ニコラウス・コペルニクス、ティコ・ブラーエ、ヨハネス・ケプラー、天文学の進展に大きな役割を果たした学者と印刷者の関係を紐解きます。
天動説から地動説(太陽中心説)への転換が起こるきっかけとなった『天球の回転について』。著者であるコペルニクスの名は知られている一方、本書の印刷者を知る人は少ないのかもしれません。15世紀のヨーロッパに登場した活版および図版印刷は、新たな世界像を再構築していく上で大きな役割を果たしました。学者と印刷者は共同で出版を行うのみならず、学者の中には自ら印刷工房を主宰した人物も存在します。本展では学問の発展に果たした印刷者の活躍を、天文学を中心に紹介します。」
■「星とアート」展―星を忘れない。天空のイメージ―
〇西脇市岡之山美術館(兵庫県)
〇2019年8月4日~12月1日
「夜空に輝く星の姿は、天空の太陽、月、天の川、さらには雲や山、海原などの地上とからみあう風景的なものと深く関わり、古来から様々なかたちで人々の想像力を刺激してきました。とりわけ夜空に輝く星座のかたちには、神話、物語、伝説の登場人物、聖獣と聖なるものの形象がそこかしこに投影されました。星の姿かたちは、アートの世界に刺激を与え、時代をこえて綿々と語り継ぐ重要な対象となっています。
本展覧会は、星空を彩るイメージの佇まいに注目し、天空の星を作品のテーマに据えた多彩な作品を一堂に紹介します。幸村真佐男による天体の軌跡の写真をはじめ、日本古来の星座神話の研究で知られる国文学者勝俣隆による星の神話をめぐるドローイングの仕事、星、天使、妖精たちのヴィジョナリーな世界を描く寺門孝之、デリケートな感覚と筆触で月と風景を描く増田妃早子、星空やはるかな宇宙の佇まいと生活風景との予想外の結びつきを取り上げた中山明日香、天体と風景、星と自然とのきずなを深く意識した作品で知られる片山みやびによる多彩な表現を通じて、星とイメージをめぐる人間の想像力とアートの魅力に迫ります。」
本展覧会は、星空を彩るイメージの佇まいに注目し、天空の星を作品のテーマに据えた多彩な作品を一堂に紹介します。幸村真佐男による天体の軌跡の写真をはじめ、日本古来の星座神話の研究で知られる国文学者勝俣隆による星の神話をめぐるドローイングの仕事、星、天使、妖精たちのヴィジョナリーな世界を描く寺門孝之、デリケートな感覚と筆触で月と風景を描く増田妃早子、星空やはるかな宇宙の佇まいと生活風景との予想外の結びつきを取り上げた中山明日香、天体と風景、星と自然とのきずなを深く意識した作品で知られる片山みやびによる多彩な表現を通じて、星とイメージをめぐる人間の想像力とアートの魅力に迫ります。」
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とりあえず資料としてズラズラ並べましたが、ここから何を導くか?
まっ先に思ったことは、こうした「学際的」展覧会が、2000年代以降盛り上がりを見せた(らしい)ことと、2006年にスタートしたこのブログとは、おそらく無縁ではないということです。つまり、時代にひそむ「何か」が、一方で数々の展覧会として形を成し、他方では(規模こそ全く違いますが)私という人間に「天文古玩」というブログを書かしめた…と、想像するのですが、その「何か」が何であるは、これからゆっくり考えます。
当人は「書かされた」意識がまったくないんですが、文化的影響力とはそういうもので、人間の自由意志も、100%何物からも自由ということはありえないですね。
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