月とホトトギスの装身具(3) ― 2026年02月07日 08時33分23秒
今日登場するのは、簪(かんざし)ではなく櫛(くし)です。
(左右幅は 10.7cm)
漆を盛り上げた「高蒔絵」のホトトギス。
こういうのは時代判定が難しいですが、「閑清形」と呼ばれる櫛の形や、桑材に高蒔絵という趣向は、江戸後期~末期のものであることをうかがわせます(別にこの種のものに通じているわけではなく、装身具の解説書を眺めて一知半解で書いています)。
一方、月はといえば、裏側に凛然と浮かんでいます。
表と裏でひとつの絵柄とするというのも、時代の嗜好であり、職人の機知でしょう。
金のホトトギスと銀の月の対比が美しいと思いました。
もちろん、昔の物がなんでもかんでも良いわけではありませんが、こういうのは確かに精神的な豊かさの証で、床しく感じます。(省みて今の我々はどうか…と、つい問いたくなりますが、まあ、これは言わぬが花でしょう。)
★
ホトトギス以外にも月の簪には佳品がまだまだあります。
月を身にまとう優雅さを愛でつつ、そちらはまた折を見て登場させることにします。
(この項とりあえず終わり)
コメント
_ S.U ― 2026年02月07日 09時40分33秒
_ 玉青 ― 2026年02月07日 14時31分01秒
昔も今も良いものは高いですが、同じ買うなら昔の良いものを買いたいと思います。それは単なる尚古趣味ばかりでなく、「今だったらとてもこの値段では作れないだろう」というものが多いので、相対的にお買い得のような気がするからです。これは「実利」に基づく判断ですから、私も結構、金銭即物的なところがありますね(笑)。
業務連絡の件、重ねてよろしくお願いいたします。
業務連絡の件、重ねてよろしくお願いいたします。
_ S.U ― 2026年02月07日 17時44分36秒
>今だったらとてもこの値段では作れないだろう
ちょっと脱線しますが、材料価値と骨董価値で最近判明したことがあるので、すみませんが、あまり結論が打算的にならぬよう書いておきたいと存じます。
2026年現在、20世紀発行の大半の金貨について、材料価値が高騰して、骨董価値を追い抜いてしまいました。これは、興味深い現象だと思います。骨董価値=材料価値×定数C (定数C>1)が維持されると思いきや、骨董価値<材料価値となるようにあっさり追い抜かれてしまい、骨董品が純粋に材料価値で取り引きされるようになっています。その結果、歴史的美術的技術史的な価値がある貨幣が溶融されると推定されます。溶融されて数が減れば、将来的には、骨董価値=材料価値×定数C (定数C>1)モデルが復活するのでしょうが、人々がモノを手に取れる機会は減るわけです。
金貨ではこれが普通の傾向だけれども、金銀以外ではそういう現象はなく、普通の骨董は材料価値は無視されているのでしょうが、それは実はモノにとっては幸せなことでないかと思います。
ちょっと脱線しますが、材料価値と骨董価値で最近判明したことがあるので、すみませんが、あまり結論が打算的にならぬよう書いておきたいと存じます。
2026年現在、20世紀発行の大半の金貨について、材料価値が高騰して、骨董価値を追い抜いてしまいました。これは、興味深い現象だと思います。骨董価値=材料価値×定数C (定数C>1)が維持されると思いきや、骨董価値<材料価値となるようにあっさり追い抜かれてしまい、骨董品が純粋に材料価値で取り引きされるようになっています。その結果、歴史的美術的技術史的な価値がある貨幣が溶融されると推定されます。溶融されて数が減れば、将来的には、骨董価値=材料価値×定数C (定数C>1)モデルが復活するのでしょうが、人々がモノを手に取れる機会は減るわけです。
金貨ではこれが普通の傾向だけれども、金銀以外ではそういう現象はなく、普通の骨董は材料価値は無視されているのでしょうが、それは実はモノにとっては幸せなことでないかと思います。
_ 玉青 ― 2026年02月08日 19時13分35秒
切ない話ですね。まあ、金貨の審美的価値は経済的価値に従属する副次的なものかもしれませんが、他にも歴史的価値というのもあるわけで、そういうのを全部無視して鋳溶かしてしまうのは随分乱暴な話ですよね。他のモノでも、品下れる時代になると、やっぱり材料価値のみが注目されて、貴重な古典籍が古紙のリサイクルに回されたり、歴史ある古民家が解体されて焚き付けになるとか、そういうことが頻発してくるんじゃないでしょうかね。
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櫛も漆も材料は野山の植物ですから、それ自体はそれほどレアということはないのでしょうが、高品質のものは相当レアで、職人自身が多くの材料のなかからごく少数の傑出したものを選ばないといけなかったのかもしれません。経済戦略でも職人信条でも、よい材料はより気合いを入れて細工したでしょう。ご蒐集のものもそういう傑出した材料のものかもしれません。
現在は、材料が標準化され、代わりに、加工技術の工夫の努力がつぎ込まれるようになったので、そういう単純な図式は成立しなくなったように思います。職人が材料を選ぶことも減ってきたでしょう。
業務連絡へのご返事ありがとうございます。こちらも考えて進めます。