淳祐天文図 ― 2026年01月23日 05時56分26秒
前回の記事の中に、東洋文庫所蔵の「淳祐天文図」(蘇州石刻天文図)が写り込んでいました。宋代の淳祐7年(1247)に王致遠が刻した、この精緻な星図は非常に有名なので、書籍やネット上でもよく目にします。
日本に圧倒的影響を及ぼした中国天文学の精華である、その現物(拓本)には憧れを抱きつつも、当然希少かつ高価なものですから、簡単に手に取るというわけにはいきません。でも蛇の道は蛇。探しているうちに、出物を見つけました。
いつもの部屋の、いつもの本棚の前に掛けてみましたが、下の方は床についてしまい、全体を広げることができません。
背後の本棚も幅120センチ、高さ197センチと、決して小さくはないのですが、それと比較すると、この図のサイズ感がお分かりいただけると思います。
と言っても、種を明かせばこれは複製です。
でもなかなかよくできた複製で、こうしてディスプレイ越しに見る分には、おそらく複製と分からないでしょう。
実物を見ると拓本特有の凹凸がないので、さすがに複製と分かりますけれど、ぱっと見では、紙質や墨の具合も真に迫っていて、本物と思ってしまう人もいるんじゃないでしょうか。
単なる参考資料に過ぎないとはいえ、あの淳祐天文図を手元に置くことには、天文古玩趣味の徒にとって単なる象徴以上の意味があります。
その背後に潜む無数の歴史ドラマを想像すると、一瞬我を忘れるというのも、決して大げさな物言いではありません。
★
この掛け軸は拓本の複製を入手してから、表装を施してもらいました。
最初、市内の表具屋に片っ端から電話で問い合わせた段階では、口をそろえて「そのサイズになると表装は無理。そもそも表装用の布が手に入らない」と断られましたが、最後に頼った表具屋は、さすが老舗だけあって「ちょっと方法を考えさせてくれ」と言って、結局こちらの予算内で仕上げてくれました。地獄に仏とはこのことです。
そんな苦労があるので、複製とはいえ個人的に愛着を覚える一品です。
コメント
_ S.U ― 2026年01月23日 07時58分39秒
素人考えですが、拓本の複製でもこのサイズになると版を起こすほうが、拓本をとるよりたいへんということはないでしょうか。(現在、原本の石刻がどういう状態であるのかしりませんが)
_ まいくろ ― 2026年01月23日 12時34分35秒
初めまして。
自室には、40年位前に中国のお土産として頂いたポスターがあります。
南宋石刻天文図(図の字は口の中に冬)というもので、北京古観象台が作成したようです。星図のみで、原本下部の説明文はありません。ポスターの説明文では、この図碑は■州博物館(■は、草冠の下に力、その左右に点。「亦」に似てる。)に現蔵するとのことですが、2026年時点ではどうなんでしょう?
~ kept in Suzhou Museum now.(←英文の説明部分)
自室には、40年位前に中国のお土産として頂いたポスターがあります。
南宋石刻天文図(図の字は口の中に冬)というもので、北京古観象台が作成したようです。星図のみで、原本下部の説明文はありません。ポスターの説明文では、この図碑は■州博物館(■は、草冠の下に力、その左右に点。「亦」に似てる。)に現蔵するとのことですが、2026年時点ではどうなんでしょう?
~ kept in Suzhou Museum now.(←英文の説明部分)
_ 玉青 ― 2026年01月24日 08時15分15秒
○S.Uさま
私もよく知らずに書いていますが、こういう「大物」の場合、良質の画像データ(中心部から周辺部まで歪みのない、全体にピントの合った精細画像)をいかにして得るかが肝のような気がします。それさえあれば、今なら大型プリンターの能力に応じて、コピーがじゃんじゃか作れるのでは…と想像するんですが、実際のところどうなんでしょうね。
ちなみに、蘇州碑刻博物館に現存する天文図石碑の近影は以下の論文に載っていました。
宮島一 彦「蘇州天文図に関する若干の検討と碑文の訳注」
大阪市立科学館研究報告 29, 49-64. (2019)
https://www.sci-museum.jp/wp-content/themes/scimuseum2021/pdf/study
/research/2019/pb29_049-064.pdf
○まいくろさま
初めまして。コメントありがとうございます。
北京古観象台がオフィシャルに制作したポスターとなると、それ自体貴重なものですね。ちなみに「苏州」は「蘇州」の簡体字で、同地の博物館における保存近況は上記S.Uさん宛のお返事に記した論文中に写真が載っていました。繰り返し拓本を取ったためか、墨で表面は真っ黒になっていますが、石碑自体は今もしっかり残っているようです。
私もよく知らずに書いていますが、こういう「大物」の場合、良質の画像データ(中心部から周辺部まで歪みのない、全体にピントの合った精細画像)をいかにして得るかが肝のような気がします。それさえあれば、今なら大型プリンターの能力に応じて、コピーがじゃんじゃか作れるのでは…と想像するんですが、実際のところどうなんでしょうね。
ちなみに、蘇州碑刻博物館に現存する天文図石碑の近影は以下の論文に載っていました。
宮島一 彦「蘇州天文図に関する若干の検討と碑文の訳注」
大阪市立科学館研究報告 29, 49-64. (2019)
https://www.sci-museum.jp/wp-content/themes/scimuseum2021/pdf/study
/research/2019/pb29_049-064.pdf
○まいくろさま
初めまして。コメントありがとうございます。
北京古観象台がオフィシャルに制作したポスターとなると、それ自体貴重なものですね。ちなみに「苏州」は「蘇州」の簡体字で、同地の博物館における保存近況は上記S.Uさん宛のお返事に記した論文中に写真が載っていました。繰り返し拓本を取ったためか、墨で表面は真っ黒になっていますが、石碑自体は今もしっかり残っているようです。
_ S.U ― 2026年01月25日 06時44分51秒
製版ではなくて、プリンター(インクジェットヘッドのような)なら可能性は有りますね。写植製版は、普通は、A0(長辺約1.2m)までだと思いますが、プリンターなら、ヘッドが動く軸があれば、その幅のロール紙が存在する限り、プリンターは組み立てられて動くでしょう。壁紙型の展示品はそれでやっているようです。
あとは、おっしゃるようにデジタル写真技術ですが、これは、ここ5~6年程で、芸術作品保存用とAIで画期的に進歩しているはずで、なんでもアリになっているでしょう。
あとは、おっしゃるようにデジタル写真技術ですが、これは、ここ5~6年程で、芸術作品保存用とAIで画期的に進歩しているはずで、なんでもアリになっているでしょう。
_ 玉青 ― 2026年01月25日 13時00分34秒
>なんでもアリ
それが良いことか悪いことか、まあ技術の勝利であることは間違いないですが、何でもかんでもお手軽にポン…となると、少なくとも「有難み」は薄れますね。
それが良いことか悪いことか、まあ技術の勝利であることは間違いないですが、何でもかんでもお手軽にポン…となると、少なくとも「有難み」は薄れますね。
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