クシー君の不思議な発見は今も続く2025年09月05日 20時31分24秒

ブログを長く続けていてよかった…と、しみじみ嬉しく思うことがあります。
昔の記事にふとコメントを頂戴するのもそのひとつ。

   ★

今日、yama さまから頂いたのは、なんと15年前の記事に対するコメントです。

(元記事:永遠のクシー君憧憬

そのこと自体うれしい驚きでしたし、そこでお知らせ頂いた内容が、当時見たくても見られなかった「幻のCM」が、今ならあっさりYouTubeで見られるという、これまた嬉しい驚きを伴うものでした。

その「幻のCM」とは、故・鴨沢祐仁氏の作品を代表するキャラクター「クシー君」と、相棒役であるウサギの「レプス君」を起用した、森下グリーン仁丹のCMです。


このCMが、横浜の放送ライブラリーに行けば視聴可能ということは、記事を書いた7年後(!)に、別の方からお教えいただきましたが、現物を見る機会は今日に至るまでついぞなかったのです。

それがYouTubeにアップされたのは、今から6年も前ですから、迂闊といえばずいぶん迂闊な話ですが、出会いはタイミングであり、こうしてお教えいただかなければ、一生見る機会はなかったかもしれません。(それにしても、6年間で再生回数が3,600回あまりとはいささか寂しい話。ぜひ皆さんにも視聴をお願いしたいと思います。)

放送ライブラリーのデータベース【LINK】を見ると、このCMは

○タイトル グリーン仁丹「クッシー君の不思議な発見」
○制昨年 1982年
○時間 30秒
○広告主 森下仁丹
○広告会社 博報堂
○制作会社 TCJ

となっています。ウィキによれば、TCJとは「Television Corporation of Japan Co.,Ltd.」の略で、老舗のCM会社として、かつてはアニメ制作部門も有し、スーパージェッターや鉄人28号を作ったのはこの会社だとあって、へえ…と思いました。

   ★

このCMはわずか30秒のショート作品ですが、そこにはいくつか注目すべき要素があります。

●紫のボウタイ姿で夜の散歩を楽しむクシー君(レプス君は赤いタイ)
●輪っかを取り落とす土星
●グリーン仁丹に変じた星粒を口にする二人
●夜の町を走り抜けるボギー車…

これは鴨沢氏オリジナルであると同時に、かなり足穂色の濃い作品と感じます。

   ★

今回嬉しかった、もうひとつのこと。

私はきっと足穂も仁丹を作品中に登場させていると思い、「足穂 仁丹」で検索してみました。すると確かに、「タッチとダッシュ」(「文芸レビュー」1929年11月)の中で「お星様にしろ、仁丹ほどのつぶになって後頭部にはいってこそ、である」と、彼は書いていることを知りました。偶然とはいえ、グリーン仁丹のCMには、確かにその残響が感じられます。

   ★

上の事実を教えていただいたのは、下の論文です。

■川端あや(著)
 「稲垣足穂の月・星・夜―「一千一秒物語」を中心に―」
 『日本文學』(東京女子大學日本文學研究會 [編])
 118号(2022.3.15発行)、 pp. 85-101.

川端氏は論文発表時、博士前期課程に在籍されていたそうで、足穂世界がこうして若い方にしっかり引き継がれていくのは、これまた嬉しいことです(ひどく老人めいた感慨ですが)。

そして何よりも、論題が拙ブログ的には絶対見逃せないものですから、深甚の興味をもって拝読しましたし、巻末の注の中に、常連コメンテーターであるS.U氏のお名前を見い出して、一種のスモール・ワールド現象を味わい、そのことも嬉しく感じられたのでした。

   ★

こうして嬉しい驚きの連鎖を与えていただいたyamaさまに、改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

コメント

_ S.U ― 2025年09月07日 09時36分09秒

このCM見た記憶がありません。残念!
いつ頃まで、どの番組で出ていたかおわかりならお教え下さい。

でも、私は、実際見たことがない可能性が高いです。見ていたら、鴨沢さんは知らなくても、足穂の世界と気がついて記憶したと思いますので。

_ 玉青 ― 2025年09月07日 10時30分53秒

森下仁丹の過去のスポンサー番組が、ウィキペディアに載っています。
https://x.gd/zgTVG
「快傑ハリマオ」に始まり、「とくだね!」に至る一連の番組の中で、このCMの放映年である1982年(いつまで放映されていたかは不明)に合致するのは、「三枝の爆笑美女対談」だけなんですが、爆笑美女対談なんでしょうかねえ? CMの情緒とは著しく乖離しているし、このCMを懐かしむ方は、皆さん爆笑美女対談を見ていたことになりますが…。うーむ、謎です。(まあ、スポットCMという可能性もありますね。)

_ S.U ― 2025年09月07日 11時18分21秒

ありがとうございます。
「三枝の爆笑美女対談」はなんとなく題名に記憶があるの見た可能性はありますが、その頃は、テレビを見ること自体少なかったので、毎週見ていることはないので気付かなかったかもしれません。見ていても、注意が散漫だと記憶に残らない可能性もあります。

 ところで、タルホにルール・ブリタニアを歌う土星が飲み屋の入り口で輪っかをはずして置いて盗られる話がありましたよね。土星が自らすすんで輪をはずすというのは、タルホのオリジナルなんでしょうか。

_ 玉青 ― 2025年09月07日 13時15分57秒

うーん…何となく土星の環の定期的消失を、「土星が輪っかを取り落としたぞ!」と冗談めかして言う例が、西洋には昔からありそうな気もするんですが、今のところその実例を知りません。

ところで、このS.Uさんとのやりとりは10年前から続いているんですかね?
だいぶメートルも上がったはずですが、いまだ神輿を上げないとは、我々もずいぶん長っ尻な客ですね(笑)。
https://mononoke.asablo.jp/blog/2015/03/15/7590901

我々がバーのカウンターでそんな話を10年も続けているうちに、土星氏が「ちくしょう!輪っかを盗られた!」とかなんとか、つい先日も騒いでましたけど、あの顔色はどうも剣呑です。

_ S.U ― 2025年09月07日 15時51分57秒

なるほど。多少着目点はずれていますが、似たようなことを議論していますね。今年はちょうど「土星環の消失」と関連付けられたので、有意義な議論でしたね。

 西洋では、バーやレストランに入ったときにコートは脱いで預けるという慣習があるではないですか。その時にいやいやこれはなどと言って預けないのはマナーに反するというような。日本なら勝手にそのへんのハンガーにかけたり、椅子に掛けたりもしますが。そういう連想が西洋にありそうです。

_ 玉青 ― 2025年09月07日 18時08分46秒

さっきからバーテンダーがこっちをチラチラ見ていますから、そろそろ河岸を替えますか。そういや、この向こうに一寸気の利いた店が出来たそうで、ちょうど今夜は夜更けに赤ら顔の月が来ると言ってましたから、奴さんの話もひとつ聞いてみましょう。

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