ルネサンスと占星術とネオ・プラトニズム2025年10月24日 18時18分45秒

今月は『週刊現代』のほかにもう一冊雑誌を買いました。


『芸術新潮』の10月号です。
10月号の特集は「鏡リュウジの占星術でめぐる西洋美術」

こういうのは、たいてい何か大規模な展覧会に合わせて組まれることが多いと思いますが、今回は特にそういうのは無くて、純粋にルネサンス美術鑑賞の背景知識として、当時の占星術ブームや、古代の異教的伝統とキリスト教の関係について知っておこうという趣旨のようです。


記事の方は、占星術研究家の鏡リュウジ氏(1968~)が、ルネサンス思想史と芸術論が専門の伊藤博明氏(1955~)および西洋美術史家の池上英洋氏(1967~)と、それぞれ実作品を眺めながら対談する内容がメインになっています。

このテーマはいつも分かりにくく感じていたので、大いに蒙をひらかれました。中でも「なるほど」と思ったのは、伊藤氏のコラム記事「ルネサンス時代のさまざまな異教秘儀とそのルーツ」に出てくる以下の記述です(太字は引用者)。

 「ルネサンスはフランス語の「再生」を意味する言葉であり、この時代に古代ギリシア・ローマの学芸と文化が復興したことを示しています。〔…〕ところが、彼らに帰されている著作〔=『ヘルメス文書』やゾロアスターの『カルデアの託宣』など〕はすべて、後1~3世紀に思想・文化のカオスと言うべき、アレクサンドリア周辺において成立しました。〔…〕ルネサンスの人々は壮大なアナクロニズム(時代錯誤)に陥っていたのです。彼らが再生させたのは、古代ギリシアではなく後期ヘレニズムの思想だったのです。

   ★

コラム本文にも登場するワードですが、思想史の話題で、私がいつも躓くのは「ネオ・プラトニズム」というやつです。「新プラトン主義」と聞けば、自ずとあの哲人プラトンを思い浮かべますが、それと「万物の一者からの流出」を説く、すぐれて神秘主義的な思想とのつながりが今ひとつ分らず、これまで何となく敬遠していました。でも、言うなればこれは私自身のアナクロニズムに他ならず、ここは思い切って「プラトンの思想と新プラトン主義はまったく別物だ」と割り切るのが至当ではないでしょうか。

プラトンと新プラトン主義の関係は、おそらく老子と道教の関係に近いのでしょう。そこには確かに連続した要素があると思いますが、白と黒が連続しているからといって、白と黒が同じとは言えないように、やっぱり違いの方が目立ちます。同じことは孔子と朱子学の関係や、ゴータマ・ブッダと密教の関係についても言えそうです。

要するに、ネオ・プラトニズムは、決して「新しいプラトン主義」ではなく、「ネオ・プラトニズム」というひとつの固有の思想だ…と考えるわけです。まあ、素人のいうことですから、あまり真面目に受け止めてもいけませんが、そう考えることで、少なくとも私自身は非常にすっきりした気分です。