Flying to the Planets2025年08月01日 17時41分05秒



こんな不思議な絵を見つけました。


大地と雲、そして太陽と惑星がひとつの画面に描かれ、遠い惑星に向けて複葉機が飛び立つのを子供たちが見送っています。


複葉機が登場するのは、惑星がどれほど遠いかを教えるための方便で、当時の「速い乗り物」の代表が複葉機だったのでしょう。この(時速96kmの)超速飛翔体でも、木星までは740年もかかるよ…云々というわけです。描かれているのは、ファルマンっぽい草創期の複葉機ですから、この絵も1910年代前半の出版物から取ったもののようです。


しかもよく見ると、地上から見上げる空に、もう一つの地球が浮かんでいます。これは惑星の大きさを比較するために描いたのだとキャプションは述べていますが、それにしたってシュールというか、不条理というか、言い知れぬ幻想味をたたえた絵です。

(薄雲をまとった土星)

題して「惑星までの飛行機の旅」(An airship voyage to the planets)。作者はCharles Ketchum という伝未詳の人物で、さらにこの絵自体の出典も不明という(※)、何だか全体に謎めいた感じです。

   ★

とは言え、この絵は初見ではありません。
前回(7月27日)、10年前の過去記事をネタにしましたが、この絵はさらに以前、早20年にもなろうかという昔に、mistletoeさん(子羊舎)のブログで拝見し、強烈な印象を受けた絵です。

ある年代の方はよくご存知でしょうが、20年前は個人ブログが大層流行った時期でした。私もいろいろなブログをのぞき見しては、ときにコメントを残し、やがて相互訪問の関係になり…という交流をしていたのです。ですから、上の絵は尋常の天文アンティーク的郷愁を誘うと同時に、そうした個人的郷愁とも結びついています。

…と、妙に懐古モードに入るのもいかがなものかと思いますが、20年はやっぱり長いです。当時、私の心と体は今よりもだいぶ若かったし、天文アンティークの世界は、広大な未知の大陸のように眼前に横たわっていました。

   ★

当時欲しかった絵を、こうして約20年ぶりに手にして、往時の気分が束の間よみがえったことを素朴に喜んでいる自分がいます。


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(※)画像検索したら、「for an article on astronomy in the American Reference Library, Vol. 10, 1924. (Collection of Adam Levine)」という注釈とともに紹介されているページ【LINK】に行き当たりました。でも、この絵は明らかに科学や天文に関する児童書の挿絵に見えるし、そんな渋い定期刊行物には、どうも似合いません。未確認のままウロンなことを書きますが、上の出典にはさらにオリジナルの原典がある気がします。