流れ星のカード2025年08月16日 07時12分31秒

最近の買い物から。



「流れ星(Les Étoiles Filantes)」と題された、19世紀後半のクロモカード。
夕べの湖畔をそぞろ歩く男女の目に映った流れ星を描いたものです。


男女の驚きの表情。


この流れ星は四方八方飛び交って、輻射点も何もありませんが、それでも現実の流星群――おそらくヨーロッパで大規模な出現が見られた、1866年のしし座流星群――の記憶を反映した絵ではないかと思います。

   ★

(カードの裏面)

このカードは、フランス北部、ベルギーとの国境に近いシャルルヴィルの町(現・シャルルヴィル=メジエール市)で、食品・食材を扱っていた「コレ・オーヴレイ」商店が宣伝用に配ったもの。

地方都市で営業していた、いわゆる「町の食料品店」ですから、さして大きな店とも思えませんが、それでもこういう凝った宣伝カードを作成していたところに、当時のトレーディングカード・ブームの広がりを感じます。

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明治以降、日本でも煙草やお菓子に付属する「おまけカード」として、トレーディングカードを発行するメーカーが出現しましたが、上のようなカードを見ると、これはむしろ日本で独自に発展を遂げた「引き札」に近い性格のものだと思います。

コメント

_ S.U ― 2025年08月16日 16時10分55秒

流星群の学問の普及を考えると、1862年のペルセウス座流星群とスイフト・タットル彗星の軌道計算で理論が確立されたのが初めで、そのあと1866年のしし座流星群で再確認され、一般向けニュースになったはずですから、それ以降は、毎年の夏の決まった時期にペルセウス座流星群が見られることは、徐々に一般知識になっていったはずです。どのくらい普及したかは、新聞や雑誌に載ったかどうかで決まるのでしょう。

 してみると、このカードの男女は、ペルセウス座流星群を計画的に見に行った人たち、という可能性はありませんでしょうか。

_ 玉青 ― 2025年08月16日 19時34分40秒

お、となると、これは素敵な天文カップルですね!そういう目で見ると、ふたりは単純に驚いているというよりも、天体ショーを存分に楽しんでいるようにも見えてきます。その可能性も大いに考慮することにしましょう。(同時代の新聞・雑誌で、流星群情報がどれぐらい報じられていたか、すぐには分からないのですが、一般向け天文書には当然載っています。)

ときに、19世紀のヨーロッパの人にとって、派手な流星雨として印象に残ったものは何かな?と思って、William Peck の『A Handbook and Atlas of Astronomy』(Gall & Inglis, London, 1890)を見てみました。すると、「Occurrence of Meteor Showers」の項に、1866年のしし座流星群と並んで、1885年のふたご座流星群が特筆されているのを発見しました。Wikipediaだと日本語版・英語版ともに、ふたご座流星群の項に、その件に関する言及がないのですが、Peckによれば「the heavens were alive with brilliant celestial fireworks」と、これまた相当なものだったようです。上のクロモカードとの関連でいうと、時代的にはいっそう近いので、その可能性もまた考慮したいと思います。

_ S.U ― 2025年08月17日 06時52分06秒

ご探索、ご説明ありがとうございます。当時の新聞や雑誌に載っていたとしても、結局は、それはライターが天文学に興味を持っている人で、天文書や科学事典や年鑑などから流用した情報ということになるのではないかと思います。

 ふたご座群の大出現というのは聞いたことがありませんでした。まことに興味ある現象ですが、ふたご群の初期の成長過程で母天体ファエトンの軌道変化があって、新しい顕著なダストトレイルが生じて、たまたま地球と遭遇したのかもしれません。ペルセウス群やふたご群の成長過程の理論的考察というか、単なるデモ計算ですが、上のURLでかつて検討しました。母天体軌道自体の変化は計算に入れていないので、こういう年ごとのムラについての議論はほとんどできていません。タイムスケールとしては、表のとおり、76年ということになりました。

_ 玉青 ― 2025年08月17日 17時35分41秒

リマインドありがとうございます。
該記事、草場修氏の記事とともに拝見したのを思い出しました。といっても、重度の「数式盲」なので、肝心の論点は今もって理解困難なままですが、周回遅れのランナーの比喩を拝読し、母天体(及びダスト)がぐるぐる回るうちに、ダストが一様に分布する様をおぼろに想像しました。
でもそうすると、長期的にはどの周期彗星もそうなっていいはずなのに、そうなってないのはなぜか?…といえば、巨大な外惑星等、いろいろ擾乱要因があるからで、ペルセウス座流星群が毎年律義に見られるのは、スウィフト・タットル彗星が絶妙な軌道を描いているが故の、むしろ幸運な例外である…と、八っつぁん的には理解しましたが、どうでしょうご隠居、そんなテキトーな理解でも大丈夫ですかね?

_ S.U ― 2025年08月18日 08時16分07秒

数式中心の読みにくい拙記事をフォローいただきましてありがとうございます。八っつぁんのご理解で、私の意図としては正しいと思います。科学的に実証するには、他にも、こと座群、オリオン群などの安定性を議論する必要がありますが、これも、ダストトレイルの本体が、大惑星の公転ごとに派手に吹き飛ばされるわけではないと説明できると思います。

 安定した周期で間歇性を維持しているしし座群、ジャコビニ群が特殊なのかもしれません。いずれにしても、数えるほどしかない顕著な流星群が、学問の発達とともに、人々の興味を引き続け、夜のお出かけのモードとなり、貴重な大出現を体験をした人が続々増えているのは、天文普及上、たいへん貴重な例と言えると思います。

_ 玉青 ― 2025年08月20日 18時37分04秒

追加のご解説ありがとうございます。私の思考はどちらかというと視覚優位だと思うんですが、数式に関しては全くダメですね。数学に長けた人の中には、数式を見るとそれが視覚的イメージに変換される人もいるらしいですが、そういう能力はからっきしです。

でも、ダストはその一粒ひとつぶが「微小惑星」として太陽の周囲を回っており、その集合体であるダストトレイルはいわば小惑星帯なんだ…というイメージを思い浮かべた上で、地球や各惑星がそこに突入したり、遠方からダストをぐっと引き寄せたり、そこにまた彗星がやってきてダストを追加投入したりするさまを想像すると、自ずとそこで何が起こっているのか、理解できるような気がします(あくまでも気がするだけです)。

そして、彗星から放出されるときの速度と方向によっては、微小惑星になれないダストや、微小惑星になっても、地球とは未来永劫没交渉で、流星となる可能性のないものも多々あるんだろうなあ…と、その運命をぼんやり考えたりします。

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