銀河鉄道の夜(1)2006年01月25日 06時16分44秒

パロル舎版・銀河鉄道の夜(いちばんのお気に入り)
(パロル舎版・銀河鉄道の夜)


一、午后の授業

「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」先生は、黒板に吊した大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指しながら、みんなに問をかけました。



 「このぼんやりと白い銀河を大きないい望遠鏡で見ますと、もうたくさんの小さな星に見えるのです。ジョバンニさんそうでしょう。」
 ジョバンニはまっ赤になってうなずきました。けれどもいつかジョバンニの眼のなかには涙がいっぱいになりました。そうだ僕は知っていたのだ、勿論カムパネルラも知っている、それはいつかカムパネルラのお父さんの博士のうちでカムパネルラといっしょに読んだ雑誌のなかにあったのだ。それどこでなくカムパネルラは、その雑誌を読むと、すぐお父さんの書斎から巨きな本をもってきて、ぎんがというところをひろげ、まっ黒な頁いっぱいに白い点々のある美しい写真を二人でいつまでも見たのでした。



 先生は中にたくさん光る砂のつぶの入った大きな両面の凸レンズを指しました。「天の川の形はちょうどこんななのです。…」


     ★     ★     ★   


 『銀河鉄道の夜』の有名な冒頭部。「白く銀河のけぶる黒い星図」「博士の書斎」「銀河の美しい写真の載った巨きな本」「光る砂粒の入った凸レンズ型の銀河の模型」…こうしたアイテムに私の趣味嗜好は強くひかれるのです。作品全体のテーマから外れて、細部を偏愛するというのは邪道かもしれませんが。

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_ 天文古玩 - 2006年02月11日 07時45分05秒


前日に続き、同書の挿絵から。

オーラリーと天体望遠鏡を使って授業中です。

実にいい雰囲気です。

クールなチェッカーボードの床もいいし、後ろ手を組んでピンと姿勢良く

_ 天文古玩 - 2006年02月11日 07時48分05秒

『銀河鉄道の夜』の冒頭には、星座の掛図が登場しました。

掛図というのもまた懐かしく、小学校時代の甘い情調を帯びた存在で、大いに愛すべきアイテムです。

賢治が執筆にあ