マッチョな天文学者2017年08月26日 09時34分12秒

昔々の天文学者、たとえば紀元2世紀のプトレマイオスの姿というのは、はるか後世の想像図を通じて漠然とイメージされるだけで、実際どんな姿恰好をしていたかは分からないものだ…と思っていました。

(16世紀後半に本の挿絵として描かれたプトレマイオス。ウィキペディアより)

でも、それは私が無知なだけで、実は古代ローマ時代の天文学者の姿を描いた、同時代の絵画があることを偶然知りました。

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それはイギリス南部の島・ワイト島にあって、昔ブリタニアがローマ領だった頃、この島に建てられたヴィラを彩るモザイク画として残されたものです。

このヴィラの遺構は、19世紀に偶然発見されるまで土中にあったので、保存状態も良く、現在では遺跡全体を建物で覆った博物館ができています。
 
(Brading Roman Villa。 公式サイトはhttp://www.bradingromanvilla.org.uk/index.php) 
  

で、その一角に問題の天文学者像があります。


傍らに置かれた天球儀や水盤のような器具も目を引きますし、アーミラリースフィアらしきものを指示棒で指しながら、何やら思案に暮れている様子も興味深いです。

そして、いかにも古代ローマの人らしく、もろ肌脱ぎで、妙に筋肉質なところが、私にとっては目から鱗。これだけでもルネサンスの青白い天文学者とは、ずいぶんイメージが違いますし、ましてや、星の縫取り模様のマントを着て、三角のとんがり帽子をかぶった「お伽の国の天文学者」なんかとは、彼は全然異質の存在です。

まあ、この絵のモデルがプトレマイオスというわけでもありませんし、プトレマイオスが、こんなふうに筋肉モリモリだったかどうかは分かりませんが、その知的活動が身体的強壮に裏打ちされたものであることは確かでしょう。

そして、頑健な人は、得てして自分を中心に世界が回っているように思うものだ…というのは冗談ですが、健康状態によって世界の見え方が変わるのは、たしかに経験的事実です。