フラマリオンとジュヴィシー天文台2011年10月09日 16時59分12秒

秋深し。穏やかな秋晴れが続いています。

昨日今日と、エアコンの掃除をしたり、机のニスを塗ったり、ブラインドを直したり、わりとまっとうな生活を送っています。驚異の部屋も結構ですが、人間にはそういう営みも大切だなと感じる日々です。

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さて、そろそろ記事を再開します。
久しぶりなので何を書こうかと思いましたが、ここはやはり天文古玩の王道から入ることにします。

写真は昨日届いた絵葉書です。
被写体となっているのは、フランスのみならず世界中の天文趣味に影響を及ぼした、カミーユ・フラマリオン(1842-1925)と、彼の個人天文台の内部。


この天文台の外観は、以前記事にしましたが(http://mononoke.asablo.jp/blog/2006/01/27/228532)、当時はまだ画像拡大機能がなかったので、あらためて下に貼っておきます。今回の絵葉書は、このてっぺんにあるドーム内部の光景です。


壁には星図や月面図、それに土星の絵が麗々しく貼ってあります。
この辺は、普通の天文ファンとも共通する感覚で、何となく微笑ましいですが、しかし、隔絶しているのは、何といっても巨大なドームと機材です。彼はこの天文台の台長兼オーナーとして、誰に気兼ねすることもなく、好きなだけこれらを使えたのですから、何ともうらやましい話。

この機材のスペックについては、「The Observatory」 誌、第128号(1887年10月)p.364の彙報欄に紹介されているのを見つけました。(http://books.google.co.jp/books?id=XHEKAAAAIAAJ&printsec=frontcover#v=onepage&q&f=false

例によって適当訳ですが、参考までに訳出しておきます。

「新天文台(New Observatory)

フラマリオン氏は、最近、新天文台の建設を成し遂げた。ここはパリからフォンテンブローへと向かう街道沿いのジュヴィシーに位置しており、見事な構えを見せた小さな城館の屋上に建てられている。フラマリオン氏を天文学の面で崇拝する者は多いが、この城館は、その崇拝者の一人が、周囲の公園ともども1882年、彼に寄贈したものだ。この建物は1730年に女子修道院(a convent)として建てられたもので、壁は十分に厚く、頑丈なので、ドームと赤道儀の基礎としては申し分がない。

赤道儀式望遠鏡は、口径9.5インチ〔約24cm〕、焦点距離は12.5フィート〔約3.8m〕、対物レンズはバルドー(Bardou)製で、ヴィラーソー(Villarceau)式調速機付きのブレゲ(Bréguet)製追尾装置を備えている。また隣接するテラスには、より小型の2台の望遠鏡が置かれている。

羨ましいことに、フラマリオン氏は素晴らしい天文学ライブラリーも所有しておられ、現在、博物館を設立中である。」

この記事が書かれた1887年、フラマリオンは45歳。
45歳で「城主」に収まり天文三昧とは、何度も言うように羨ましい限りです。
「それに引き替え…」とは、思っても口に出しませんけれど、まあ外形的にはともかく、その精神においては、フラマリオンに劣らず、自由を旨としたいものですね。