愛らしい本…『科学のフェアリーランド』 ― 2007年09月30日 21時42分48秒
これまたグリーンの表紙で、科学をテーマにした児童書ですが、昨日の本とは印象がだいぶ違います。こちらはさらに40年ほどさかのぼった、ヴィクトリア時代後期の本です。
■Arabella B. Buckley
THE FAIRY-LAND OF SCIENCE
Edward Stanford, London, 1887 (20th thousand)
p.244, 12.5×18.5cm
金箔押しの表紙がまずもってヴィクトリアンな雰囲気ですね。群舞する妖精や、つる草の流麗な線にはアールヌーヴォーの影響も感じられます。
さて、この本の中身はまた改めて見ていくとして、とりあえずここで外形的なことをメモしておきます。
上の書誌情報の “20th thousand” というのは、私も最初何のことか分からなかったのですが、これは「トータル印刷部数」を意味しています。つまり印刷工程を何回重ねたかではなく、とりあえずその時点までに何部刷られたかを、千部単位で表示したもの。したがって千部ずつ10回刷っても、1度に1万部刷っても、同じく‘10th thousand’なわけで、現代の「第何刷」というのとは表示のシステムが異なります。
バックレイのこの本は1878年初版ですが、この表記によって9年間で2万部刷られたことが分かります。子供向けの本としては上々の部類でしょう。(19世紀最大のベストセラー「アンクルトムの小屋」(1852)ですら、国内の初年度売上げは30万部だそうですので。)
★付記:
この本も、見返しには‘Felloi, Christmas 1888’とペンで書かれていて、世代を超えて滲み出る親心を感じます。
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