星座神話のかけら ― 2017年08月28日 07時06分19秒
一昨日の記事を書いた際、下の幻灯スライドのことを連想しました。
これは「ギリシャ時代のコインに見られる星座の姿」を写したもので、製作者は幻灯メーカーのニュートン社(ロンドン)。
キャプションを見ると、元はイギリスの科学雑誌『ナレッジ Knowledge』(1881~1918)に掲載された図です(同誌は1885年に週刊から月刊になり、巻号表示が変更されたため、以後「New series」と称する由)。
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これが一昨日のモザイク画とどう結びつくかと云えば、ギリシャ・ローマの天文知識を、生の形で(つまり後世のフィルターを通さずに)知る方法はないか?…という問題意識において、共通するものがあるからです。
我々は空を見上げて、ギリシャ由来の星座神話を気軽に語りますが、星座絵でおなじみの彼らの姿は、本当にギリシャ人たちが思い描いた姿と同じものなのか?
まあ、この点は有名な「ファルネーゼのアトラス像」なんかを見れば、少なくともローマ時代には、今の星座絵と同様のイメージが出来上がっていたことは確かで、それをギリシャまで遡らせても、そう大きな間違いではないのでしょう。
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とはいえ、何かもっと生々しい、リアルな資料はないか…?
そこで、コインの出番となるのです。
その表面に浮き出ているのは、星座絵そのものではないにしろ、確かに昔のギリシャの人が思い描いたペガサスであり、ヘラクレスであり、牡牛や牡羊などの姿です。
しかも、その気になれば、それらは現代の貨幣と交換することだってできるのです。
古代ギリシャの遺物を手にするのは、なかなか容易なことではないでしょうが、コインは例外です。絶対量が多いですから、マーケットには今も当時の古銭がたくさん流通しています。
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「天文を中心に、『理科趣味』の雅致を、モノにこだわって嘆賞するサイト」の管理人であるところの私が、大昔の星座神話の欠片に惹かれるのは自然です。実際、購入する寸前までいきました。
でも、ここで「待てよ…」という内なる声が聞こえたのは、我ながら感心。
考えてみると、コインというのは、「なんでも鑑定団」でも、それ専門の鑑定士が登場するぐらい特殊な世界ですから、やみくもに突進するのは危険です。
たとえば下のサイトを見ると、粗悪なものから精巧なものまで、贋物コインの実例が山のように紹介されています。
■Calgary Coin: Types of Fake Ancient Coins
これを見ると、世の中に本物の古銭はないような気すらしてきます。実際には、やっぱり本物だって多いのでしょうが、いずれにしても、ここは少し慎重にいくことにします。(上のページの筆者、Robert Kokotailo氏も、「市場に流通しているコインの多くは本物だ。初心者にとって大事なのは、何よりも信頼のおける確かな業者を選ぶことだ」と述べています。至極常識的なアドバイスですが、これこそ古今変らぬゴールデンルールなのでしょう)。
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