十五の春に ― 2025年08月22日 15時18分09秒
(前回のつづき)
さて、「A to Z」の「Z」、バーナード・ラヴェル(Sir Alfred Charles Bernard Lovell、1913-2012)の手紙を見てみます。
(手紙はジョドレルバンクのラヴェル専用箋にペン書きされています)
前回の記事の最後に書いたことに重ねると、この手紙は「1984年8月3日」付けなので、これを買った2003年には、わずか「19年前の手紙」でした。それが今では「41年前の手紙」ですから、いやはや何ともです。購入した時には、手紙を書いたご当人もまだカクシャクとしていたことを思えば、手紙も私もずいぶん時を旅したなあ…と思います。
まあ、これは手紙の中身とは関係のない、どうでもいい個人的感想にすぎませんけれど、時の流れとは不思議なものよと、再び思います。
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そんなわけで、この手紙は私にとって同時代の手紙といってもいいのですが、この「同時代の手紙」が、なんとまったく読めません。
(便箋の表面)
パッと見、読めそうな気もするんですが、読めません。150年前の手紙は読めるのに、これは一体どうしたことか。しかし、まったく読めなければ手紙を出す意味がありませんから、読める人には読めるのでしょう。現に、これを売ってくれたイギリスの古書店主は、購入当時、部分的に読み解いてくれました(本文6行目からです)。
「When I was a schoolboy soon to sit for my O level examinations, I had no interest in my school work. I was crazy about cricket & the new ‘wireless’. I played endless cricket in the summers & built innumerable wireless sets when I was not playing cricket. One day the physics master announced that he was taking a party of boys to a public lecture in the University of Bristol by Prof. A. M. Tyndall. I joined in for the fun of the visit. – but Tyndall’s lecture on the ‘Electric Spark’ transformed my career in a matter of minutes.」
「Oレベル試験〔※中等教育修了資格試験〕を間近に控えた中学時代、私は学校の勉強に全く興味が持てず、クリケットと新しい『無線』に夢中でした。夏には日がなクリケットをプレーし、クリケットをしていない時は、無線機を無数に組み立てていました。ある日、物理の先生が、男子生徒のグループを引率して、ブリストル大学で行われるA・M・ティンダル教授の公開講座を聴きに行くと発表しました。私はその訪問が面白そうだったので参加することにしました。しかし、ティンダル教授の「電気のスパーク」に関する講演は、わずか数分間で、その後の私の経歴をすっかり変えてしまったのです。」
「Oレベル試験〔※中等教育修了資格試験〕を間近に控えた中学時代、私は学校の勉強に全く興味が持てず、クリケットと新しい『無線』に夢中でした。夏には日がなクリケットをプレーし、クリケットをしていない時は、無線機を無数に組み立てていました。ある日、物理の先生が、男子生徒のグループを引率して、ブリストル大学で行われるA・M・ティンダル教授の公開講座を聴きに行くと発表しました。私はその訪問が面白そうだったので参加することにしました。しかし、ティンダル教授の「電気のスパーク」に関する講演は、わずか数分間で、その後の私の経歴をすっかり変えてしまったのです。」
なるほど、これはMrs G*** に宛てた、学校時代の回想記のようです。
(便箋の裏面)
そしてこの公開講座に触発されて、ラヴェルはティンダル教授(Arthur Mannering Tyndall、1881-1961)に弟子入りすべく一念発起し、その夢を叶えてさらに…ということが、手紙には書かれているのだと思いますが、これまた難読で、彼の肉声を聞き取れないのは残念です(件の古書店主がさらに勤勉だったらよかったのに…)。
(ラヴェルがティンダルに学んだ、ブリストル大学H.H.Wills 物理学研究所)
★
15歳のラヴェルと壮年期のティンダルとの出会いは有名な話らしく、以下の追悼記事でも紹介されています(そして彼が生涯クリケットを愛好したことも)。
■IOP (The Institute of Physics): Sir Bernard Lovell (1913-2012)
ラヴェルは物理学徒として出発し、博士号のテーマは金属薄膜の導電性で、その後、結晶学の分野で研究者としての道を歩み始めました。その彼が宇宙線の研究に方向転換したのは、これまた人との出会いによるところで、そこから電波天文学の第一人者にまでなったわけですから、「縁」や「運命」というのは、確かにあるのかもしれません。ラヴェルほど劇的ではないにしろ、誰しも自分の人生を振り返るとき、それを噛みしめるのではありますまいか。
(Bernard Lovell。スターのサインとかにありがちですが、知らないとやっぱり読めません)





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