対立をまとう球2025年11月28日 11時52分00秒

『スミスの図解天文学』(1849)の冒頭を飾る有名な絵。


この絵で妙に気になるのが、床のチェッカー模様です。


黒白だんだらの市松模様と漆黒の宇宙図の対比は、いかにも謎めいた「不穏な静謐」を漂わせています。


私はチェッカー模様が好きで、だいぶ以前から机の上にこんな球体が載っています。

(背景は「フェデリコ・ダ・モンテフェルトロ公爵の書斎」(1476)部分。Christine Davenne(文)・Christine Fleurent(写真)、『Cabinets of Wonders』、Abrams社、英語版2012より)

以前、antique Salonさんで購入したもので、昔の驚異の部屋の棚にありそうな品だな…と思って手にした記憶があります。


この市松模様は芯まで嵌入しているのではなく、動物の骨角と褐木を薄片にして、球体に貼り付けてあるようです。

   ★

いつも視界にあって見慣れた品を手にしながら、「なぜチェッカー模様は人の心を捉えるのだろうか?」と改めて考えていました。

おそらくは、陰と陽、善と悪、生と死…といった人間の心に深く埋め込まれた2項対立が、自ずと呼び覚まされるからじゃないでしょうか。それは人間の認識の根本形式でもあるので、見ればなんとなくドキッとさせられるわけです。

ここで、大修館の『イメージシンボル事典』を開いてみます。

chequers 市松、チェッカー

1 二元性を表す。
a 無分別な衝動を抑えるcheck 努力を表す。(八角形の市松は)理性と知性が主導する。
b 菱形の紋章は、2つの要素が(平衡関係ではなく)動的な相互関係にあることを表す。
c 道化の服は市松である。 ⇒ harlequin

2 チェッカー盤の場合。
a 愛と戦いの場を表す。 ⇒ chess
b 人生の浮沈、あらゆる対立を表す。人生は昼と夜が市松になったチェッカー盤のようなもの。そこでは運命の神が人間を駒にして遊んでいる。(ウマル・ハイヤーム『ルバイヤート』)。

…なるほど。シンボルというものの常として、チェッカー模様の意味も多義的ですが、やはりその基本性格は、2つの要素の対立と相克という点にあるようです。

   ★

上の事典の解説で「道化の服」というのもちょっと気になります。
ただ者ならぬ怪しさと妖しさが、だんだらの向こうに透けて見えるようです。

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