箱の中の宇宙…ジョセフ・コーネルと天文学2008年12月31日 14時10分04秒


大みそかにちなんで何か記事を…と思いましたが、特にありませんので、また新刊書の紹介です。

■Kirsten Hoving(著)
 Joseph Cornell and Astronomy: A Case for the Stars
 『ジョセフ・コーネルと天文学-星たちの箱』
 Princeton University Press, 2008

コーネルと天文学の組み合わせは、このブログをお読みの一部の方たちには、強力な魅力を放つことでしょう。

ただし発売はこれからで、アマゾンでは現在予約を受付け中です。
http://tinyurl.com/8uspt8

版元の紹介ページはこちら。http://press.princeton.edu/titles/8743.html
以下、本の紹介文を適当訳(適当訳なので引用注意)。

 □  ■  □

 1人のアーティストが天文学に深く魅了されていた様子を、本書『ジョセフ・コーネルと天文学』は詳細に検討している。ジョセフ・コーネル(1903-72)は、これまでしばしば、世捨て人であり、ユートピアパークウェイの自宅にひきこもって、おとぎ話や、愛らしいコラージュや箱作品といったオブジェ作りに没頭していたように思われてきた。コーネルが天文学の歴史と、同時代になされた最先端の発見に対して、真剣な興味を抱いていたことは、一般にあまり知られていない。彼は熱心な読書家であり、科学と天文学の書籍と記事からなる一大ライブラリーを築き上げ、こうしたテーマに対する彼の見解は、その芸術に直接的な影響を及ぼした。

 本書は、天文学がコーネルを捉えた理由を探り、天文現象と結びついた彼の無数の作品群 ― ファウンド・フッテージ・フィルム[一種の映像コラージュ作品]から、天体を立体的に表現した箱作品、謎めいたコラージュ、そしてコスミック・エフェメラに至るまで ― を考察している。著者、カーステン・ホヴィングは、コーネルが蒐集した膨大な天文学関連の素材(18世紀から最近までの一連の本、コーネルが自ら切り抜いて整理した新聞・雑誌の記事、自宅の裏庭で星を眺めながら付けた観測記録)に注目し、クリスチャン・サイエンティストであり、またシュールレアリスムのアーティストであるという、自らのアイデンティティを通じて、コーネルがいかに天文学の多種多様な分野を探求したかを検討している。

 本書は、コーネル作品を広く深く解明し、この魅力的なアメリカ人アーティストについて、説得力に富む、オリジナルな解釈を呈示している。

 □  ■  □

コーネルという人を私はあまりよく知らず、手元には『コーネルの箱』(文芸春秋社)という本が1冊あるきりなのですが、しかし上の文を読んで、私は急に彼が好きになりました。彼もまた天文学史の愛好家であり、アマチュア天文家だったんですね。

ただ私の場合、「コーネル作品の背後にあった天文趣味」よりも、むしろ「シュールレアリストとして生きた1人の天文趣味人」に興味があるので、ちょっとベクトルの向きが逆というか、天文趣味史の1ページにコーネルを位置付けるという読み方になりそうです。

  ★

さて、2008年もあと半日で終わります。今年一年、「天文古玩」にお立ち寄りいただき、どうもありがとうございました。明年もどうぞよろしくお願いいたします。

皆さま、良いお年を!

コメント

_ かすてん ― 2008年12月31日 15時42分29秒

玉青さん、こんにちは。
 押し詰まりましたね。今年はブログだけでなくお世話になりました。おかげさまであの後も人から人へのツテを辿って鈴木壽壽子さん探しの旅は続いております。もちろん、すでにお亡くなりの事実は致し方ありませんが、まだまだ業績の発掘は可能かと感じています。
 来年もよろしく。

_ shigeyuki ― 2008年12月31日 17時29分54秒

 2008年も色々とお世話になりました。どうもありがとうございます。
 惜しむらくは、今年はネット上での付き合いのみに終わってしまったことで、来る年はぜひまた現実世界でお会いしたいですね。
 それでは、今年ももう数時間となりましたが、よいお年をお迎えください。

_ 玉青 ― 2008年12月31日 23時36分08秒

>かすてん様

こちらこそお世話様でした。鈴木壽壽子さんの件、大いに期待しています。(私も今、眼視にこだわった企画を温めているところです。目鼻が付いたらまたご報告したいと思います。)

>shigeyuki様

ああ、本当ですねえ。ネットで一献という訳にはいきませんから…。こちらこそ是非是非。

 +  +  +

いよいよ今年も残り30分を切りました。もう少しすると、除夜の鐘が聞こえてくるでしょう。去年今年貫く棒の如きもの…とは言え、未知の新しい年に新しい夢を託しつつ。。。

_ れいこ ― 2009年01月01日 08時04分52秒

これは素晴らしいアプローチの本ですね…! コーネルの作品では、天体や星の息吹が伝わってくるものが特に好きなのです。

昨年はお話もさせていただき、楽しかったです。また、天文古玩の遊歩するようなアンテナに期待しています!

_ 玉青 ― 2009年01月01日 15時35分03秒

>れいこ様

あけましておめでとうございます。常にふらふらと定まらない内容ですが、どうぞお付き合いください。

コーネルはいったいどんな天文ライフを送っていたのか?興味津々です。そのライフスタイルを知ると、作品の見え方もちょっと変わってくるかもしれませんね。

_ 待鳥 ― 2009年01月03日 10時32分38秒

なんと素敵な!カラー図版が60頁というのもなかなか良いので買うやも知れません。しかし、コーネル本は何気にちょくちょくと出版されますね。そして「コスミック・エファメラ」という響きにやられました。

ところで、デロール。3月あたりに訪れる予定ですので、ぜひ『好奇心の部屋デロール (たくさんのふしぎ傑作集) 』を忘れずに持って行こうと思います。

最後になりましたが、玉青さん、あけましておめでとうございます。今年も、玉青さんのスバラシキ理系コレクションの数々を溜息と共に覗かせてくださいませ。

_ 玉青 ― 2009年01月03日 16時06分40秒

おや、Machidoriさん、お名前が和の装いになってますね。お正月バージョンでしょうか。「スバラ式」を応用した理系コレクションは、私のライフワークですので、今年も大いに精進したいと思います。

「コスミック・エフェメラ」とは、どんなものか見当もつかず、そのままカナ書きしてしまいましたが、一体何なんでしょうね。この本を読めば判るんでしょうか…?

ときに。デロールに行かれるんですね!
では、ご面倒でも、ぜひ本を2冊ご持参いただいてですね、「日本にデロールにいたく執心している男がいる。その男の頭の中を覗いたことはないが、どうもデロール状になっているらしい。その男の妄念を浄化するために、ここ〔見返し〕に何かメッセージを書いてもらえまいか…」と、スタッフに頼んでみてはいただけないでしょうか。

_ 待鳥 ― 2009年01月05日 00時13分52秒

玉青さん、きっとデロールの方々も喜ばれるのではないかと思います!

ところで、具体的に私はどうすれば良いのでしょうか?

玉青さん所有の『好奇心の部屋デロール』を私の家に送ってもらう
→それを携えて渡仏
→デロール訪問
→メッセージ
→帰国
→玉青さんの家に送る

という流れになるのでしょうか???

というか、私、本気にとってしまっているのですが、もし天文古玩的冗談だったら軽~く流してくださいね。。。


(待鳥・・・こちらでは鳥になるのが相応しいのではないかと思って漢字にしてみました。)

_ 玉青 ― 2009年01月05日 20時22分58秒

ありがとうございます!これは嬉しい。

私はこれまで冗談を言ったことがない、というのが自慢の男でして、今回ももちろん本気です。待鳥さんの書かれた流れで完璧です。

後ほど、改めてメールします。何分よろしくお願いします。

_ mistletoe ― 2009年01月06日 20時04分11秒

遅くなりましたがあけましておめでとうございます。
コーネルは離れようと思っても離れられず、
昨年母から誕生日にNYの図録2点と本を1冊贈られ
ました。再加熱したところにこの記事が;;;
ペーパーバック出るまで待とうか…いや買うべきかと
悩んでしまいます。

_ 玉青 ― 2009年01月07日 06時32分42秒

早々とご祝詞を頂戴しありがとうございました。本年も何卒よろしくお願いいたします。

さて、毎度のことながら何とも心憎いお母上ですねえ。
この本は内容もいいが、値段もいい…ので、確かにちょっと考えます。私も実はアマゾンのカートに放り込んだまま、まだ発注していません。もうちょっとすると、きっと廉価な古書が出回るに違いないと思いつつ、でも送料を考えるとあまりリーズナブルでもないか…と、思い悩んでいます。

_ allez-circus ― 2010年10月07日 12時52分10秒

ジョセフ・コーネルを尊敬していて、検索で「天文古玩」blogに出会わせていただきました。理科系はとても苦手だったのですが、宇宙・天文などとても魅力的な世界へ誘っていただけることに感謝いたします。

_ 玉青 ― 2010年10月07日 19時39分19秒

Allez-circusさま

はじめまして。
お立ち寄りいただきありがとうございます。
こんな風に以前の記事にコメントいただけると本当に嬉しいです。
そうそう、コーネルの本。その後、本棚に立てたまま忘れていました;
しかし、忘れっぱなしで済む本ではないので、これは又とない良いきっかけです。
さっそく今、本棚から出して来て、机の上に置いたところです。
これから毎晩、少しずつ読むことにします。

  +

Allez-circusさんのサイトも拝見いたしました。
まさにサーカスそのままの不思議な世界ですね。
天文モチーフとアートをつなぐコーネル、そしてそのコーネルを仲立ちにして、Allez-circusさんと、こうしてご縁ができたことの不思議さを噛みしめつつ、今後も何卒よろしくお願い申し上げます。

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