昼下がりの理科準備室2010年11月12日 06時14分58秒

ちょっと気分を変えて、久しぶりに理科室絵葉書です。

世に理科室絵葉書は数々あれど、私を惹きつけるのは、何かドラマを感じさせる品です。たとえば上の1枚。

京都市にあった日彰尋常小学校(現・高倉小学校)の理科準備室を写した、戦前の絵葉書です。これは、「理科室」(=授業をする部屋)ではなくて、「理科準備室」を写した点でも、比較的珍しい作例ですが、それにしても、この不思議な空気はいったい…?

学校の絵葉書というと、先生は一応熱心に教育に励んでいるポーズをとるのが普通だと思いますが、この先生は「これがオレ流」と言わんばかりに、どかっと足を組んで、まったくの自然体です。そして生徒を完全に無視して、うつむき加減で何やら物思いにふけっています。
3人の少年たちも、先生のことなどお構いなしに、めいめい勝手に実験に没頭しています。

構図も何だか妙ですね。戸棚を全開にして、きっと棚に並ぶ備品を見せたかったのでしょうが、そのわりに見せる工夫に乏しく、訳の分からない絵柄になっています。そして、視線の先には人体模型が逆光に浮びあがって、不穏なムードをいっそう高めています。

何だか凝っているようでもあり、ずさんなようでもあり、凝り過ぎて失敗したようでもあり、でも妙に格好良くも見える不思議な作品。