天文古玩・再考(7)…オーラリーと天球儀(1)2011年04月30日 20時29分41秒

例によって、サンダーソンさんのコラムを再掲。
(元記事はこちら。http://mononoke.asablo.jp/blog/2006/01/29/230488

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「何世紀にもわたって、学校ではオーラリーと天球儀が、宇宙について生徒達に教えるのに使われてきた。オーラリーとは、太陽と地球と月―他の惑星を含むこともある―の動く模型であり、操作者がハンドルを回すことによって、地球が回転しながら太陽の周りを回る様子を示すことができる。この装置の名は、第4代オーラリー伯チャールズ・ボイルちなむもので、彼はジョン・ローリーが1712年に彼のために作った太陽系の機械モデルを所有していた。

 オーラリーを使うことで、地球と月の動きを示したり、月の満ち欠けや日食、それに季節の変化を説明したりすることができる。オーラリーは今でもTrippensee社(ニューヨーク州バッファロー)で製作されており、これは全ての理科室が備えてしかるべきものである。

 天球儀は19世紀において一般的な教具であったが、その現代版はSky Publishing社から購入することができる。天球儀では、地球が天球儀の内部にあり、見る人は宇宙の外に立って、星の配列を背後から見ているかのように、ふつう星座が裏返しに描かれている。18~19世紀の天球儀やオーラリーは非常に稀であり、それこそ天文学的値段で売られているが、20世紀前半のものであれば、いくらかリーズナブルな価格である。」 

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オーラリーと天球儀。
望遠鏡と並んで、これまたクラシックな天文趣味には欠かせない名脇役ですが、しかし望遠鏡と同様、このブログで取り上げるには、いずれも微妙なテーマです。何と言っても、アンティークの品となれば、サンダーソンさん曰く「天文学的値段」だというのですから、なかなか気軽に手元に置くことは難しい。

むう…と悩みながらも、ここは氏のアドバイスに従って、まずはトリッペンシー社のオーラリー(日本風にいえば三球儀)から入門することにします。


これは20世紀初頭の発売以来、モデルチェンジを繰り返しながら、アメリカ中で大売れした商品らしく、オークションでも常連なので、見つけるのは簡単です。


トリッペンシー社は、もともとミシガンが本拠地でしたが、1999年に理科教材販売を手がける Science First 社(ニューヨーク)に身売りして、今は同社がトリッペンシー・ブランドで製造を続けています。


現行モデルは電気で太陽が光りますが、これはそれ以前のもので、本体はまだベークライトを使っています。時代的には1950~60年代と思います。


↑台座部分のアップ。


アームを回して地球を公転させると、チェーンとギアによって、地球がクルクル自転し、同時に月も公転を始めます。見ていていちばん面白い部分ですが、現行モデルはメンテナンス・フリーを意図しているのか、この機械部分がすべてプラスチックのケースに収められ、ブラックボックス化しています。でも、これは歯車の動きが見えないと魅力半減ではないでしょうか。


↑下から見上げた機械部分。

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サンダーソンさんは、「これは全ての理科室が備えてしかるべきもの」と書いていますが、同時に「全ての‘理科室風書斎’も備えてしかるべきもの」だと思います。

(この項つづく)