ジョバンニが見た世界「時計屋編」(5)…星座早見はどこにある2011年11月28日 06時05分21秒

日本ハーシェル協会の年会は無事終了しました。
会員の方には内容を別途ご報告する予定です(以上、業務連絡)。

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さて、前回のつづき。

「〔…〕一秒ごとに石でこさえたふくろうの赤い眼が、くるっくるっとうごいたり、いろいろな宝石が海のような色をした厚い硝子の盤に載って 星のようにゆっくり循(めぐ)ったり、また向う側から、銅の人馬がゆっくりこっちへまわって来たりするのでした。そのまん中に円い黒い星座早見が 青いアスパラガスの葉で飾ってありました。

 〔…〕またそのうしろには 三本の脚のついた小さな望遠鏡が黄いろに光って立っていましたし いちばんうしろの壁には空じゅうの星座をふしぎな獣や蛇や魚や瓶の形に書いた大きな図がかかっていました。」

「赤い眼のふくろう」に続き、この一節に登場する様々なモノたちについて、これから順に検討していきますが、その前にモノの大まかな配置を考えてみます。

前回も指摘したのですが、「円い黒い星座早見」がどんなふうにショーウィンドウに置かれているのか、宝石を載せたガラス盤や、銅の人馬像とはいったいどんな位置関係なのか、これを読んでただちに分かる人は少なかろうと思います。
それは挿絵画家にとっても同様で、これまでいろいろな案が出されてきました。

たとえば、自他ともに許す「賢治読み」のますむらひろし氏。
氏のマンガ版「銀河鉄道の夜」ではこう描かれています。

(出典:ますむらひろし(著)『銀河鉄道の夜』、朝日ソノラマ、第6版1989(初版1985))

(同)

「ガラス盤のまん中」に星座早見が置かれているという解釈です。
田原田津子氏も同じ解釈をとります。

(出典:田原田鶴子(絵)『銀河鉄道の夜』、偕成社、2000)

さらに松田一輝氏は、星座早見そのものをガラス盤と一体化させて描いています。

(出典:松田一輝(作画)『文芸まんがシリーズ15/銀河鉄道の夜』(小田切進・監修)、ぎょうせい、第3版1994(初版1992))

(同)

そういう解釈もありうるとは思いますが、しかし、私はこの場面を

 「ふくろうの赤い眼が、くるっくるっとうごいたり
 いろいろな宝石が〔…〕厚い硝子の盤に載って〔…〕ゆっくり循(めぐ)ったり
 また向う側から、銅の人馬がゆっくりこっちへまわって来たり


する、「そのまん中に」星座早見が置かれていると想像します。
つまり、フクロウ時計やら、ガラス盤の回転陳列装置やらが、いろいろ並んでいる合間に星座早見が置かれているという解釈です。(宝石と人馬像はともにガラス盤に乗っていると考えるので、上の3つの「たり」は完全に並列ではないことになります。)

私と同じ解釈に立つのが、佐藤国男氏と小林敏也氏です。

(出典:佐藤国男(木版画)『改訂復刻版 銀河鉄道の夜』(斉藤征義・編)、北海道新聞社、1996)

(出典:小林敏也(画)『画本 宮澤賢治/銀河鉄道の夜』、パロル社、1984)

(同・一部拡大)

小林氏の作画は、(人馬像の位置を除けば)私がイメージする情景に一番近いです。星座早見を「アスパラガスの葉で飾」るという表現も、上図のように描いてこそ初めて自然なものになるのではないでしょうか。ますむら氏や田原氏のように、周囲に葉っぱを敷き並べるのは、やや苦しい解釈と思います。

(この項つづく)