入道雲と水の塔2017年07月23日 16時54分44秒

入道雲は力強いと同時に、言い知れぬ寂しさを感じさせます。
それは夏そのものの寂しさにも通じます。

夏の盛りを寂しく感じるのは、盛りの果ての終末の気配をそこに感じ、さらに自分や他者の人生をも重ねて見るからでしょう。

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入道雲の湧く夏空をバックに立つ、不思議な塔。
無人の広場にたたずむ躯体の凹凸を、くっきりとした影が強調し、明るい中にも「孤愁」という言葉が似合う光景です。

この印象的な建物は、ドイツのハンブルグ・プラネタリウム
オープンは1930年で、上の絵葉書も当時のものでしょう。

なぜこのような不思議な形のプラネタリウムが出来たかといえば、元々ここはプラネタリウムではなくて、1912~1915年にかけて建設された、ハンブルグ市の給水塔を改装して作られたからです。

(この建物の出自を示す「Wasserturm」の語。英語にすれば「Water Tower」)

とはいえ、このハンブルグ・プラネタリウム。
絵葉書を眺める私の個人的な思い入れとは別に、その後もリノベーションを繰り返し、今も大いに頑張っているようです。

ハンブルグ・プラネタリウム公式サイト(独)

(サイトのトップページには、「あなたの目標天体の座標は?」の文字が浮かび、宇宙空間を高速で飛翔する動画が流れます。)

現在の投影機は、ツァイスの最新鋭機、「Univerarium Model IX」。
ニューヨークのヘイデンや、ロサンゼルスのグリフィス、国内だと名古屋市科学館と同型機になります。

(玄関ホール天井を飾る星座のフレスコ画。独語版Wikipedia「Planetarium Hamburg」の項より。https://de.wikipedia.org/wiki/Planetarium_Hamburg

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水の惑星に立つ「水の塔」。
水気(すいき)は母なる恒星の熱によって高空へと導かれて巨大な白雲と化し、水気を慕って塔に集った人々の意識と思念は、さらに白雲をも超えて、無限遠の世界へと旅立つのです。