透かし見る空…透過式星図(5)2020年09月27日 07時29分35秒

さて、本題に戻って、最後に登場するのは、Otto MöllingerHimmelsatlas(1851年)です。

メリンガーのこの星図は、資料が至極乏しくて、目ぼしい情報は、2018年にドイツで行われたオークションに登場した…という記事ぐらいです。



その記載を読むと、「石版図版16枚セット。21.5×18.5cm。金文字の表題を記した布製ポートフォリオ入り。ゾロトゥルン/ベルン〔スイス〕刊。1850年ごろ。各図版には美しい彩色星座が描かれ、光にかざすと星に穿たれた小穴が輝く」…といった大意が書かれています。

同じオークションの記録はネット上に複数あって、別の記事によると、気になる落札価格は271ユーロ(約301ドル)。メリンガーがいくら無名の人とはいえ、この珍品にしてこの価格は破格。

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今回、一連の記事を書きながら、メリンガー星図が手元にあることに気がつきました。以前(2012年)入手した正体不明の星図カードがそれです。8年を経て、やっとその正体が分かったわけで、こうしてブログを細々と続けていて良かったです。

と言っても、手元にあるのはわずかに3枚。

(第4図 ペルセウス座とアンドロメダ座)

(同拡大)

(第5図 おひつじ座とうお座)

(第8図 はくちょう座周辺)

(同拡大)

独・仏併記の表記が、いかにもスイスという感じです。
肝心の光に透かしたイメージと、裏面の様子も載せておきます。




元絵は、例によってフォルタン版のフラムスティード星図です。

(フォルタン版を復刻した恒星社版『フラムスチード天球図譜』より)

端的に言って彩色も雑だし、お手本がある割に絵も下手ですが、だからこそ素朴な愛らしさがある…と言えなくもないです。どことなく、スイス民芸調の味わいと言いますか。

四半世紀前のケーニッヒ星図と同様、このメリンガー星図も、学究的な星図とは意味合いを異にした、一種の「おもちゃ絵」として享受されたんではないかなあ…と再度つぶやいて、一連の透過式星図の話題はいったん終わりです。(しかし、昨日の記事にいただいた「パリの暇人」さんのコメントをご覧いただければお分かりのように、透過式星図の世界はまだまだ広く、これで話が尽きるものではありません。)

(この項一応おわり)