今年の抱負を振り返って…ジョバンニの世界へ2007年10月20日 19時55分47秒

(小林敏也・画、パロル舎版『銀河鉄道の夜』より)

次いで今年3番目の抱負は、「銀河鉄道の夜の作品世界の具象化」というものでした。

小説「銀河鉄道の夜」において、私がもっぱら心惹かれるのは、「北十字とプリオシン海岸」のような天空の情景ではなくて、冒頭の「午後の授業」の教室風景であったり、「ケンタウル祭の夜」における時計屋のショーウィンドウであったり、つまりは具体的な天文アイテムと結びついた、より現実的な光景なのです。

  先生が凛とした口調で語る銀河構造論。そこに登場する星図や
  ガラスの銀河模型といった天文教具。授業を受けながらジョバ
  ンニが思い浮かべた銀河のモノクロ写真や、友人の父親である
  博士の書斎の光景…。

  時計屋の店先を飾る、古風な星座絵、金色の望遠鏡、緑の葉を
  あしらった星座早見盤、数々の宝石とともにゆったりと廻る人
  馬像、店頭に満ちあふれる華やかな祝祭のムード…。

この二つのシーンには、ともに心憎い天文アイテムが数多く登場しますが、いっぽうはアカデミックで、静謐なモノクロの世界であり、他方は古典的な神話に彩られた、官能的でカラフルな世界というように、鮮やかな対照を見せています。そして、いずれもが賢治の心象風景であり、銀河鉄道の世界を構成する両輪です。

古風な天文趣味に心を寄せる人であれば、両者相まって陶然とするようなイメージを、ただちに脳裏に浮かべることでしょう。もちろん、人によってイメージの細部は異なるでしょうし、実際、絵本化された「銀河鉄道の夜」を見ると、それぞれの画き手がいろいろな描き方をしていることがわかります。

ただ、現実にこの世に存在するもので、その場面を再現しようと思えば、自ずと選択肢は限られてきますし、そうなるとあとは組み合わせの問題で、そう滅多やたらと自由な場面構成はできません。

で、年頭の抱負は果たしてどうなったか。
結論を言えば、それは十分な成果を収めつつあると申し上げましょう。アイテムのいくつかは既に手元にあり、いくつかは我が家に向けて旅の途上であり、いくつかは獲得の目算が立ちました。遠からず、まとめてご紹介することにします。

(昨日につづき、今日も口上だけで、「実物はまた今度」となってしまい、ちょっと何ですが…。)