天文学者は白髪頭か?…19世紀と20世紀(その5)2007年10月08日 17時32分09秒

もう1枚カラー図版も掲げておきます。写真は、ホークス自身のスケッチによる火星の図。

運河模様が控えめに描かれていますが、ホークスのこの本では、運河の存在については言及ゼロ(「かつては暗いところが海、明るいところが陸と考える人もいたが、その当否は不明である」と書かれています)。また火星人の存在についても「不明であり、判明する見込みもない。火星はあまりにも遠いので、どんな望遠鏡を使っても、違った色合いの斑模様以上のものは見えない」と、悲観的に書いています。

それはともかく、この図の新しさは、写真でもお分かりのように「紙がツルツルしている」という点です。19世紀のカラー・リトグラフとは異質のテクスチャー。我々が通常イメージする「版画」と「印刷」の違いといいますか(それは思った以上に微妙なのですが)、敢えて言えばちょっと安っぽくなった感じがします。まあ、そこが20世紀なのでしょう。

この辺の事情は、ぜひ印刷史に詳しい方にご教示いただいきたいと思います。

ともあれ、世紀をまたぐ、わずか20年の間に天文趣味を盛る「器」にもドラスティックな変化があったことは確かです。