時間どろぼう2024年03月03日 14時17分48秒

2月というのは、ちょうどうるう年みたいなもんで、4年にいっぺんしか回ってこないんじゃないですかね。今年も気づいたら、1月が急に3月になっていた…というのが正直な実感です。あまりにも忙しかったせいでしょう。たしかに言われてみれば、2月があったような気もするんですが、記憶が全体にぼんやりしています。

そんなわけで、昨日は一日何もせずボーっとしていましたが、この辺で気を取り直して記事を続けます

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最近は円安のせいで、買い物といっても絵葉書ぐらいしか買えませんが、絵葉書からも学ぶことは多いので、決して馬鹿にはできません。


これも天文古玩的な魅力に富んだ一枚。


「フランツ・ヨーゼフ・シューベルト」という、やけに立派な名前の社長さんが経営していた、ミュンヘン絵葉書社(Postkartehaus Munchen)の製品です。


絵柄が何だか謎めいていますが、説明文には、「戦争年の1916年4月30日から5月1日にかけての夜を記念して」とあります。これは第1次世界大戦の真っ最中、1916年に、ドイツで初めて夏時間(サマータイム)が実施された記念の絵葉書なのでした。


このときの夏時間は、4月30日の午後11時を、5月1日の午前0時に切り替えることで実施されました。

 「ほら、静かな晩にミュンヘンの女の子が聖母教会の塔を用心深く登っていきますよ。そしてにっこり笑って、時計の針を11時から12時にパッと動かしたかと思うと、時の鐘が12回、ドイツ中に高らかに鳴り響くのです!」


最初この絵柄を見たとき、私はエンデの『モモ』の表紙を連想しました。
モモは「灰色の男たち」(時間どろぼう)に立ち向かう存在でしたが、どうも絵葉書の女の子は、時間どろぼうの側のような感じもします。でも、ドイツはそうやって時間を人工的に操作して、人々を労働へと駆り立てたものの、あっさり戦争に負けてしまい、1918年に夏時間も終わりを告げました。(紆余曲折を経て、今はまた復活しています。)


とはいえ、それは絵葉書の罪ではなく、かわいい絵柄は依然として魅力的だし、歴史の証人としても興味深い一枚です。

ちなみに葉書に描かれた塔は空想の存在ではなく、実在するミュンヘンの聖母教会(フラウエン教会)の塔です。

(ミュンヘン市旗(左)とバイエルンの州旗(右)にはさまれてそびえる聖母教会。ウィキペディア「ミュンヘン」の項より)

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時間どろぼうは今も盛んに暗躍しており、失われた2月も彼らの仕業と私はにらんでいます。

コメント

_ S.U ― 2024年03月04日 10時42分17秒

それでも、今年は2月が1日多かったわけですから、月給制の職場の人は、月末の木曜日に1日分の給料を「奪われた」と感じた人もあったかもしれませんね。

 開始時に時間が1時間奪われる「夏時間」は、日本では米占領下で4年間だけ実施されましたが、その記憶のある方も少なくなり、海外に行かない限り馴染みのない制度になったと思います。といっても、世界的には、国際化が進み、現在はヨーロッパ中央時を採用している国々の範囲では例外なく夏時間を採用しているようです。1つの国だけ夏時間を採用しないということは、事実上不可能なのでしょう。

 ヨーロッパの夏時間の始まる日は、3月下旬の日曜日で、この日に1時間が奪われるのですが、私は、十数年以上前にいちど、この日にスイスにいて帰国のための飛行機に乗った経験があります。ちゃんと警戒して、前の夜に自分の時計を進め、ホテルで空港行きのタクシーを予約する際にも明日から夏時間だよと確認しました。ホテルの人は「そんなことはわかっているわい」という感じで対応してくれました。翌朝、タクシーは正しく来ましたが、ホテルの時計は1時間遅れの状態のままでした。
 ところが、ジュネーブ空港に着くと、ほぼすべてのフライトが1時間遅れで、余分の時間ができました。パリで乗り換えだったのですが、乗り継ぎ時間が1時間少々しかなく、普通なら乗り遅れる心配をすることになるのですが、すべての便が1時間遅れですから心配は無用で、パリ発も1時間遅れで問題ありませんでした。日本に着くのも1時間遅れになりましたが、日本国内の乗り継ぎはなかったので、事なきを得ました。
 その時は、なるほどうまくできているなと思ったのですが、問題が先送りになっているだけで、この1時間遅れはどこかで解消されるのですから、その後の何日かで乗り継ぎに不都合が起こった人がいるのではないかと思います。実際はどう解消されるのか知りません。私の経験は十数年前の話ですから、今は状況が変わっているかもしれません。
 EU諸国の夏時間は近く廃止するという決議が出たというニュースがありましたが、今年も実施されるみたいです。

_ 玉青 ― 2024年03月05日 17時49分47秒

夏時間というのは、便利なような、不便なような、なんだか不思議な制度ですね。
ひとつの国でも、繰り返し採用されたり、廃止されたりを繰り返しているのは、やってみる前はなんだか便利そうに見えるけれど、実際やってみると不便の方が目立ってきて、結局やめてしまう。でもやめると、やっぱり便利そうに見えてきて…ということを繰り返しているからでしょう。便利と不便が釣り合って、ブラブラやじろべえのように揺れている、絶妙な加減なのかもしれませんね。

_ S.U ― 2024年03月06日 07時29分02秒

(笑)夏時間が揺れているのは、禁煙や禁酒を何度も繰り返している人のようなものかもしれませんね。そういう人には、苦しんでいるように見える人と楽しんでいるように見える人の両方があるようです。

 現代のEUの決議は新種の問題もあって、中央ヨーロッパ標準時およびEU加盟諸国が広がったこともあり、夏時間を廃止するにしても、現行の冬時間(UT+1)に統一するか夏時間(UT+2)に統一するかが決まっていないことによるようです。
 以下は、私の計算や推定も一部入っています。現在のUT+1でも、フランス西部やスペインでは、12月は朝方明るくなるのが8時頃で、これをUT+2にすると日の出が9時頃になってしまうようです。実際、通学や学校運営にも支障が生じることが言われていますので、スペインはとても冬のUT+2は飲めないと推測しますが、これをUT+1 で通年にしますと、ポーランドでは、6月は3時に日が昇ることになり、出勤時間はすでに日が中天に高く、暑さがつのることになり、これまた耐えがたいと思います。結局、その国の生活の便のためには、例えばスペインとポーランドは、別の標準時で夏冬通すのがよく、遠い国のことなど考えていられないと思うのですが、結果が分裂するのでは、何のための「EUの合意」かという自己矛盾になりそうに思います。

 別件ですが、協会掲示板に新しい投稿をしました。別に、急ぎの件でもなく、何かの提案でもありませんが、ご参考になりましたらよろしくお願いいたします。

_ 玉青 ― 2024年03月07日 06時01分04秒

地方時に夏時間の問題が重なると、いっそうややこしいですね。
地方時も夏時間もあるアメリカ、地方時はあるけれど夏時間はないロシア、両方ない中国。大国のそれぞれの悩みを横目に、欧州の人もいろいろ思い悩むのでしょう。日本が小国でよかったです(笑)。

ときに掲示板へのご投稿、どうもありがとうございました。
早速そちらにもお返事させていただきましたが、今年もまた嬉しい悩みは尽きそうにありません。

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