千年の古都で、博物ヴンダー散歩…京大総合博物館2011年10月26日 21時34分21秒

島津創業記念館を後にし、祇園北の骨董街で用を足してから、京阪鴨東線に乗り込み、出町柳の駅から、テクテクと京大まで歩きます。

京都大学総合博物館 公式サイト
 http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/


「自然史」、「文化史」、「技術史」の3部門からなる総合博物館が、組織として発足したのは平成9年。さらに現在の建物が完成し、正式にオープンしたのは平成13年とのことです。つまり今年でめでたく開館10周年。なお、今回私がのぞいたのは、自然史と技術史の展示だけです。

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自然史部門は、以下のようなテーマにそった展示となっています。

  地震(地球の鼓動)
  化石(化石から見た進化)
  霊長類(京大が生み出した霊長類学)
  動物植物(栽培植物の起源)
  動物植物(温帯林の生物多様性と共生系)
  ランビルの森(熱帯雨林の生態多様性と共生系)
  昆虫

統一テーマはあるような、ないような…。
しかし、生態学はやはり大きな柱の1つではあるのでしょう。

今西錦司氏のフィールドノート(1958)。こういうのを、京大の至宝と呼ぶべきか。

京都の哺乳類の展示コーナー。館内はかなり照度を落としています。

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館内を回って強く感じたのは、展示に「遊び」がなくて、全体が「お勉強モード」になっていることです。つまり、標本類の傍らにビッシリと細かい文字の解説パネルがあって、それをいちいち読まないと、展示内容が理解できない仕組み。
正直、気力・体力が充実していないと、見て回るのはしんどいと思います。

個々のテーマには、もちろん深い学問的意義があると思いますが、展示そのものを一つの「アート」と考えていないことは明らかで、この点で東大の総合研究博物館とは著しく対照的です。

けっこう珍奇な物もあるんですが、展示の仕方が地味(無雑作)なので、あまりおもしろそうに見えないのは一寸残念。

シロアリの標本。

何だか分からない写真ですが、アリの標本。

ナナフシ類の標本。

他にも南方に生息するゴキブリ類やら、糞虫の仲間やら、興味深い標本がズラズラ並んでいますが、「何となく並んでいる」だけなので、見る人は「ふーん」で終わってしまいます。


展示物の中で、ボルネオに広がる「ランビルの森」の実物大ジオラマは、唯一力が入っていましたが、これも厳しいことを言えば「子供だまし」の類で、「見るたびに新しい発見がある」という性質のものではありません。

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技術史の展示室は完全に手抜きです。


京大では、『近代日本と物理実験機器―京都大学所蔵明治・大正期物理実験機器』(京大出版会)という単行本を出していて、旧制三高以来の備品調査は非常に進んでいるはずですが、こと博物館の展示に関しては、小さな部屋の、小さな棚に、ごく少数の器具が無造作に置かれているだけです。



展示品に1つ1つラベルが付けられているのは、上記調査の成果でしょうが、配列には何の必然性もなく、展示意図が不明です。

どうもブーブー文句ばかり言っていますが、建物は立派なのに、京大の本気具合がさっぱり感じられず、いかにも「片手間感」がぬぐえないので、ちょっと点数が辛くなりました。

(館内から見えた味のある建物)

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京大の奮起に期待しつつ博物館を後にし、さらに今出川通りを東へ。
今回の旅の最後の目的地、Lagado(ラガード)研究所へと向かいます。