昔の鉱物趣味の七つ道具(前編)2021年04月11日 09時15分57秒

先月、鉱物趣味のアイコンは「ハンマー、つるはし、スコップ」だという記事を書きました(LINK)。 かつての鉱物趣味は、半ばアウトドアで営まれるものであり、標本は「店で買うもの」というより、もっぱら「自採するもの」だったからです。

今日はその話の続きです。

古今の鉱物趣味の違いは、それだけにとどまりません。
自分で採ってきた鉱物は、自らその正体を突き止めねば、相手の素性は永遠に謎のままです。つまり同定と分類という作業が、かつては必然的に伴ったことも、両者の大きな違いです。(かく言う私にしても、売り手が付けてくれた標本ラベルがなかったら、産地はおろか鉱物種そのものも怪しいので、その部分だけ取り出せば、立派な新派です。)

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同定作業が必要であり、またそれが楽しみでもある…というのは、昆虫採集や植物採集も同じでしょうが、鉱物の場合、昆虫や植物とちょっと違う点があります。それは鉱物標本の場合、「絵合わせ」で正体を突き止めることができないこと。

昆虫や植物も深みにはまっていくと、器官を解剖したり、顕微鏡で強拡大したりして、ようやく種のレベルまで同定できるケースが多いと思いますが、そこまで厳密さを求めなければ、図鑑好きの少年なら、昆虫や植物の姿かたちを見ただけで、相当いい線までいけるはずです。

しかし、鉱物の場合は、そもそも「個体」という概念がなくて、その姿形や大きさが不定だし、同じ鉱物種でも見た目が違うとか、あるいは違う鉱物種でも見た目がそっくりという例がたくさんあって、こうなるとさしもの図鑑少年もお手上げです。

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前口上が長くなりましたが、上のような事情を踏まえて、昔の鉱物趣味の徒の三種の神器が「ハンマー、つるはし、スコップ」だとすれば、彼らの七つ道具といえるのが、鉱物を同定するための道具類です。

たとえば、結晶面の「面角」を測る接触測角器」とか、


おなじみのモース硬度計」とか。

(ナイフややすり、条痕板もセットになっています。ドイツのクランツ商会製)

これらは実用の具というより、理科室趣味を満足させるために買ったので、はっきりいって1回も使ったことがありません。(そういう品が私の部屋にはたくさんあります。使わない補虫網とか、胴乱とか、プランクトンネットとか。まあ、大業物に目を細める刀剣愛好家みたいなもので、あれも「実用」に供するものではありません。)

そんなわけで、私の鉱物趣味は一向に進歩しませんが、こうした測角器や硬度計は曲がりなりにも現役の品で、教育現場では今も使われていますから、新派の鉱物趣味の人にもなじみがあるでしょう。

しかし、これぞ旧派という道具があります。
それがかつて盛んに使われた、吹管(すいかん)分析器」です。
その表情を次に見てみます。

(この項つづく)

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