雪華の幻灯2021年12月26日 14時04分37秒

クリスマスも終わり、今日は雪が舞い散る、寒い日曜日。
青空が見えたかと思うと、白い雲がおそろしいスピードで空を走り、また次の雪を連れてきます。

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下は雪の結晶を写した幻灯スライド。


ただし、リアルな写真ではなくて、結晶を模式的に描いた図です。


薄葉のフィルムをガラス板でサンドイッチしたもので、残念ながら一部破れてしまっています。本当はもっと透明感のあるスライドセットが欲しいのですが、雪の結晶を写した幻灯スライドは、世間にありそうで無いものの一つで、いまだ出会いがありません。

もちろん、そういう品が絶無というわけではなくて、例えば有名な雪の写真家、ベントレー(Wilson A. Bentley、1865-1931)は、生涯にわたって雪華スライドを製作しつづけましたが、それも現在は甚だ希少品で、以前目をむくような価格で販売されているのを見た記憶があります。まあ、雪はありふれた存在ですから、ベントレー以外の人が製作を試みてもいいし、ベントレーの複製だってバンバン作られても良さそうなのに、探してみると意外にないのは、あまり需要がなかったんでしょうか。ちょっと不思議な気がします。

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とりあえず手元の1枚をしげしげと眺めてみます。


スライドのラベルにはイタリア語で「Fiori di neve(雪の華)」と書かれています。


裏面にはまた別のラベルが貼られていて、こちらはフランス語で「Flour de glace(氷の華)」。まあ雪でも氷でもお好みでと思いますが、言うなればこれは「冬の華」でしょう。

このスライドの生国はイタリアかフランスかはっきりしませんが、フランスで販売を手掛けたのはパリのマゾ商店です。ネット情報によれば、店主のエリジャ・マゾ(Elijah Mazo)は、1880年ごろ光学機器と写真撮影の店を創立し、1913年にアボット・トレーニュ(Abbot Tauleigne)と組んで、屋号も「Tauleigne‐Mazo」となったらしいので、このスライドも19世紀末~20世紀初頭のものということになります。

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100年ちょっと前、この雪華の幻灯ショーを楽しんだのは誰なのでしょう?
凍てつく夜をよそに、両親とともに暖炉の前で過ごした幼い子どもたちでしょうか。それとも雪の科学を学びながら、心はすでに教場を離れ、スケートやそり遊びに向かっていた生徒たちでしょうか。いずれにしても、そこに冬の温かい思い出を重ねて眺めたくなります。

コメント

_ S.U ― 2021年12月27日 13時19分17秒

 これは、絵なのですね。お写真では、銀かステンレスのような金属光沢があるように感じます。

 雪の結晶のスライドは少ないのでしょうか。顕微鏡写真でなくてもよいなら、雪の結晶のデザインが入った窓ガラスその他の板ガラスがけっこう昔からそのへんで普及していて、幻灯ショーを企画するまでもなく、子どもたちはそれを見ていた、という仮説を考えましたが、これはどうでしょうか。

 さて、本日付で、我らが天文同好会会誌の新号を発行しました(上のURL)。年末年始のつれづれにまたご高覧を賜れば幸甚に存じます。

_ 玉青 ― 2021年12月28日 21時07分51秒

御説の当否はさておき(強いてさておくことにしましょう・笑)、どのような形であれ、ガラスと雪の取り合わせは素敵ですね。そういえば、上の記事に出てきたフランス語のglaceは、「氷」と同時に「ガラス」も意味するそうで、そうなると英語のglassも当然同根だろうと思ったら、glaceとglassの語源は全然別だそうで、なんだかややこしいなと思いました。

ときに最新号のお知らせをありがとうございました。
早速拝読させていただきます。

_ 玉青 ― 2021年12月30日 08時13分55秒

追記です。今日の記事に書いたような具合で、ようやくゆっくり貴誌に目を通すことができました。今号も見どころが多かったですね。会員の皆さんの充実した天文ライフはとても羨ましいですし、歌曲「冬の星座」もさっそくYouTubeで視聴してきました。あの原曲は随分昔のもののようですが、個人的な印象としては、なんとなく戦後歌謡的な明るさに満ちて感じられ、1947年という時代を想起しました。そして何といっても、ご隠居と八つぁんの掛け合いの復活。今後の「新・新科学対話」が楽しみです!

_ S.U ― 2021年12月30日 09時31分11秒

これは、早速のご高覧を賜り、ありがとうございます。

 私の管見では、作詞者堀内敬三は、体制派からの大衆音楽普及者のイメージです。おっしゃるところの戦後日本歌謡のイメージが、堀内が意図した歌詞の調べに由来するのか、それとも原曲にすでに秘められているのか、よろしければ、ぜひ、原曲の Mollie Darling(Molly Darlingとも)のアメリカ人による歌唱を聴かれてご判断をお願いしたいと存じます。おそらくは、現在では、カントリー&ウエスタン調の伴奏による独唱が正統かと存じます。
 私にとっての「冬の星座」は、中学校の授業で唱わされた曲ということになっていまして、中学校の音楽室とリンクされすぎていて、客観的な曲の評価は出来ない状態にあります。

_ 玉青 ― 2021年12月31日 09時05分30秒

YouTubeで最初に聞いた土居裕子さんの歌は、なんかシャボン玉ホリデーとか「夢であいましょう」とかで歌われるような感じでしたが(戦後歌謡の印象はここに由来します)、
https://www.youtube.com/watch?v=5R28KlYNwcI
その後に聞いた合唱曲は、「いかにも合唱曲」という風に聞こえました。
https://www.youtube.com/watch?v=sqOY5arj4Ws
そしてアメリカ版を聞くと、たしかにカントリー&ウエスタン調に聞こえます。
同じメロディーでもアレンジによってジャズになったり、ディスコ調になったり、バロック風になったりしますし、歌手の歌い方によってもずいぶん印象は変わるものですね。結局、この曲の基本的な曲趣はどこにあるのか…というのは、私の耳ではよく分かりませんでしたが、最大公約数的には明朗でノスタルジックな曲といったところでしょうか。

_ S.U ― 2021年12月31日 11時45分12秒

 いろいろとご試聴ありがとうございました。
 案外にも、いろいろに聞こえるというか、汎用的でマルチOSの曲なのですね。
私には、つい最近までは、学校で音楽と天文の勉強が同時に出来るという非常に特殊な曲という認識しかなかったので、本連載をきっかけとする試聴は貴重な知見でした。

 今年も、1年、駄言のコメントにお応え下さりありがとうございました。

_ 玉青 ― 2021年12月31日 17時14分58秒

S.Uさんには今年もすっかりお世話になりました。
まあ私の方こそ駄言が多かったですが、古今の天地を行き来する駄言ともなれば、これはむしろ清談の最たるものですから、来年も大いに談じてまいりましょう。どうぞ良いお年を!

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