ここにもひとり月の客2022年10月09日 22時20分36秒


(1935年、モロッコの月。当時のリアルフォト絵葉書)

お月見といえば、旧暦8月15日の「十五夜」と、9月13日の「十三夜」ということに昔から決まっていて、昨日がその「十三夜」でした。言うまでもなく旧暦というのは、月の満ち欠けを基準にしており、8月だろうと9月だろうと、毎月15日が満月なわけですが、「十三夜」というのは、満月の手前の、いくぶん欠けた月を良しとする、考えてみればずいぶん不思議な風習です。何だかへそ曲がりな気もします。

何はともあれ明日が旧暦の9月15日、満月の晩です。

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今からざっと250年前、18世紀後半のイギリス。
イングランド中部の町、バーミンガムを中心に、一癖ありげな知識人たちが満月の晩に集まって談論風発する「ルナー・ソサエティ」という団体がありました。あのチャールズ・ダーウィンのお祖父さん、エラズマス・ダーウィンなんかが、中心メンバーの一人だったそうです。

ここで、おもむろにウィキペディアで「ルナー・ソサエティ」の項を読みに行くと、次のような不思議な記述があります。

 「ルナー・ソサエティは50年の間に様々な組織形態をとりながら発展していったが、非公式という性格はずっと変わらなかった。会則、議事録、出版物、会員リスト等はどの時期のものも残っておらず、その存在や活動は関係者らの手紙や手記からのみ裏付けられている。研究者の間でも会員の条件、そもそも誰が会員か、組織自体がいつ存在したと言えるのか、等については意見が一致していない。」

いかにも謎めいています。ルナー・ソサエティとは、はたして何だったのか?
月夜の影踏みのように、追えば相手は逃げ、容易に正体を見せません。

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そして、全く同じことが日本版ルナー・ソサエティである、「ジャパン・ルナ・ソサエティ」についても言えます。

ジャパン・ルナ・ソサエティは、1970年代の後半、東京の渋谷で活動していたと聞きます。満月の晩ごとに、一癖ありげな人々が集まって談論風発…というのも、本家とまったく同じです。その中心にいたのが、編集者・文筆家の松岡正剛氏(1944-)で、松岡氏をはじめルナ・ソサエティに関わった文化人の多くは、まだご健在ですから、その模様はもっと公然と語られても良さそうなものですが、案に相違して、その実態はまったく茫洋としています。

半世紀近くへだてて、そのかぼそい糸を、雨の音を聞きながらたどってみます。

(この項つづく)