カロライン・ハーシェルの肉声を取り戻す ― 2022年10月06日 20時45分23秒
現在、名古屋市科学館で「ウィリアム・ハーシェル没後200年記念展」が開かれていることは、以前お伝えしました(LINK)。
偉大な天文学者であるウィリアム・ハーシェル。
彼には、終生頼もしい相棒がいて、その助力がなければ、彼の偉大な発見の数々もどうなっていたか、一寸分かりません。少なくとも、彼が論文をまとめ、それを公表するまでに、だいぶ手間取ったことは確実です。
その相棒が、彼の妹カロライン・ハーシェル(Caroline Lucretia Herschel、1750-1848)です。彼女は兄ウィリアムの研究助手であると同時に、独立した天文学者でもあり、その実力と功績は誰の目にも明らかでしたから、晩年には栄えある王立天文学会ゴールドメダルを授与され、最終的に同学会初の女性会員にも選出されました。
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そのカロライン(と兄ウィリアム)の第一級の伝記資料として、『カロライン・ハーシェルの回想録と書簡集(Memoir and Correspondence of Caroline Herschel)』(1876)という本があります。
カロライン自身が記した追想録と手紙を編纂したもので、編纂したのはウィリアムの息子、すなわちカロラインから見れば甥っ子に当たる、ジョン・ハーシェルの妻であるマーガレット・ハーシェル。
カロラインとマーガレットは、要するに義理の叔母と姪の関係になるわけで、普通だったらわりと縁遠い関係だと思うんですが、マーガレットはカロラインのことを非常に尊敬しており、一族の歴史を記録する意味でも、本書の編纂を思い立ったのでした。
(カロライン92歳の肖像。上掲書口絵)
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さて、ここからが本題です。
昨日、全身が一気にざわつくような感覚を覚えました。
それは、この『回想録と書簡集』の元になった、カロライン自身の自筆草稿がマーケットに現れ、近々クリスティーズで売り立てがある…という知らせを耳にしたからです。貴重この上ない、しかも出版された本には載ってない情報も含む、あのカロラインの手稿がです。何ということだ!と思いました。
このニュースを知らせてくれたのは、イギリスのハーシェル協会です。
そこには、ハーシェルゆかりの地に立つ「ハーシェル天文博物館」が、この手稿の獲得に向けて募金活動を進めていて、今月末までに3万8千ポンド(約620万円)の基金増資が必要だ、だから皆さんもぜひ力を貸してほしい…というアピールが掲載されていました。
更なる詳細と募金情報は、下記のハーシェル天文博物館のサイトをご覧いただければと思いますが、そちらには基金増資目標額がさらに10万8千ポンド(約1800万円)と記されていて、どうも事態は容易ならぬことになっているようです。
■The Herschel Museum of Astronomy
“Help Us To Give Caroline Herschel Her Voice Back”
“Help Us To Give Caroline Herschel Her Voice Back”
博物館として、喉から手が出るほど欲しいことは痛いほど分かるので、私もハーシェル協会員として、貧女の一灯をと思っています。ご奇特な方は、ぜひお力添えを願います。
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