19世紀の天文趣味…フラマリオンに見るその一断面 ― 2006年11月05日 19時44分55秒
昨日、某メーリング・リストに投稿された記事です。「もしみんなが望遠鏡を持っていたら…」というタイトル(以下、適当訳)。
★ ★ ★
「およそ知性ある者、美しい光景に心を動かす者であれば、たとえ貧弱きわまりない望遠鏡であれ、起伏に富んだ白銀の三日月が、紺色の空でうち震える様をひと覗きすれば、すばらしい喜びに感極まり、今や地上の俗生活を離れて、宇宙旅行の最初の停泊地を訪れているのだと感じるのではあるまいか?
およそ思慮深い魂ならば、4つの衛星を従えた壮麗な木星を、神秘の環で囲まれた土星を、はたまた緋色とサファイアブルーに輝く二重星を無限の夜空に眺め、しかも驚異の念で心が満たされぬということがあろうか? まさに然り!
もし人類が ― 野良仕事のつましい農夫や、都市で苦役につく労働者、教師や自立できるだけの資産を持ち、今や富と名声の絶頂にある人々、果ては浮薄この上ない社交界の女性に到るまで ― どんなに深い内的な喜びが、宇宙を眺める人々を待ち受けているかを知ったなら、そのときこそフランスは、いや全ヨーロッパは、銃剣ではなく望遠鏡で覆い尽くされ、世界の幸福と平和は大いに増進するに違いない。」
― カミーユ・フラマリオン、1880
"What intelligent being, what being capable of responding emotionally to a beautiful sight, can look at the jagged, silvery lunar crescent trembling in the azure sky, even through the weakest of telescopes, and not be struck by it in an intensely pleasurable way, not feel cut off from everyday life here on Earth and transported toward that first stop on celestial journyes?
"What thoughtful soul could look at brilliant Jupiter with its four attendant satellites, or splendid Saturn encircled by its mysterious ring, or a double star glowing scarlet and sapphire in the infinity of night, and not be filled with a sense of wonder? Yes, indeed:
"If humankind - from humble farmers in the fields and toiling workers in the cities to teachers, people of independent means, those who have reached the pinacle of fame or fortune, even the most frivolous of society women - if they knew what profound inner pleasure awaits those who gaze at the heavens, then France, nay, the whole of Europe,
would be covered with telescopes instead of bayonets, thereby promoting universal happiness and peace."
★ ★ ★
出典が明記されてませんが、たぶん彼の代表作『一般天文学(Astronomie Populaire)』の一節ではないかと思います。天文趣味は世界を変える…という彼の予想は残念ながら外れましたが、19世紀には天文趣味にそれだけ大きな期待がかけられていた、ということは記憶されてよいのではないでしょうか。
フラマリオンのこの本は以前もご紹介しました(http://mononoke.asablo.jp/blog/2006/01/27/228265)。上の写真はその英訳本“Popular Astronomy”です(Gore 訳、Appleton、1925)。これとても読んでないことに変わりはないんですが、フランス語よりはまだ取っ付き易いかと思って、本棚に並べてあります。
それと、この本にはもう1つ別の興味もありました。(…以下明日に続く)
■07.2.18 付記■
上記文章の出典は、やはり Astronomie Populaire だそうです。
詳細は以下の記事の、synaさんのコメントを参照してください。http://mononoke.asablo.jp/blog/2007/02/17/1191574
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「およそ知性ある者、美しい光景に心を動かす者であれば、たとえ貧弱きわまりない望遠鏡であれ、起伏に富んだ白銀の三日月が、紺色の空でうち震える様をひと覗きすれば、すばらしい喜びに感極まり、今や地上の俗生活を離れて、宇宙旅行の最初の停泊地を訪れているのだと感じるのではあるまいか?
およそ思慮深い魂ならば、4つの衛星を従えた壮麗な木星を、神秘の環で囲まれた土星を、はたまた緋色とサファイアブルーに輝く二重星を無限の夜空に眺め、しかも驚異の念で心が満たされぬということがあろうか? まさに然り!
もし人類が ― 野良仕事のつましい農夫や、都市で苦役につく労働者、教師や自立できるだけの資産を持ち、今や富と名声の絶頂にある人々、果ては浮薄この上ない社交界の女性に到るまで ― どんなに深い内的な喜びが、宇宙を眺める人々を待ち受けているかを知ったなら、そのときこそフランスは、いや全ヨーロッパは、銃剣ではなく望遠鏡で覆い尽くされ、世界の幸福と平和は大いに増進するに違いない。」
― カミーユ・フラマリオン、1880
"What intelligent being, what being capable of responding emotionally to a beautiful sight, can look at the jagged, silvery lunar crescent trembling in the azure sky, even through the weakest of telescopes, and not be struck by it in an intensely pleasurable way, not feel cut off from everyday life here on Earth and transported toward that first stop on celestial journyes?
"What thoughtful soul could look at brilliant Jupiter with its four attendant satellites, or splendid Saturn encircled by its mysterious ring, or a double star glowing scarlet and sapphire in the infinity of night, and not be filled with a sense of wonder? Yes, indeed:
"If humankind - from humble farmers in the fields and toiling workers in the cities to teachers, people of independent means, those who have reached the pinacle of fame or fortune, even the most frivolous of society women - if they knew what profound inner pleasure awaits those who gaze at the heavens, then France, nay, the whole of Europe,
would be covered with telescopes instead of bayonets, thereby promoting universal happiness and peace."
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出典が明記されてませんが、たぶん彼の代表作『一般天文学(Astronomie Populaire)』の一節ではないかと思います。天文趣味は世界を変える…という彼の予想は残念ながら外れましたが、19世紀には天文趣味にそれだけ大きな期待がかけられていた、ということは記憶されてよいのではないでしょうか。
フラマリオンのこの本は以前もご紹介しました(http://mononoke.asablo.jp/blog/2006/01/27/228265)。上の写真はその英訳本“Popular Astronomy”です(Gore 訳、Appleton、1925)。これとても読んでないことに変わりはないんですが、フランス語よりはまだ取っ付き易いかと思って、本棚に並べてあります。
それと、この本にはもう1つ別の興味もありました。(…以下明日に続く)
■07.2.18 付記■
上記文章の出典は、やはり Astronomie Populaire だそうです。
詳細は以下の記事の、synaさんのコメントを参照してください。http://mononoke.asablo.jp/blog/2007/02/17/1191574
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