月世界今昔2009年06月11日 22時05分17秒

本日未明、「かぐや」月面に落下。
大活躍、お疲れさま。

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さて、今年はアポロの月着陸40年ということで、いろいろ催しがあると思ったのですが、どうも世間はそんな気分ではないようで、一部を除いてほとんど話題にもならないようです。私も辛うじて当時の記憶を留めているぐらいなので、偉そうなことは言えませんが、でも当時の熱気を考えると、本当に嘘のようです。

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写真は「天文と気象」1964年10月号。
表紙を飾るのは「月に近づくアメリカの『アポロ宇宙船』の想像図」です。

地人書館の「天文と気象」誌は、1949(昭和24)年1月に創刊された、当時わが国では唯一の天文ファン向け商業誌。後の「月刊天文」誌の前身にあたります…と言っても、同誌もすでに休刊となって久しいので、まことに時の流れとは容赦のないものです。(ちなみに誠文堂新光社の「天文ガイド」誌は、この翌年、1965(昭和40)年の創刊です。)

一体に60年代の「天文と気象」誌は、東西冷戦を背景にした宇宙開発ブームに傾斜した誌面作りで、その手の特集が目立ちます。この号も、月面着陸までまだ5年もあるのに、「特集“月の科学”」を組んで、大いにブームをあおっています。

中でちょっと驚いたのは、「火星、金星への飛行は“竹トンボ型”宇宙船で」という記事(p.49)。

「米ロッキード社の科学者ベン・P・マーチン技師は、月世界を征服したあとの目標として、火星探検の可能性を早くも検討しはじめており…」「目下予定されている計画を進めてゆけば、1970年には人間が、火星、金星に向って飛び出せることはほぼ間違いないと云っています。」

記事は、NASAとロッキード社が目論んでいる計画の細部を自信満々に解説し、「1970年のクリスマスに地球を出発、翌71年11月10日火星を通過、72年6月7日に金星に達し、同年8月21日に帰還」というスケジュールを報じています。

後知恵でこういう記事を笑うのはよくないと思います。よくないとは思いますが、でも、やっぱり一寸おかしい気がします。まあ、これもささやかな「未来人」の特権でしょう。

ここでひとつ不思議なのは、「もし1960年代の人が2009年の社会を見たらどう思うか?」という問いで、一瞬自信を持って答えられそうな気がするんですが(何と言っても、自分自身がかつては1960年代の人だったわけですから)、でもちょっとあやふやです。誰も銀色の服を着てないし、空飛ぶ車もないし、月への修学旅行もないので、たぶん物足りなく思うんじゃないかと思いますが、でもやっぱり驚くような変化も一方にはあるんでしょうね。いったい何に驚くんでしょうか。

【6月12日追記】

考えてみたら、上の問いは答えられなくて当然ですね。
問いが意味するのは、「60年代の大人が今の社会を見たら…?」ということであり、自分は60年代の大人ではないのですから。「60年代の幼児が今の社会を見たら…?」ならば、自信を持って答えられます。たぶん、彼は次のように思うんじゃないでしょうか。「子供がいない!お年寄りばっかりだ!」

コメント

_ S.U ― 2009年06月12日 06時07分12秒

私が推測する1960年代人の驚き:
・みんなケータイ電話を操作していること(GPS機能を使ってスーパージェッターが『流星号』を呼び出せそう)
・日本各地に科学館、水族館、動物園等が多数あって、単なる展示ではなくエンターテインメントとして定着していること。(当時の地方在住の少年ファンは狂喜乱舞)
・(「変化」ではないが)東京その他の大都市に意外と緑の空間が残っていること(これは素直にポジティヴに評価してくれるのでは)
・経済的に苦しかった、そして第3次世界大戦勃発の恐怖もあった昭和30年代がもてはやされていること。(あんな時代が良かったと思うなんて、本当にみんなどうしちゃったの?)

_ 玉青 ― 2009年06月12日 20時08分51秒

当時の人からすると、ケータイぐらいがわずかに未来っぽい光景でしょうか。あとは超高層ビルが増えたとか…?

今日の朝日新聞の夕刊に、「実物大ガンダム模型」の記事が載っていてスゴイ!と思いましたが、考えてみれば(60年代の常識ならば)、すでに本物のガンダムが走り回っていても不思議ではないはずなので、どうも時代の変化が停頓気味というか、60年代の人が想像力過多だったというか、いずれにしても、かつて夢見た未来とは違ってしまったですねえ。。。

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