星のお菓子 ― 2013年05月11日 11時12分51秒
(PARLOR RED COMET のメニュー。 鴨沢祐仁・『クシー君のピカビアな夜』より)
惑星を飴玉にするならば…という話題です。
蛍以下さんご自身は、「あまりしっくりこない」と言われながらも、下記のような提案をされました(蛍以下さんの苦心については、コメント欄でご確認を)。
蛍以下さんご自身は、「あまりしっくりこない」と言われながらも、下記のような提案をされました(蛍以下さんの苦心については、コメント欄でご確認を)。
水: 水色でラムネ
金: オレンジ
地: 青と白のマーブル(ソーダとミルク)
火: 赤でイチゴ味
木: チョコバナナ味
土: 緑でメロン
天: 黄緑でマスカット
海: ソーダ
冥: 薄荷
太陽: パイン
月: レモン
しっくりこないどころか、なかなかどうしてピッタリのラインナップではないでしょうか。
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この話題は、稲垣足穂の「星を売る店」を、ただちに連想させます。
神戸の山ノ手のとある街角で、青く輝くショーウィンドウに目をとめた主人公。不思議に思って近づいて見ると…
「何と、その小さいガラス窓の内部はきらきらしたコンペイ糖でいっぱいではないか!
ふつうの宝石の大きさのものから、ボンボンのつぶくらいまで、色はとりどり、赤、紫、緑、黄、それらの中間色のあらゆる種類がある。これが三段になったガラス棚の上に乗せられて、互いに競争するように光っている。」
店員に問いただすと、その正体は紛れもなく本物の星だという話。世界でいちばん天に近い、エチオピア高原の某所で、現地の男たちが先に袋のついた長い竿で集めたもので、エジプト政府も承認済みの確かな品だと言います。
この星はカクテルに入れてよし、粉末にしてタバコに混ぜれば、「ちらちらした涼しい火花が散って、まことに斬新無類の夏向きのおタバコ」にもなるし、さらにフラスコに入れて加熱し、その蒸気を吸えば「オピァムに似た陶酔をおぼえ、その夢心地というのがまことにさわやか」という、ちょっと怪しげな代物。
その味わいは「紅いのはやはりストローベリ、青いのはペパーミント。みどり色のは何とかで、黄色はレモンの匂いと味とに似かよっている」と言います。
個々の惑星に対する言及こそありませんが、「星を食べる」という文学的趣向は、足穂の創案になるものと思います。
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さて、現実世界に存在する惑星キャンディとはどんなものか。
蛍以下さんは、かつて『月間天文』誌の広告で、それらしい品を見た記憶があると書かれています。それがどんなものだったか、今検索した範囲では分かりませんでしたが、その代わり以下のようなページを見つけました。
内容は、Vintage Confectionsというアメリカのお店が、惑星の棒付キャンディを売り出したというニュースで、そのオリジナルの販売ページは以下(送料約25ドルで日本からも注文可能)。
なかなか美しいキャンディですね。
ただし、画像から判断する限り、これは食用インクを使ってプリントした惑星の写真を、透明なキャンディに埋め込んであるだけのように見えます。とすると、アイデア賞的な面白さはありますが、製菓技術として、格別ヒネリが利いているとも言い難い。
またお味の方は、上の日本語の記事には「綿菓子味とイチゴ味の2種類あるらしい」と書かれていますが、オリジナルページにはそういう記載がないので、全部同じ味なのかもしれません。
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それよりもむしろ驚くべき製品は、上の飴玉の次に紹介されている、惑星モチーフのチョコレートです。こちらは日本のメーカーが販売しているもので、そのページは以下。
勝手キャプチャーで恐縮ですが、その美しいデザインと、ヒネリの利いたフレバーをぜひご覧いただきたい。
最初見たとき、私の惑星イメージとずれているものもあったのですが、でもこれはお手本とする画像によって、だいぶ変わってきそうです。たとえば、下の画像を見ると、このチョコの惑星たちは、むしろ至極リアルに造形されていることが分かります。
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さらに、さらに、さらに驚くべき品は、同じメーカーが手掛けた「隕石チョコ」。
これは単に「漠然と隕石をイメージしたチョコ」ではなくて、隕石から発見された鉱物、「コスモクロア輝石」〔ウィキペディア〕と、世界7大陸で発見された実在の隕石7種をイメージして作られたという渋い、あまりにも渋すぎる品です。
以下に、その内容をそのままコピペさせていただきます。
●Orgueil オルゲイユ隕石(ヨーロッパ大陸・フランス))
1864年に落下。 最も大きい炭素質コンドライト。太陽系の初期の段階の様子をよく 保存しているといわれる。味:ビターチョコレート×カシス&マロン
●Tatahouine タタフィン隕石(アフリカ大陸・チュニジア)
母天体は小惑星ヴェスタだと考えられている隕石。1931年落下。味:ビターチョコレート×プラリネアーモンド
●Henbury ヘンバリー隕石(オーストラリア)
鉄隕石。鉄とニッケルの合金でできた宇宙の石。惑星の核部分と考えられている。1931年発見。味:ホワイトチョコレート×アプリコット&オレンジ
●Pallasovka パラソフカ隕石(ユーラシア大陸・ロシア)
鉄ニッケル合金とケイ酸塩化合物からなる隕石。1990年に発見。味:ビターチョコレート×プラリネヘーゼルナッツ
●Kiseki 輝石に咲く華(コスモクロア輝石)をイメージ
隕石より発見された初めての鉱物、「コスモクロア輝石」をイメージ。奇跡的に咲いた一輪の華。皆様に奇跡が起こりますように…。味:ホワイトチョコレート×グレープフルーツ&アールグレイ
●Yamato86032 ヤマト86032隕石(南極)
月は29億年前まで火山活動があり、新しい岩石が作られていた。原初の状態を保っている月隕石。味:ビターチョコレート×ブルーベリー&ホワイトバニラ
●Canyon Diablo キャニオン・ディアブロ隕石(北米)
隕石の研究により、クレーターは隕石衝突に起因するものと判明。19世紀発見。アリゾナ隕石孔のまわりで発見。味:ビターチョコレート×フランボワ&塩キャラメル
●Allende アエンデ隕石(南米)
太陽系成形の鍵を握る、初期太陽系星雲の凝縮物や星間微粒子が含まれている。味:ビターチョコレート×ピーチ&ドンペリニヨン
この商品を開発した人は、いったい何を考えているのでしょうか?
なぜここまで細部にこだわる必要があったのか?
もちろん、これが科学館のおみやげなら分かるのです。しかし、この品は一般に販売している、いわゆる「高級ショコラ」ですから、その辺がなんとも謎です。でも、私はこういう品が大好きなので、隕石チョコと、その作り手の方に最大級の賛辞を送ります。
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