図鑑史逍遥(6)…『普通動物図譜』(前編) ― 2013年10月12日 18時06分45秒
「図鑑史逍遥」といいながら、あまり逍遥もせず、こんなんだったら最初から「図鑑王・村越三千男」とでもした方が良かったかもしれませんが、今更タイトルを変更するのもなんですし、もうしばらく村越の後をついてウロウロしてみます。
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『普通植物図譜』の勢いをかって、村越と東京博物学研究会は、その動物編の刊行を企図し、明くる明治40年(1907)から『普通動物図譜』の発行を始めました。
植物編の方は牧野富太郎に校訂を依頼しましたが、こちらは動物学者で、帝大教授の石川千代松(1860-1935)を校訂者に担ぎ出し、麗々しく表紙に刷り込みました。単なる箔付けのためか、実質的に指導を受けたのかは定かでありませんが、いずれにしても村越の商策的狙いがそこにあったことは間違いないでしょう。
(第1号巻頭「発行の辞」)
今、手元には明治40年3月刊の第1号から、8月に出た第6号まであります。図書館の横断検索だと、第10号までは存在が確認できますが、その後は不明です。予定では2年間で24号まで出す計画でしたが、こちらは植物編ほど売れ行きがはかばかしくなかったのかもしれません。
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『普通植物図譜』では、絵の巧拙よりも印刷技術を問題にしましたが、『普通動物図譜』に関しては、絵そのものを問題にしないわけにはいきません。
上は第1号の最初に登場する「ダイショウジョウ(大猩々)」、すなわちゴリラです。
うーん、これは…
ペラッとめくると、次に「獅子」が来ます。
これも何というか、確かにライオンには見えるのですが、じっと見ていると、微妙な居心地の悪さを感じます。
では何でもダメかというと、そうでもなくて、上手い絵もあります。
(この項つづく)
コメント
_ L4RI_JP ― 2017年11月28日 17時56分38秒
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獅子図などは明らかにこちらの方が巧いのですが、やはり「……実物見たことないよね?」と思わずききたくなるような、見世物小屋の出来の悪い作り物を見せられているようなものもいくつか見受けられます。
識らない外国産の動物の絵を、満足なモデル資料もなく「それらしく描いてくれ」という学者や出版業者の無茶振りに呻吟なさった画工が、明治期には少なからずあったのだろうなぁ、とつくづくおもいます。