本邦解剖授業史(補遺2)2017年06月21日 07時13分08秒

今年は空梅雨の気配がありましたが、今朝は窓を叩く雨の音に起こされました。

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しつこいようですが、最後にもう1回だけカエルのことを書きます。
この連載の第2回で、「理科教育関係者は、ぜひカエル供養やフナ供養をせねばならんところです」…と書きました。

ところが、その後、荒俣宏さんの『世界大博物図鑑3(両生・爬虫類)』(平凡社、1990)を見たら、ちゃんと「蛙の供養塚」というものがあることを知りました。

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蛙の供養塚」

カエルは生物学、とくに発生、生理、遺伝の分野には欠かすことのできない教材や実験動物となっている。日本でも明治以降の近代科学の発達にともなって、多くのカエルが犠牲になった。そこで各地の大学や研究所で、供養のための慰霊祭が行なわれた。

鹿児島に残る蟇塚(がまづか)は、旧制第七高等学校の池田作太郎が創建した供養塔である。ヒキガエルだけを特別に祀り、犠牲1000匹ごとに供養が行なわれた。1910年(明治43)の第7回目の供養以来、3~4年に1度は供養されたことが記録に残る。なお、この供養塔は戦時中の空襲のために上半分が欠けている。

また慶応大学の生理学教室では、神経生理学の研究にガマを使用したので、1937年(昭和12)新宿塩町禅宗笹寺に蟇塚を建立した。

また東邦大学にも戦前は正門脇に高さ40cmほどの小さな蛙塚があったが、戦後の混乱で所在が行方不明になってしまったという。
 (上掲書p.58、改行は引用者)
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さすがに、小中学校でそういう例はないのかもしれませんが、やっぱり気持ちの上では手を合わせてほしいです。

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なお荒俣氏といえば、以前、氏がカエルの解剖について、下のような発言をされたのが気になっています。

ほぼ日刊イトイ新聞 - 目眩く愛書家の世界

荒俣   このカエルの解剖図も、ものすごい。なにしろ「ピン」まで描かれている。ここまでのものは、なかなか出ない。〔…〕しかも、この「カエルの解剖図」はキリストの磔を寓意してもいるんです。「科学の犠牲となった聖なるカエル様」、そのような意味が含まれている。」

上の発言は、ドイツのレーゼル・フォン・ローゼンホフという人が書いた、『Historia Natvralis Ranarvm Nostrativm(カエルの自然誌)』という、18世紀半ばの博物学書について触れたものです。(リンク先には、問題の図も掲載されています。)

カエルが大の字になってる解剖図が、キリスト磔刑図の寓意になっている…というのですが、これは何か典拠(ウラ)のあることなのかどうか?あるいはカイヨワあたりの引用なのか、それとも荒俣氏の創見なのか?いずれにしても、一匹のカエルといえど、こうなると、なかなか大したことになってきます。

その辺に含みを持たせつつ、そろそろ話題が解剖授業から遠くなってきたので、宴たけなわではありますが、この辺でいったんお開きにしましょう。


(この項終わり)

コメント

_ S.U ― 2017年06月21日 19時47分28秒

もし解剖を家庭科の調理の一環として行ったのであれば、慰霊するという感覚はまず起こらないですよね。食べ物は何でも感謝していただくべきではありますが、動物性のものを食べるとあとで慰霊祭をしないといけないとなると消化が悪くなりそうに思います。やはり、ここは、純粋に真理の学習のために命を捧げてくれたという認識が必要なのかもしれません。

_ 玉青 ― 2017年07月09日 16時57分36秒

コメントへのお返事もすっかり放擲していましたが、バカンスということでどうかご容赦ください。

それにしても、いかにキリストのように崇められようと、カエルだって磔となって血を流すのは嫌でしょうねえ。せいぜい鳥獣戯画のカエルのように、仏様として猿の法師に拝まれるぐらいが、平和で穏当ではないかなあ…と、バカンス中の身としては思います。

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