倫敦ヴンダーめぐり ― 2018年02月17日 10時39分16秒
十年一日のごとき拙ブログですが、それでも常に同じ位置にとどまっているわけではなくて、地球の歳差運動のように、興味の重心はゆっくり移動しています。何となく以前も書いたな…という話題が、周期的に顔を覗かせるのは、そのせいです。
ただ、それは過去の完全な焼き直しではなくて、自分としては、そこにわずか成長や成熟も感じているので、主観的にはアサガオの蔓のように、ぐるぐる回りながらも前進・上昇しているイメージです(客観的にはまた違った見方があるでしょう)。
最近の傾向は、ヴンダー路線への回帰。
しばらく話題に乏しかった、動物・植物・鉱物の「三つの王国」や、種々の珍物への関心がまたぞろ復活して、その手の品を手にすることも増えています。
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そんな気分でいたところに、素敵なサイトを知りました。
■ロンドンのミュージック&ミュージアム
書き手の清水晶子さんは、『ロンドンの小さな博物館』(集英社新書)、『ロンドン近未来都市デザイン』(東京書籍)などの著書がある、ロンドン在住のジャーナリストの方です。
ミューズから人類への偉大な贈り物である<音楽と博物館>。
清水さんの筆は、この両者をテーマに、ロンドンの過去・現在・未来の魅力を存分に紹介して止むことがありません。
2枚看板のうち、<ミュージアム>のページは、2014年にスタートして以来、博物館と展示会の情報が、ほぼ月1回のペースで、コンスタントに掲載されています。そのいずれもが、何というか内容が<濃い>んですね。下世話なことを恥じずに言えば、本当にこれをタダで読めてよいのか…というためらいすら感じます。
現在サイトの冒頭に来ている、昨年12月(LINK)と今年1月(LINK)の記事は、17世紀のコペンハーゲンで、せっせとヴンダーカンマーづくりに励んだ医師、オーレ・ワーム(1588-1654)を、2回にわたって取り上げています。(そこで紹介されている図版を見れは、驚異の部屋好きの人なら、「ああ、アレを作った人か!」とピンと来るでしょう。)
そして、オーレ・ワームの登場は、昨年11月の記事(LINK)で、ワームの後輩世代にして、これまた奇想のコレクターであった、イギリスのサー・トマス・ブラウン(1605-1682)を取り上げたことがきっかけになっています(ブラウンは、ワームのコレクション・カタログを所持していました)。
そしてさらに、ブラウンの記事からは、オカルティズムが流行したエリザベス一世治下でその名をはせた、万能の天才にして奇人、ジョン・ディー(1527-1609)の記事(LINK)へとリンクが張られ…という具合で、本当に<濃い>です。
読んでいるうちに、何だかこちらまで非常な物識りになったような気分になりますが、それは清水さんの筆が冴えているからに他なりません。
こうしたヴンダーカンマー的な展示も含め、清水さんの関心は、自然科学系・美術系の垣根を超えて広がっていますが、そこに共通するのは、いずれも「奇想のミュージアム」と呼ぶのがふさわしい内容であることです。とにかく、これはもうご覧いただいた方が早いですね。
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先日、個人ブログの可能性について思いを巡らせましたが、この「ロンドンのミュージック&ミュージアム」は、その一つの範となるものではないでしょうか。
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▼閑語(ブログ内ブログ)
読み応えのあるブログをご紹介した後で、日本の報道人にも一言申し上げたい。
好漢・枝野氏の国会での活躍を仄聞するにつけて、それに沈黙するマスコミの惰弱さが印象づけられます。
本来、報道人というのは、同僚を出し抜くこと、他社を出し抜くこと、世間を唸らせることに大いに生きがいを感じる、ケレン味の強い人たちのはずですから、これほどまでに無音状態が続いているのは、それ自体不思議なことです。そこには「寿司接待」とか「忖度」の一語で片づけられない、何か後ろ暗いことがあるんじゃないか…と、私なんかはすぐに勘ぐってしまいます。
裏の世界というのは、いつの世にもあると思いますが、いわゆる裏稼業に限らず、公の世界にも、公安をはじめ、内調とか、公調とか、きわどい仕事に手を染めている組織はいろいろあると聞きます。しかも、その中には、さらに秘匿性の高いダークな組織が存在する…と、まことしやかに囁かれていますが、そんな手合いがマスコミ対策の一翼を担っているとしたら、ジャーナリストが腰砕けになるのも頷けます。
それでも、ジャーナリストを以て自ら任じる人には、ここらで勇壮な鬨(とき)の声を挙げてほしい。別に高邁な理想で動く必要はありません。ケレンでも十分です。
とにかく唄を忘れて裏の畑に棄てられる前に、美しく歌うカナリアを、鋭く高鳴きする百舌を、深い闇夜を払う「常世の長鳴鳥」を思い出して、ぜひ一声上げてほしいと思います
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