おさる計算機(下)2018年06月08日 07時14分22秒

さて、教養ある猿のからくりを見てみましょう。
「おさる計算機」の裏側がどうなっているかというと…


何もありません。見事に何もありません。
あるのは、計算機を立てるスタンドだけです。

すなわち、メカニズムはすべて昨日見た表側にあったのです。
最初それに気づかず、「?」と思い、次に「!」と思いました。
この猿も賢いですが、これを作った人間もやっぱり賢いです。

ここには歯車やギアすらありません。このメカニズムを構成するのは、リベット留めした猿の関節に仕組まれたピボット機構のみです。
それによって、左右の足を閉じていけば…



スーッとポインターが下りていき…



ある特定の位置で止まります。

そして、この上下動に左右のスライド機構を組み合わせれば、



両足の位置を定めると、ポインターの位置は一義的に決まります。
あとは、そのポインターの位置に合わせて、答(2数の積)をあらかじめ印刷しておけば、みごとな計算機の出来上がりです。

知ってみれば「なーんだ」ですが、こういうのを「コロンブスの卵」と言うのでしょう。

   ★

このブリキの玩具は、元々1916年にアメリカで作られたもので(William Robertsonという人が特許を取りました)、手元にあるのは、それをドイツの玩具メーカーが復刻したものです。

コメント

_ S.U ― 2018年06月08日 12時34分11秒

この猿の計算機いいですね。実用に使われたのでしょうか。復刻というのはいつ頃の品でしょうか?

 かつて実用的だった機械式の計算機といえば、私はそろばんのほかタイガー計算機はかなり使ったことがあります。今とても欲しいのは「クルタ計算機」です。玉青さんは入手あるいは入手を検討されたことがありますでしょうか?
 クルタ計算機に新品やレプリカはないようで、動くかわからないような中古品が高値でオークションされていて、購入には危険きわまりない状況で手が出ません。計算機に骨董的興味は無いので、可動レプリカがあればありがたいのですが、今から作るとさらに高くなるのでしょうね。

_ 玉青 ― 2018年06月10日 07時41分27秒

この猿は最初から玩具ですね。実用にならなくもないですが、実用目的で使った人は多分ないでしょう。なお、復刻されたのはごく最近のことで、たぶん今でも売っていると思います。

私も黒光りする戦前のタイガー計算機のような、重厚な品に憧れて(私の場合はむしろ骨董的興味ですね)、実際に買おうと算段したこともあるんですが、置き場所がないのであきらめました。今でもちょっと欲しい気はします。S.Uさんのコメントを拝見し、クルタ計算機というのを知って、「お、これなら行けるかも」と一瞬思ったんですが、お値段がすごいことになっていますね。まさに天は二物を与えずです。残念。。。

ときに計算機でお題をいただき、今日はちょっと長めの記事を書いてみました。併せてお読みいただければ幸いです。

_ S.U ― 2018年06月10日 10時29分28秒

>この猿は最初から玩具
 そうなんですか。玩具にしては工夫がもったいないくらい出来過ぎです。掛け算のみならず、すべての2変数演算 f(x,y)に応用できるのではないでしょうか。もっとも、プログラミング電卓やスマホアプリがあるので現在ではそれでも玩具にしかならんか。

>クルタ計算機
 骨董屋の店頭に、触れる物が掘り出し物として置いてあればいいんですが、そんなことはあり得ないのでしょうねぇ。

 計算道具には思い入れが深いもので、今日の記事には気合いを入れてコメントさせていただきました。

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