青い12星座のマッチラベル2023年11月19日 12時27分36秒

青藍の背景色が美しい、12星座をモチーフにしたポルトガルのマッチラベル。


実はこれがちょっと訳ありの品で、イギリスの売り手がうっかり「JAPAN」の代わりに「USA」と封筒に書いてしまったため、その後どこをグルグルしたかは分かりませんが、待てど暮らせど届かないため(当然です)、結局、郵便事故として補償してもらいました。そして、そんなものを注文したことすら忘れた頃に、ひょっこりポストに入っていたのです。ときどき「はるか昔の死者から手紙が届いてびっくり」みたいなニュースを目にしますが、私もそんな気分で大いに驚いたのでした。

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せっかく届いた品ですから、改めて細部に注目してみます。


文字情報を読み解くと、このマッチは1926年、ポルトガルのエスピーニョの町で創業し、その後2006年まで営業していた「ポルトガル燐寸社(フォスフォレイラ・ポルトグエサ)」の製品です。「ASES」というのは同社のブランド名で、この星座シリーズ自体は、1950~60年代の品のようです。

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それにしても、こういうマッチラベルの流通ってどうなってたんでしょう?
この絵柄を貼り込んだマッチは確かに存在し、これが正当なマッチラベルであることは疑う余地がありません。

(出典:Vir à memória“AMORFOS DE PAPEL”。このラベルには、同じデザインで色変わりがありました)

でも、こんなふうに未使用のマッチラベルが――しかもセットで――存在するということは、当初からコレクター向けに、あるいは手軽なお土産品として、マッチ工場に送られる分とは別に、ラベル単体が大量に流通してたんじゃないでしょうか。私自身、そういうのをリアルタイムで見た記憶はないんですが、そういうラベルセットは世間にありふれた存在で、現に私の手元にもたくさんあります。

特に下の記事で採り上げた品(ロケット工学の父、ツィオルコフスキーのマッチラベルセット)なんかは、露骨にお土産用でしょう。


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そういえば、亡くなった祖父は、若い頃マッチのラベルを集めていました(戦前の話です)。その収集アルバムは、喫茶店、旅館、理髪店…等々、当時いろんなところで名刺代わりに配られていたマッチのラベルを、丁寧に剥がして貼り込んだものでした。要は、そういう「本当のマッチのラベル」とは別に、火薬の臭いを一度も嗅いだことのない“軟弱な”マッチラベルが、今も世間には大量にあるということです。