アドラー・プラネタリウム2006年01月25日 00時21分43秒


シカゴのアドラー・プラネタリウムは、1930年に創設されたアメリカ最古のプラネタリウム。天文関係の歴史コレクションも充実しており、このブログには縁の深いところです。

この絵葉書は創設間もない頃の夜景。超現実的な雰囲気を漂わせた画面が素敵です。

同プラネタリウムのコレクションは、下記から見ることができます。
http://www.adlerplanetarium.org/history/index.shtml

銀河鉄道の夜(1)2006年01月25日 06時16分44秒

パロル舎版・銀河鉄道の夜(いちばんのお気に入り)
(パロル舎版・銀河鉄道の夜)


一、午后の授業

「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」先生は、黒板に吊した大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指しながら、みんなに問をかけました。



 「このぼんやりと白い銀河を大きないい望遠鏡で見ますと、もうたくさんの小さな星に見えるのです。ジョバンニさんそうでしょう。」
 ジョバンニはまっ赤になってうなずきました。けれどもいつかジョバンニの眼のなかには涙がいっぱいになりました。そうだ僕は知っていたのだ、勿論カムパネルラも知っている、それはいつかカムパネルラのお父さんの博士のうちでカムパネルラといっしょに読んだ雑誌のなかにあったのだ。それどこでなくカムパネルラは、その雑誌を読むと、すぐお父さんの書斎から巨きな本をもってきて、ぎんがというところをひろげ、まっ黒な頁いっぱいに白い点々のある美しい写真を二人でいつまでも見たのでした。



 先生は中にたくさん光る砂のつぶの入った大きな両面の凸レンズを指しました。「天の川の形はちょうどこんななのです。…」


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 『銀河鉄道の夜』の有名な冒頭部。「白く銀河のけぶる黒い星図」「博士の書斎」「銀河の美しい写真の載った巨きな本」「光る砂粒の入った凸レンズ型の銀河の模型」…こうしたアイテムに私の趣味嗜好は強くひかれるのです。作品全体のテーマから外れて、細部を偏愛するというのは邪道かもしれませんが。

銀河鉄道の夜(2)2006年01月25日 20時23分09秒

(新潮文庫版・銀河鉄道の夜)

四、ケンタウル祭の夜

 ジョバンニは、せわしくいろいろのことを考えながら、さまざまの灯や木の枝で、すっかりきれいに飾られた街を通って行きました。

時計屋の店には明るくネオン燈がついて、一秒ごとに石でこさえたふくろうの赤い眼が、くるっくるっとうごいたり、いろいろな宝石が海のような色をした厚い硝子の盤に載って星のようにゆっくり循ったり、また向う側から、銅の人馬がゆっくりこっちへまわって来たりするのでした。

そのまん中に円い黒い星座早見が青いアスパラガスの葉で飾ってありました。

ジョバンニはわれを忘れて、その星座の図に見入りました。

それはひる学校で見たあの図よりはずうっと小さかったのですが、その日と時間に合せて盤をまわすと、そのとき出ているそらがそのまま楕円形のなかにめぐってあらわれるようになって居り、やはりそのまん中には上から下へかけて銀河がぼうとけむったような帯になってその下の方ではかすかに爆発して湯気でもあげているように見えるのでした。

またそのうしろには三本の脚のついた小さな望遠鏡が黄いろに光って立っていましたし、いちばんうしろの壁には空じゅうの星座をふしぎな獣や蛇や魚や瓶の形に書いた大きな図がかかっていました。

ほんとうにこんなような蝎だの勇士だのそらにぎっしり居るだろうか、ああぼくはその中をどこまでも歩いて見たいと思ってたりして、しばらくぼんやり立って居ました。


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 「午后の授業」に続いて、愛らしい天文アイテムの出てくる章。こんなショーウィンドウがあったら、ジョバンニならずとも、釘付けになってしまいそう。これを実物で再現できたらいいですね。