ちょっと昔の化石趣味(3)2011年02月17日 21時48分33秒

さて、どうにかこうにか目指す場所に近づいたら、次にやるべきことは水成岩を見つけることです。(「水成岩」という言い方も懐かしい。今なら「堆積岩」ですね。)そのためには、川筋で岩石の露出した露頭を探すとよい…というアドバイスがあります。


しかし、うまい具合に化石の産出場所を見つけても、化石はとりっぱなしではいけない。化石をしまうまえに、ポケットからノート(野帳)をとりだして、いろいろ観察したことをかきつけておこう」

野帳(フィールドノート)。
これは化石少年だけでなく、昆虫少年でも、植物少年でも、野外派の理科少年は必ず付けるよう、どの理科本も推奨していたので、付けた方は多いでしょう。もちろん私も付けました。懐かしいですね。でも、続きませんでした。ああいうのは、たくさんの情報の中から何を取捨選択するかが分かってないとダメなので、「何でも気づいたことはメモしよう」と言われても、子どもにはちょっと難しい作業じゃなかったかなあ…と、今にして思います。


本書には、もちろん具体的な化石採集の手順や心得も書かれています。曰く層理に沿って岩石を割れ、なるべく周りの岩石も一緒に採れ、化石の上下に気を配れ…etc。


こんなふうに、夢中になって化石をとっているうちに、だいぶ日がおちてきた。山の中で日が暮れたのでは、帰ることができなくなるから、早めに帰りじたくをはじめよう。目のまえにある化石の山は、どうしてもち帰ったらよいだろうか。〔…〕小さな化石や、こわれやすいものは、わたでくるんで、あきばこにいれる。とくに大切なものや、珍しいものがでたら、もう、なりふりにはかまっていられない。お母さんにおめだまをちょうだいするのをかくごで、ハンカチーフでも、手ぬぐいでもなんでもあてる。あまり大きくてりっぱな化石がとれたので、こわれるのを心配して、上衣をぬいであててきた人があるくらいである

「朝、家をでるときもってきた、大きなおにぎり、水とうの水、リンゴやキャラメルがなくなったと思ったら、帰りは朝よりも、2倍も3倍もおもいお土産ができた。帰りの荷物がうんとおもくなるところが、ハイキングと化石採集のちがいである」

こういう文章を読んで、出かける前から期待で胸をグッとふくらませた子供たちも多かったでしょう。これを皮算用と言ってはかわいそうです。子供たちは、あくまでも意気軒昂なのです。

このお土産は、家にかえって、お父さん・お母さん・弟・妹にみせてから、あすは学校へもっていって研究しよう。〔…〕帰りの駅までは、まだかなりの道のりだ。おなかはすいたし、リックは重い。みんなで元気に歌でもうたっていこう」

   ★

こうして楽しい化石採集行は終りました。このあとは、さらに楽しい標本整理の作業が待っています。

「今朝は、遠足でもないのに、リックサックをかついで家をでる。途中で友だちに会うと、“おい、リックをかついでどこへいくんだ”“それはなんだ”“なにがはいっているんだ”と、いろいろたずねられるであろう。“化石だよ”といってしまってはたのしみがなくなるので、“いいものさ、放課後に理科室へきたら、見せてやるよ”と答えておこう

ああ、いいですね。少年たちの口吻が、ちょっと長野まゆみ風です。
この後は、いよいよ理科少年の本領を発揮する章節に突入するのですが、それはまた次回。

(この項さらにつづく。でもこんな風に書いていると、いつまでも終らないので、次回むりやり完結の予定。

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