空の旅(13)…スパイグラス2017年05月02日 09時15分54秒

天文趣味というのは、抽象的に宇宙に憧れるばかりでなしに、多くの場合、自分自身の目で、宇宙の深淵を覗き込みたいという方向に、(たぶん)自ずと向かうものです。

…というか、私がイメージする天文趣味は「天体観測趣味」とニアイコールで、そうした「趣味の天体観測」という行為が成立したのが、たぶん1800年前後だろうと踏んでいます。(最初期の天体観測ガイドブックの登場が、19世紀の第1四半期であることが、その主たる根拠です。)

19世紀の100年間、時を追うごとに、天文趣味はポピュラーなものとなっていきました。そして、当時、本格的な天体望遠鏡に手の届かない人たちが頼ったのが、多段伸縮式のスパイグラス(遠眼鏡)や、手近なオペラグラスでした。(19世紀前半には、天体望遠鏡の量産体制自体なかったので、財力の多寡を問わず、そうせざるを得ない面もありました。)

それらは、天体観測用途のスペックこそ満たしていませんでしたが、月のクレーターや、木星の4大衛星の存在なんかは教えてくれたでしょうし、何よりも肉眼では見えない微かな星を見せてくれることで、人々の「星ごころ」を強く刺激したことでしょう。

   ★

その辺のことを表現したくて、今回の展示では、スパイグラスとオペラグラスを並べました。


木製鏡筒の古い遠眼鏡。

「1800年頃にイギリスで作られた小型望遠鏡。「昼夜兼用(Day or Night)」をうたっていますが、あまり天体観測の役には立たなかったろうと思います。それでも、こうした小さな望遠鏡を空に向けて、熱心に「宇宙の秘密」を覗き込もうとした人も大勢いたことでしょう。」


真鍮の筒をぐっと伸ばして、空をふり仰げば


この小さなレンズを通して、広大な宇宙の神秘が、かすかにその尻尾をひらめかせた…かもしれません。少なくとも、この筒を手にした人は、そう信じたことでしょう。

(この項つづく。次回はオペラグラス)

コメント

_ S.U ― 2017年05月02日 17時36分13秒

いかに小さくとも望遠鏡は望遠鏡、最初に天に向かって肉眼の限界を突破するときのスリルと感動に望遠鏡の大小はさほど関係なかったでしょうね。特に、写真すらなかった時代は、写真と比べてがっかりすることもないわけで、そうだったと思います。

_ 玉青 ― 2017年05月03日 12時00分28秒

>写真と比べてがっかりすることもない

あ、それはありそうですね。
残念ながら20世紀後半にあっては、少なからぬ数の人が、それで天文趣味に踏み出すのを断念した気配があります。

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