空の旅(14)…オペラグラス ― 2017年05月03日 11時41分52秒
世はゴールデンウィーク。
『博物蒐集家の応接間 ~旅の絵日記~』が神保町で行われてから、すでにひと月以上経ちました。でも、ブログ内の時空は、依然としてあの場に固着しています。「旅」の軽やかさとは程遠い鈍重さですが、地球全体を巡る2千年以上に及ぶ旅の日記であってみれば、歩みが遅いのも止むを得ません。(どうか、そういうことにしておいてください。)
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さて、今日のテーマは「オペラグラス」。
例によって、展示当日のプレートの文面を引いておきます。
「19世紀のオペラグラス」
「イギリスのドロンド社製の双眼鏡(19世紀前半)。観劇用に用いられたので、「オペラグラス」の名がありますが、手軽な星見の道具としても重宝されました。時代は下りますが、天文趣味を広めたギャレット・サーヴィスには、『オペラグラスによる天文学(Astronomy with an Opera-Glass)』(1910)という愛らしい本があります。」
「イギリスのドロンド社製の双眼鏡(19世紀前半)。観劇用に用いられたので、「オペラグラス」の名がありますが、手軽な星見の道具としても重宝されました。時代は下りますが、天文趣味を広めたギャレット・サーヴィスには、『オペラグラスによる天文学(Astronomy with an Opera-Glass)』(1910)という愛らしい本があります。」
当日は、サーヴィスの本も会場に並べて、オペラグラスと天文趣味の結びつきを視覚化しました。
オペラグラスについては贅言無用と思います。
天界散歩の友としては、スパイグラスよりも一層スマートで、観劇帰り、手にしたバッグからひょいと取り出して、今度は星たちのドラマを眺める…なんていう洒落た紳士や淑女もいたことでしょう。
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ところで、サーヴィスの本の中身ですが、こちらは現代の観測ガイドとほとんど変わりません。
(サーヴィスの本の目次)
章立ては季節ごとになっていて、そのときどきの空の見所を図入りで紹介しています。
春は北斗の季節。
今だと、ちょうど夜の9時ごろに高々と空にのぼった姿が眺められます。
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同時にこの前後、大空から天の川の姿がいっとき消えます(条件の良いところならば、地平線に沿って天の川がぐるりと一周しているのが見えるはずですが、それは望みがたいでしょう)。このとき、日本の地平面は、ちょうど銀河面と同一になり、我々はまさに銀河の只中に身を置いて、天頂高く銀河北極を眺める格好になります。そして、そこからは何十億光年も彼方の光が、微かに、しかし確実に我々の元まで降り注いでいるのです。
…ありふれた日常の中でも、そんな壮大なイメージで、世界そのものを感じ取れるのが、天文趣味の妙味。
コメント
_ S.U ― 2017年05月03日 19時09分35秒
_ 玉青 ― 2017年05月04日 10時36分53秒
デッキチェアに寝そべって、低倍率・広視界の双眼鏡を手にすると、本当にフワフワと宇宙を漂っているようですね。
>オペラグラスでオペラ
(笑)そういえば、私もないですねえ。
日本だと、活躍の場はオペラよりも、もっぱらスポーツ観戦でしょうか。
>オペラグラスでオペラ
(笑)そういえば、私もないですねえ。
日本だと、活躍の場はオペラよりも、もっぱらスポーツ観戦でしょうか。
_ S.U ― 2017年05月04日 14時07分45秒
>もっぱらスポーツ観戦
そういや、彗星を見るのに使っていた50mmくらいの双眼鏡を、野球場の外野席に持ち込んだことはあると思います(笑)。
そういや、彗星を見るのに使っていた50mmくらいの双眼鏡を、野球場の外野席に持ち込んだことはあると思います(笑)。
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オペラグラスなら天体望遠鏡のような過大な期待がかかりませんので、写真のように見えないからといってがっかりすることもないでしょう。
私が初めてレンズを通して天体を見たのが、7X28mmの双眼鏡でした。肉眼に毛が生えた程度と思いきや、星団などを見るとそれよりは格段によく見えますよね。また、天体望遠鏡を持っていても、双眼鏡の星空散歩は別途楽しめるもので、この点でも独特の世界と言えると思います。
そういや、オペラグラスでオペラを見たことはありませんなぁ。