景気のいい話2023年10月07日 18時11分46秒

この円安で、多くの人が苦しんでいます。
とりわけ、海外から直接モノを買い入れてナンボという人は、それが商売であれ、趣味の領域であれ、大変な苦境に陥っていることでしょう。そこに輸送費の高騰が追い打ちをかけて、私も最近は「君たちはどう生きるか」と自問を続ける毎日です。

先日届いた本が、カタログの記載よりも、収録図版数が大幅に少なくて、今、先方とややこしいことになってるんですが、そんなことでゴタゴタするのも、結局は懐が貧しいからで、昔から「金持ち喧嘩せず」とはよく言ったものです。

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あまり貧乏じみた話ばかりでも何ですから、ちょっと景気のいい話をします。
今から7年前に、17世紀に出た星座トランプについての記事を書きました。


天文トランプ初期の佳品: ハルスデルファーの星座トランプ(1)

記事は同(2)(3)と続いて、最後に「補遺」を書いて、都合4回で完結しました。
このうち「補遺」というのは、この珍しいトランプがサザビーズのオークションに登場したことを話題にしたもので、自分は「この星座トランプ。販売当時は安かったかもしれませんが、今では相当なことになっていて、サザビーズによる評価額は1万~1万5千ポンド。ポンド安の今でも126万~190万円に相当します。実際の落札額は不明ですが、価格だけ見れば、今や本家・バイエルの星図帖に迫る勢いです。」と書いています。しかも今のレートだと、その評価額は183万~274万円に跳ね上がるのですから、ため息しか出ません。

で、今回、同じトランプがeBayに出品されているのを見て、おっ!と思いました。


「同じ」といっても、サザビーズで落札されたのが巡り巡ってeBayに出たわけではありません。サザビーズに出品されたのは、星座を構成する恒星の脇に、元の持ち主がバイエル符号をペン書きしていましたが、今回の品にはそういう書き込みがありません。しかも、当時のオリジナルの革ケースに収まっているという大珍品です。

スタート価格は16,000ユーロ、日本円にして253万円。
ちょうどサザビーズの以前の評価額と同じ価格帯ですね。ただしサザビーズだと、落札者がサザビーズ側に多額の手数料(バイヤーズ・プレミアム)を払わないといけないので、それを考えると今回のほうが大分お得です。

しかも、この品は先日期限までに入札がなかったため、今回再出品になったもので、今回もスタート価格で落札できる可能性は高く、しかも「価格応談」となっているので、実際はもっと安い価格で入手できるかもしれません。

…と、まことに景気のいいことを言っていますが、もちろん私にそんなお金があるわけはありません。でも、ほんの10年ちょっと前だったら、1ユーロが100円を割り込んでいたので(本当に嘘みたいな話です)、当時のレートなら、今より100万円も安く買えたのになあ…とは思います。


でも考えようによっては、1ユーロが200円を付けていた時期もあるし、今後もそうならない保証はないので、それを考えれば、今のこの価格でもまだまだ十分お買い得かもしれんぞ…と脳天気に考えてみると、何となく景気のいい感じが漂ってこなくもないです。(あくまでも感じだけですが。)


【補足】 この品に誰も入札しなかったのは、普通ならちゃんとしたオークションハウスに登場すべき品が、eBayにポンと出てきたのが、そもそも不審だし、出品者であるドイツの人が自己紹介欄に何も記載せず、これまでにわずか4つのフィードバックを獲得しただけという、完全に謎の人だから…というのが大きいと想像します。