銀の雪2019年02月11日 10時36分53秒

今日も広く雪模様。
でも、私の町では雪はさっぱりで、薄雲を通して日の光さえ射しています。
今は結露した窓越しに見る、白くぼんやりした景色に、わずかに雪を思うのみです。

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人は明るい雪景色を「一面の銀世界」と呼び、「白銀が招くよ」とつぶやきながら、いそいそと山に向かったりします。

「銀雪」というのは、もちろん中国生まれの言葉でしょうが、9世紀に編まれた空海の詩文集『性霊集』(しょうりょうしゅう)にも、「銀雪地に敷き、金華枝に発す。池鏡私無し」云々の句があって、日本でもこの語はずいぶん古くから用いられているようです。(大地を覆う純白の雪、日光に煌めく樹上の氷、すべての景色を無心に映して静まりかえる池の面…。こういう芯から澄み切った冬景色を好ましく思うのは、平安時代の高僧も、21世紀の俗人も変わりません。)

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ふと、ほんものの「銀の雪」が欲しいと思いました。

実際探してみると、もちろんスノーフレークをモチーフにした銀製アクセサリーはいろいろあるのですが、結晶の表現がマンガチックというか、ちょっとリアリティに欠けるものが多いようです。


そんな中、この差し渡し2センチほどの小さな結晶たちは、なかなかよくできていると思いました。

1831年、ロードアイランドで創業したアメリカの老舗銀器メーカー、ゴーハム社(Gorham Manufacturing Company)。この銀のチャームは、同社が1970年代にシリーズで発売したもので、手元の品はそれらをチェーンでつないで、ブレスレットに仕立ててあります。


結晶の片面には1970から1976まで、各結晶の制作年が鋳込まれています。


7年間の歳月をかけて、この世界に降り積もった雪のかけら。
磨いてやれば、すぐに元の輝きを取り戻すはずですが、当分はこのくすんだ銀色に時の流れを重ねて愛でることにします。

銀は金と並んで柔らかい金属なので、チャーム同士が触れ合う時も、なんとなく優しい音がします。

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