静と動2022年11月04日 05時34分53秒

「表面がギザギザしてて、見る角度によって違った絵柄が見えるやつ」と言って、何のことか分かっていただけるでしょうか?昔はよくシール状のものが、お菓子のおまけに入っていました。子供心に実に不思議で、表面のギザギザをボンナイフで削って、その謎を解こうと試みた思い出があります。

あれの正式名称は「レンチキュラー」というそうです。
表面の透明ギザギザシートの下には、すだれ状に細切りにした複数の画像が交互に並べてあって、ギザギザを通して見ると、光の屈折の加減で、見る角度によって特定の絵柄が浮かび上がる仕組みだとか。


上はロサンゼルスにあるJ.ポール・ゲッティ・ミュージアムのお土産にもらったブックマーク(しおり)。



牛、鹿、犬(?)の疾走する姿が、レンチキュラーでアニメーションのように見えるという、まあ他愛ないといえば他愛ない品なんですが、シンプルなものほど見飽きないもので、つい見入ってしまいます。

(しおりの裏側)

オリジナルの作者は、エドワード・マイブリッジ(Edweard J. Muybridge、1830-1904)。彼は、当時としては画期的なハイスピード撮影法を編み出し、走っている馬の脚の動きを捉えたことで知られますが、上のも同工の作品で、彼の写真帳 『The Attitudes of Animals in Motion (移動時の動物の姿勢)』(1878-81)から採った写真が、3枚組み合わさっています。

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こういうのを見ていると、「運動の本質」とか、「時間の最小単位」とか、「眼に映る変化はすべて虚妄であり、我々の生は連続する静止画に過ぎない」とか、見方によっては“中二病”的な考えがむくむくと湧いてくるんですが、これは決して軽んずべき問題ではなくて、少なくとも一度は真剣に考えないといけないものばかりだと思います。