ジョバンニが見た世界…大きな星座の図(11)2013年03月28日 23時04分19秒

水仙が匂い、桜が咲き、雪柳が輝き、
それらすべての上に雨が灌ぎ、また青空が広がり…
転変極まりない自然の姿に、自らの人生を重ねて物思いにふけることの多い時季です。

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さて、しばらくぶりに記事を書きます。
今日は「大きな星座の図(8)」と題した、以下の記事の続きになります。
http://mononoke.asablo.jp/blog/2013/03/04/6737144

ジョバンニが時計屋の店先で眺めた大きな星座の図。
それは「空じゅうの星座をふしぎな獣や蛇や魚や瓶の形に書いた大きな図」であり、「蝎だの勇士だの」が「そらにぎっしり」と並んだ絢爛たるもので、それを見たジョバンニをして、「ああぼくはその中をどこまでも歩いて見たい」と言わしめたのでした。

その最終候補として、このブログでは、オランダのバッカー(Remmet Teunisse Backer)が出した、メルカトル式の方形星図を挙げました。
その主な根拠は、以前も書いたように、「南北両天の星座を1枚の図にすきまなく収めてあり、上の記述に合致する」こと、そして「手前に置かれた丸い星座早見盤とのコントラスト効果が、時計屋の主人の美的感覚にも叶うであろう」ことの2点です。(後付けの理由なので、あまり真に受けないでください。)

バッカーは伝のはっきりしない人ですが、17世紀の地図製作者で、この星図の初版も1684年ごろ、オランダのエンクホイゼンで出ています。さらに、その後も版元を変えながら1703年、1709年、1756年、1792年と、100年以上の長きにわたって、たびたび版を重ねた人気星図の1つ(初版以外はアムステルダムで出ています)。

他の主要星図が、南天・北天の2つの円形星図のペアとして作成される中、この星図が好評を博したのは、もちろん他の星図とうまく差別化を図ったというのが根本原因でしょうが、キャラが全部垂直に描かれているという絵柄の簡朴さや、メルカトル式世界地図と並べて掲示するのにうってつけと思われたせいかもしれません。

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以前紹介したのは、その今出来のポスターでした。

(画像再掲)

しかし、「銀河鉄道の夜」の世界を再現するのに、安易にポスターに逃げてはいけないという反省もあり、また売られているポスターは解像度が低くて、近づいて見ると鑑賞に堪えないという実際的理由もあって、思い切って実物を購入することにした…というのが、前回までのあらすじ。

それがついに届きました。
届いたのは、この星図の最後のエディションである1792年版です。


比べると分かるように、サイズは実物のほうが一回り小さいです。同じポスター額(フレーム内寸は70cm x 58cm)に入れると、周囲の余白が大きくなりすぎるので、厚紙を適当にくり抜いた簡易マットで周囲を押さえてあります。

大きさを除けば、まあどっちも似た感じですが(当たり前)、問題となる細部はどうか?

(この項つづく。次回はポスター vs. 実物の細部比較編)