科学の真骨頂 ― 2017年08月29日 22時11分36秒
昨日のスライドと一緒に並んでいたスライドをついでに載せます。
動物を写した古いレントゲン写真という、ちょっと変わった題材の品です。
種名は不明ですが、それぞれサンショウウオとヘビの一種。
手書きのラベルには、「フレデリック・ヨークによる歴史的写真。X線を用いた放射線写真」と書かれています。(反対側の面に貼られたオリジナル・ラベルには、「Radiographs by X-ray」と印刷されています)。
ここに出てくるフレデリック・ヨーク(Frederick York、1823-1903)というのは、息子とともにロンドンで写真販売会社を興し、19世紀後半から20世紀初めにかけて、大いに繁盛させた人物です。
彼はロンドン名所や、ロンドン動物園で暮らす動物の姿などをカメラに収め、それをキャビネ版や、大判写真、あるいはステレオ写真の形で売りさばきました。さらに、それらにまして売れたのが、写真を元にした幻灯スライドです。
1890年以降のヨーク社のスライドには、「Y字に蛇」のマークがあしらわれ、今回取り上げた2枚のスライドにも、やっぱりそのシールが貼られています。(余談ですが、以前登場した、美しい望遠鏡のスライド↓に貼られた「Cobra Series」のシールも、ヨーク社の製品であることを示すものでした。)
X線の発見は1895年。その後、X線撮影装置が開発されたのは1898年。
したがって、今回の写真も、それ以降のものということになります。
ヨーク社が、自前でX線撮影装置まで持っていたのか、あるいは装置は他所で借りたのかは不明ですが、撮影自体は、きっとヨーク社が行ったのでしょう。
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サンショウウオ(両生類)とトカゲ(爬虫類)は、一寸シルエットが似ています。
でも、その骨格はずいぶん違います。前者には、肋骨で籠状に覆われた「胸郭」が存在せず、その形状は魚の骨と大差ありません。これは、両生類では胸郭を用いた肺呼吸が未発達なことと関連している由。
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それにしても、こうした写真が、当時の人に与えた衝撃はどれほどのものであったか。
人びとは、まさに新時代の魔法を見る思いだったでしょう。
この発見が、当時既に盛んだった心霊ブームに新ネタを提供し、日本でも明治の末頃、学者たちを巻き込んで、透視・千里眼・念写の実験が盛んに行なわれました(当時の学者たちは、現象の背後に「京大光線」や「精神線」といった仮想光線を想定しました)。ホラー小説『リング』の元ネタとなったのもそれです。
更にその後、X線はいっとき「科学おもちゃ」のような扱いを受けた…というのは、以下で触れました。
■怪光線現る…理科室のX線
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【参考】
フレデリック・ヨークと彼の商売については、以下のページを参照しました。
■The Magic Lantern Society>The Lantern Alphabet>York and Son の項
■Historic Camera>History Librarium>Frederick York, Photographer の項
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