グリニッジへようこそ2022年04月10日 11時41分56秒

先日、五島プラネタリウムの招待状のことを書きましたが、それで思い出したことがあります。

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以前、グリニッジ天文台について書かれた古書を買いました。


■E. Walter Maunder(著)
 The Royal Observatory Greenwich:Its History and Work.
  The Religious Tract Society(London)、1900

ご覧のとおり深緑に金彩の洒落た表紙で、背表紙以外の側面はすべて金箔押しの「三方金」という、なかなか豪華な造本です。しかし、今回話題にしたいのは、本そのものではなくて、そこにはさまっていた「おまけ」についてです。他でもない、これぞグリニッジ天文台への招待状。

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はさまっていたものは2通あって、小さいほうは1934年3月9日付けの、グリニッジ天文台の書記から届いた参観受付状です。

 「王立天文官の命により、王立天文台見学の件に関する、当月8日付けの貴信を拝受したことをお知らせいたします。見学時間は月~金曜日の、それぞれ午後2時半から4時半までとなります。もし別の日をご希望でしたら別途調整いたします。」

…というようなことが(最後の方が読み取りにくいですが、多分そのようなことが)書いてあります。

大きい方は文字通り招待状で、文面から察するに、当時は年1回、客を招待して天文台を見学してもらう日が設けられていたようです。本にはさまっていたのは、1939年6月3日に予定された公開日への招待状で、王立協会会長(兼・王立天文台見学担当局長)名義で、「E.W.バーロウ大佐並びに令夫人のご来駕を乞う」と、仰々しい感じで告げています。

招待客のバーロウ大佐(あるいは大尉)について、正確なことは分かりませんが、ネットを参照すると、1919年の王立天文学会会員録に、「Captain Edward William Barlow」という名前があって、この人のことじゃないかと思います。理学士にして王立気象学会会員でもあった人です。

招待状の裏面には、見学順路が印刷されています。


招待客はまず(1)新棟(New Buildings)で写真撮影用望遠鏡を見学し、その後(2)玉ねぎ型ドーム内の大赤道儀望遠鏡、(3)恒星の南中を観測するための子午環、(4)風速風向計等の気象測器類、(5)グリニッジで最も由緒あるオクタゴンルーム、と順々に見て回り、最後に少し離れた場所に置かれた36インチ反射望遠鏡その他を見て回る…というコースでした。

カードの表には、見学の受付開始が午後3時半と書かれていますが、6月のロンドンの日没は午後9時過ぎですから、これだけ見て回っても全然大丈夫だったのでしょう。

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グリニッジ天文台についての本を買ったら、そこへの招待状がついていたという、これはかなり嬉しいサプライズでした。五島のときも思いましたが、こういう古い招待状を手にすると、何となくそれが今でも通用する「過去の世界への招待状」のように思えて、いろいろドラマを想像してしまいます。

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