キーウだより(2)2022年04月09日 09時03分05秒

(昨日のつづき)

ブセボロードさんのグループでは、現在、募金受付用の公式アカウントを作成中だそうですが、取り急ぎ彼に教わった、グループのメンバーの個人アドレスあてに、paypalでカンパを送りました。この際あけすけに書いてしまいますが、送金額は100ユーロです。いわゆる“貧者の一灯”というやつです。

中には、「よくそんな危なっかしいことをするね」と思う人もいるかもしれませんが、この辺はすべて個人の関係性に基づく行動であり、そうやって世の中は動いているのだと思います。

■4月7日付、ブセボロードさんの返信

我々の苦境を理解してくれたことに感謝します。100ユーロは、ウクライナでは決して少ない額ではありません。特に、多くの企業が爆撃やその他の理由で操業を停止し、経済がやせ細っている今はなおさらです。戦地での進展が乏しいせいか、今や「怪物ども(orcs)」は工場や燃料・穀物・冷凍食品の貯蔵庫に爆弾を落とし続けています。

今日、ワークショップに行って、ユリアにあなたからの送金を確認するよう頼みます。
もし私たちのワークショップについて、ご自分のブログで言及される際は、私が例の写真で着ていたタイプの迷彩ローブを、当地では「キキモラ」と呼んでいる事実が、あなたの読者を喜ばせるのではないでしょうか。キキモラとは、スラブで信じられている「もののけ」の一種で、沼地から来る邪悪な女性の霊を指します。

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最後に出てくる「もののけ」は、文字どおり「mononoke」で、私のメールアドレスや、このブログのURLの一部に、そのワードが入っていることを、以前話題にしたことを受けています(ブセボロードさんは、ジブリの“Princess Mononoke”をよくご存じで、アドレスの由来を質問されました)。

改めて思うに、今回の一件は、宮崎駿さんが描いてきたテーマや世界と重なるものが多いですね。自然と人間、そして人間の中にひそむ自然。ロシア軍によるチェルノブイリの占拠と放棄の一件なんか、本当にヒヤリとさせられました。

「すべての悲劇の源である人間の暗黒面を、我々は見つめなければなりません。そして、それと絶えず戦い続けなければいけません」…というのは、私がブセボロードさんに書き送った一節ですが、ステロタイプな物言いながら、このことは繰り返し噛み締めたいです。(そして自分の中の暗黒面とも、日々向き合うことになります。)

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ブセボロードさんがいるキーウ周辺は、当面の危難が去ったようで、そのことは素直に嬉しく思いますが、もちろん手放しで喜べる状況では全然ありません。ブセボロードさんがキキモラではなく、ふたたびアストロラーベ作りに取り組めるようになる日が早く訪れますように。

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