彗星とぶどう2017年07月17日 11時22分07秒

昨日の記事を読み直していて、ふと気づきましたが、1811年に「ラ・コメット」という芝居が上演されたのは偶然ではなく、これはいわゆる「1811年の大彗星 (Great Comet of 1811; C/1811 F1)」の出現に触発されたものに違いありません。

(左側中央に見えるのが、1811年の大彗星のスケッチ。
William Peck(著)『A Popular Handbook and Atlas of Astronomy』(1890)より)

1811年の大彗星は、肉眼でも約260日間にわたって見え続けた明るい彗星で、最初は高度が低く見づらかったのですが、秋口からは高度も上がり、芝居が上演された10月には恰好の天体ショーとして、人々の口の端に上ったことでしょう。
(英語版Wikipedia、「Great Comet of 1811」の項参照。)

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ときに、この大彗星の出現は、ワイン市場にも影響を及ぼしました。
何でも1811年産のワインはことのほか出来が良く、まったくの偶然でしょうが、その後も1826年、1839年、1845年…と、大きな彗星が飛来した年はワインの出来が良かったせいで、後の人はこれを「コメット・ヴィンテージ」と称して、大いに珍重したものだそうです。

その話を聞きつけて、手にしたのが下の紙片。


彗星とブドウの絵柄、それに「VIN(ワイン)」の文字に注目し、これぞ「コメット・ヴィンテージ」のボトルラベルに違いない…と思ったのですが、でも改めて辞書を引いたら、これは彗星ブランドの「お酢(vinaigre)」のラベルでした。

「そうか、ヴィネガーというのはワイン(vin)から作るから、その名があるのか…」と遅まきながら気づいた次第です。

日本でも、お酒の醸造に失敗すると、酢酸ができて酸っぱくなってしまうので、同じ醸造業でも、昔の造り酒屋は酢屋を敵視したものだ…という話を聞いたことがあります。

洋の東西を問わず、お酢はお酒の弟分。
まあ、この兄は弟をいささか敬遠気味かもしれませんが、お酢の方が健康にはよろしく、真夏の宵など、酒臭い息を吐いて蚊にあちこち刺されるより、一杯のお酢ドリンクでしゃっきりする方が、なんぼ良いかしれません。