ジョバンニが見た世界…ラポルト作 『大宇宙天文図解』(1)2008年07月28日 22時25分41秒

午後の授業で先生が指した、銀河帯が空を横切る美しい星座の掛図。
一応モデルもキャストも候補は見つかりましたが、残念ながら、いずれも現物は手元にありません。多少難はあっても、手元にある品でそれらしいものを挙げてみます。(前振りから数えてふた月目にして、やっと現物紹介です。)

★Etienne Laporte作, CARETE ASTRONOMIQUE DE L’UNIVERS
 Paris, 1875 約123×87cm

作者のラポルトについては全く知るところがありませんが、本図には「元ソルボンヌ講師、オックスフォード教員資格者、ヨーロッパ何とか学会会員」と肩書きが麗々しく列記してあって、いかにも「小学者」っぽい感じがします。

当時は大判の図を一気に刷ることができなかったため、いくつかのブロックに分けて印刷し、後からリネン地に張り合わせて一枚の図に仕立てています。折りたたみに便利なように、図と図のすき間が空いているので、何かタイル画のように見えます。写真は少しヨレッとしていますが、実際はもうちょっとシャッキリした感じ。こうした表装は、もともと大判の懐中地図用に工夫されたもののようです。

印象派の台頭著しい19世紀後半のパリで生まれた天文掛図。フラマリオンやギユマンといった、天文啓発家の活躍時期とも重なります。

歴史性から言って『銀河鉄道の夜』に登場する資格十分ですが、原文とは違って黒くはありません。空は浅葱色というのか、星図としてはちょっと珍しい、涼やかな色合いで刷られています。ただ、星図のまわりに、さまざまな天文現象が黒々とした版画入りで説明されており、この部分がいわば「午後の授業」を貫く漆黒のイメージを補ってくれているようです。

星図の細部は明日以降また改めて見ていきます。